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©Kyrgyzfilm, Oy Art, Bitters End, Volya Films, Mandra Films ©Kailidoscope Pictures © Nezouh LTD - BFI - Film4 ©2001 J‐WORKS FILM INITIATIVE (電通+IMAGICA+WOWOW+東京テアトル) ©2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会 ©ヤングシネマ'85共同事業体/KADOKAWA ©2022 Disney

第2回:目指すは“世界基準の映画祭”! チェアマン&ディレクターに聞く各部門の見どころ

10月24日(月)に開幕する35回目の東京国際映画祭の上映作品が発表になった。

今年もメインの「コンペティション部門」をはじめ、アジアの秀作が集まる「アジアの未来」、日本公開前の最新作を上映する「ガラ・セレクション部門」、世界各地の映画祭で注目を集めた作品が集結する「ワールド・フォーカス部門」、若い世代をターゲットにした「ユース部門」、この1年間の日本映画を総覧できる「Nippon Cinema Now部門」など多彩なセレクションが10日間に渡って上映される。

どの映画祭も作品のセレクションにはその映画祭なりの考えや哲学があり、上映作品の傾向やクオリティが映画祭の魅力や価値を大きく左右する。本映画祭の安藤裕康チェアマンと、市山尚三プログラミングディレクターが目指すのは“世界基準の映画祭”。世界三大映画祭と呼ばれるカンヌ、ヴェネチア、ベルリンをはじめとする有名な映画祭と比較しても遜色のない“質重視”のセレクション、映画祭ならではの華やかな作品群、日本が世界に誇るアニメーション作品など今年もどれを観るか迷う作品が揃った。

1:世界の映画ファンも気になる作品が揃う

今年のコンペティション部門は15作品を上映
©Banana Film, Meta Film, N279 Entertainment, Jaako dobra produkcija, all rights reserved, 2022 ©Maja Argakijeva © Aquí y Allí Films, Bteam Prods, Magnética Cine, 34T Cinema y Punto Nemo AIE ©Kyrgyzfilm, Oy Art, Bitters End, Volya Films, Mandra Films ©Emir Baigazin Production

東京国際映画祭は、世界の名だたる映画祭と同じく国際映画製作者連盟(FIAPF)の認定を受けた世界的な映画祭だ。そのため、世界のあらゆる地域から作品が集まるが、同時に大きな映画祭では“ある映画祭のコンペティション部門に出品された作品は別の映画祭のコンペティション部門には出品されない”という不文律のようなものがある。

カンヌやヴェネチアで出品されていない作品で、良いものを集めるのは何か方法やコネクションがあるのか? そう質問したところ、意外な答えがかえってきた。

市山 実はみんながその呪縛に囚われている部分はあるんです。というのも安藤チェアマンが発見したんですけど、国際映連の規約には“複数の映画祭のコンペティションに出品してはならない”という文言はないんです。衝撃の発見でした。実は各映画祭の裁量に任されていて、事前にどのようなプレミア規定で開催するのかは提出しますけど、何か縛りがあるわけではないんです。

そこで昨年から“ジャパンプレミア”という条件でコンペ作品を選出しますと言ったところ、国際映連から「はい」と返事が来たんですよ。だから極端なことを言うと、カンヌのコンペ部門に出た作品を、東京国際映画祭のコンペ部門で上映しても規則上は問題ないんです。

ただ、実際にプログラムを組む上ではそれは意味がないと思うんですね。カンヌやヴェネチアのコンペ部門で上映された作品をいまさら東京国際映画祭で敗者復活のようにコンペ部門で上映する意味はなくて、その作品が素晴らしいのであれば、「ガラ・セレクション」や「ワールド・フォーカス」で上映したい。それよりはコンペティション部門は未知の作家、まだ多くの人に知られていない監督の作品を上映したいと思っていますし、昨年も結果として他の映画祭に出品されていない東京がワールドプレミア上映になる作品でも良いものが多かったんです。

今年のコンペティション部門は15作品。『マジカル・ガール』が日本でも高評価を集めたカルロス・ベルムト監督の最新作『マンティコア』や、『ビフォア・ザ・レイン』でヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞したミルチョ・マンチェフスキ監督の『カイマック』、『馬を放つ』で知られるキルギスを代表する映画作家アクタン・アリム・クバトの『This Is What I Remember(英題)』など海外の映画ファンも気になるであろう作品が数多くエントリーされている。

市山 ヴェネチア映画祭で『バードマン』が上映された後にアカデミー賞をとって以降、「ヴェネチアに出品して賞をとれないとイメージダウンになる」と思わなくなった(注:『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』は第71回ヴェネツィア国際映画祭のオープニング作品で上映されたが金獅子賞は別の作品が受賞。

その後、第87回アカデミー賞で作品賞、脚本賞、撮影賞を受賞した)ことで、ヴェネチア映画に多くのハリウッド映画が出品されることになって、これまでならコンペティション部門に入っていたであろう作品が漏れることが増えてきているんです。そういった作品を東京国際映画祭でワールドプレミアで上映することができるケースもあります。

自分は映画プロデューサーでもあるのでわかるのですが、まずは三大映画祭(カンヌ、ヴェネチア、ベルリン)に出品したいとは思うんです。その後にロカルノやサン・セバスティアン映画祭に出品するかどうかとなった時に、それらの作品をいかにして東京国際映画祭にもってくるのか。そこが我々の努力のしどころだと思うんですね。

安藤 これまで東京国際映画祭は“ワールドプレミア”であることを大切にしてきて、囚われていた部分もあるんですけど、そこを“ジャパンプレミア”にすることで良い作品が集まってきて、結果としてこれまでよりワールドプレミア上映の作品が多くなっているんですよ(笑)。

市山 今年も傾向というものがあるわけではないので、すべての作品がそうだというわけではないんですけど、世界が混乱していく中で、社会的な困難や政治的な混乱、ジェンダーの問題など、何らかの問題意識のある映画が結果として揃った気はしています。

一見するとサスペンス・スリラーのような作品であっても、その背景には政治的な問題が描かれていたりする。そういった作品が多くて、私が選ぶことでそのようなバイアスがもしかしたらかかっているのかもしれないですが、意図したわけではなくて結果的に“個人の視点から社会を描く”作品が多くなりました。

2:ここに来れば“今年の主要なアジア映画”を一挙に楽しめる!

「アジアの未来」ではすべて世界初上映の10作品が競い合う
  ©FilmCode ©朝井リョウ/集英社・2023映画「少女は卒業しない」製作委員会

また、東京国際映画祭の目玉のひとつでもある「アジアの未来」や、カンヌ、サンダンスなどの映画祭で高評価を集めた作品が集う「ワールド・フォーカス部門」は毎年、多くの観客がつめかける人気部門だ。また、同時期に東京フィルメックスが有楽町朝日ホールで開催され、観客はふたつの映画祭を行き来することができるようになった。

市山 映画祭には地域的な特色があって、それぞれに何かしらの特色がないと、どの映画祭も総花的なものになってしまう。たとえばサン・セバスティアン映画祭にはラテンアメリカの映画が集まる部門があって、そういう作品に興味のある人が世界中から集まってくる。だから東京国際映画祭では「アジアの未来」や「Nippon Cinema Now」などの部門を用意することで、この1年ぐらいの日本映画とアジアの映画の良いものが一度に観られますというようにしたいんです。

安藤 我々は昨年から東京フィルメックスと開催時期を同じくして、その中で分業体制をとってフィルメックスが選ぶ作品と、我々が選ぶ作品とを同時期に観られるようにした。このことで、日本の人も海外から来る方も両方のものが一度に観られるようになった。結果的に相乗効果を生み出していると思っています。

市山 今年もフィルメックスのラインナップは素晴らしくて、東京国際映画祭の「アジアの未来」はワールドプレミア上映の作品が中心になるので、どうしてもカンヌやヴェネチアで上映されたアジア作品は上映されないんですね。

それならばフィルメックスのコンペティション部門で上映した方がいい。そう思って僕があえて何も言わずにいた作品でも、ちゃんと今年のフィルメックスの上映作品に入っているんです。(東京フィルメックスのプログラム・ディレクターの)神谷くんのセレクトは間違いがないので「まぁこれは上映されないとおかしいだろう」と思うクオリティのものはちゃんと入ってるんですね。

「アジアの未来」の作品ももちろん素晴らしいので、フィルメックスと両方観てもらうことで、その年のアジアの主要な映画を一挙に観ることができると思います。

安藤 僕も市山さんもふたつの映画祭が同じ時期に開催されることで、それぞれのメリットを活かして、1+1が3になるようになっていければと思っています。

3:映画祭が過去の名作を上映する理由

『エドワード・ヤンの恋愛時代 [レストア版]』©Kailidoscope Pictures

さらに東京国際映画祭では映画史に名を刻む傑作の数々を大スクリーンで堪能できる。

「ワールド・フォーカス部門」では、監督デビュー30周年を迎えるツァイ・ミンリャンの特集が東京フィルメックスと共同で開催され、エドワード・ヤン監督の名作『エドワード・ヤンの恋愛時代』のデジタル修復版、才能豊かな映画監督を輩出したディレクターズ・カンパニーの作品などが上映される。

市山 ツァイ・ミンリャン特集は、昨年末に台湾文化センターからお話があって、東京フィルメックスと共同で開催することになりました。監督には東京国際映画祭の会期の終わり頃に来ていただいて、東京フィルメックスにも参加できる日程を組んでいます。これは台湾文化センターのオファーがなければ実現しなかったですね。

エドワード・ヤンについては亡くなった後に東京国際映画祭で大規模な特集上映を開催したのですが、その時も『…恋愛時代』は権利の問題で上映できなかったんです。その後、エドワード・ヤンの奥さんが尽力して権利関係をクリアしたようで、ヴェネチア映画祭で上映されることを知ったので、その場ですぐにエドワード・ヤンの奥さんに連絡して上映をオファーしました。

少し前の映画だと「そんなものすぐに観られるでしょ」と思われるんですけど、実は上映するのが難しかったりするんです。それにいまは上映メディアが35ミリフィルムからデジタルに移行していて、フィルムが上映できる映画館がどんどんなくなってきている。そうなると名作映画であってもデジタル化が必須の条件になるんですけど、その作業がなかなか進まないことが多い。

そこで映画祭でのお披露目という場を提供することでデジタル化を進めていかないと、フィルムはあるんですけど上映することができない、一般のお客さんが観られない状態になってしまう。上映できなくても配信で観られると思っていても、権利の問題もあって観られないこともある。

そこで各映画祭がデジタル化や上映の問題をサポートして、名作が観られる状態をつくりだすことが急務になっているんですね。だからカンヌでもヴェネチア、ベルリンでも“クラシック部門”をつくってデジタルレストアした作品の発表する場を設けているんです。

安藤 論語の中に「故きを温ねて新しきを知る、以て師と為るべし」という言葉があります。映画の世界でも新しい作品だけでなく過去の作品や歴史を学ぶことが大事だと思います。それこそがクラシック作品をやる意味だと思うんです。過去の作品をいま改めて観ることで“新しい発見”ができる。それは重要ですよね。

市山  いま上映することで若い観客や映画人が触発されて映画ファンになったり、映画監督になってくれると嬉しいですし、そういう力のある作品は繰り返し上映されるべきですし、そのお披露目の場を映画祭が担っていくのは重要なことだと思っています。

世界各地で注目を集める“最新の映画”、この1年間の日本とアジアの秀作、そしてスクリーンで観る機会が少なかった過去の名作など、東京国際映画祭には様々な年代の多様な作品が一堂に会することになる。上映によってはその前後に監督やゲストを招いたトークやQ&Aの時間も予定されており、会場に足を運ぶことでこれまで以上に広く深く映画を楽しめるはずだ。

TIFFオープニングセレモニーに5組10名様をご招待! (10月17日(月)応募締め切り)

応募資格:よくばり❣ぴあニスト
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開催概要

第35回東京国際映画祭

期間:2022年10月24日(月)~11月2日(水)

会場:【日比谷】東京ミッドタウン日比谷/TOHOシネマズ 日比谷、日比谷ステップ広場、BASE Q、TOHOシネマズ シャンテ、東京宝塚劇場
【有楽町】東京国際フォーラム、有楽町よみうりホール、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町 micro FOOD & IDEA MARKET
【銀座】シネスイッチ銀座、丸の内 TOEI
【丸の内】マルキューブ(MARUCUBE)

※映画祭公式サイトにて、メルマガ会員向け抽選販売、先行抽選販売に続いて、10/15(土)に一般販売を部門別で開始。詳細はこちら

(c)2022 TIFF