【おとな向け映画ガイド】禁断の北欧スリラーファンタジー『LAMB／ラム』

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22/9/18(日) 12:00

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『LAMB／ラム』

北欧のなかでも北に位置するアイスランド、北海道より少しだけ大きい全土の人口は34万人。この国の映画は、登場人物も少なくて、たいてい、しんしんとした冷気と目に見えない何かを感じる。つまり、ミステリアス。それに、独特の神話や民話が息づいていて、ホラーやファンタジーが生まれる土壌がある。

このアイスランドを舞台に、北欧の映画の才能があつまり、また新しい伝説が生まれた。

第74回のカンヌ映画祭「ある視点部門」でPrize of Originalityを受賞した『LAMB／ラム』。『ムーンライト』や『ミッドサマー』などのハイセンスな作品を連打する気鋭の製作・配給会社「A24」が、北米での配給権を手に入れたことでも、その注目度がわかる。この秋、ちょっと見逃せない“ネイチャースリラー”だ。

アイスランド北部、人里はなれた山間の土地で、羊飼いをして暮らす夫婦、イングヴァルとマリアが主人公だ。ある日、羊の出産に立ち会うのだが、産まれた一匹に他の子羊とはちがった特徴があった。夫婦は、その子をアダと名付け、家のなかで育てることにした。その名前は、何年か前に亡くなった娘と同じ。アダはすくすくと成長していくのだが……。

映画の冒頭におきる、クリスマスの夜の不可解なできごと、アダの母羊とのいさかい、……実は異様なことが進行しているのに、たんたんとした日常を送る夫婦の不気味さ。まわりから隔絶され、世間とは無関係にドラマは進行していく。そして、ある日、イングヴァルの弟ペートゥルが家を訪れ、静かな暮らしを一変させる。

監督はアイスランド北部生まれのヴァルディミール・ヨハンソン。『ニーチェの馬』のタル・ベーラ監督が主宰するフィルムファクトリー出身で、『ローグ・ワン／スター・ウォーズ・ストーリー』などの“特殊効果”を担当した。長編デビュー作となるこの『LAMB／ラム』は、第34回ヨーロッパ映画賞の“視覚効果賞”も受賞している。

ストーリーは彼のオリジナル。「民話を元にした物語や、人間の中に存在する自然、あるいは、自然の中に存在する人間を映し出す物語を伝えたい。この作品は、特定のものではなく、多くのアイスランドの民話が織り交ぜられています」と語る。

マリア、という意味深な名前を持つ羊飼いの妻を演じているのは、アイスランド育ち、スウェーデンでの活躍が多いノオミ・ラパス。『ミレニアム』シリーズでは、『ミレニアムドラゴン・タトゥーの女』をはじめ、全作でヒロインのリスベット・サランデルを演じ、世界的に注目を集めた女優だ。今回は主演に製作総指揮も担当している。

イングヴァル役のヒルミル・スナイル・グズナソン、弟ペートゥル役のビョルン・フリーヌル・ハラルドソン、ともにアイスランドを代表する名優だ。

アイスランドの風景に魅了される。ベールに包まれたような空、雪をいただく山々、見渡す限りの草原、羊たちの群れと鳴き声。この世のこととは思えないファンタジックなできごと。

胸騒ぎがする導入にはじまり、予想を超える驚愕の結末にいたるまで、ふいをつくショッカー的なシーンがあるわけではない。静ひつな映像も相まって、ずんずんずんと迫る恐怖感。この北欧テイスト、たまらなく魅力的です。

【ぴあ水先案内から】

渡辺祥子さん（映画評論家）
「……さすが特殊効果出身監督の長編デビュー作、「普通との違い」が見ものだ……」

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植草信和さん（フリー編集者）
「……「スリリングで予測不可能」の物語展開とラストには度肝を抜かれる傑作だ。」

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高松啓二さん（イラストレーター）
「……ホラー？ミステリー？ファンタジー？カテゴリーを分けるには難しい不思議な映画である。」

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