『スリル・ミー』キャスト対談第2弾:木村達成×前田公輝 ぶっ壊したいふたり~目指すはハッピーエンド!
ステージ
インタビュー
左から)木村達成、前田公輝 撮影:杉映貴子
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すべて見る舞台にいるのは“私”と“彼”、そして衝撃のドラマをともに綴る一台のピアノ。2011年に日本初演を迎えて以降、再演を重ねるたびに熱視線を浴びてきた異色ミュージカル『スリル・ミー』(原作・音楽・脚本:Stephen Dolginoff)が2023年、さらなる進化を見せる。1920年代アメリカで実際に起きたふたりの天才少年による驚愕の事件をモチーフに、“私”と“彼”による息もつかせぬ濃密な100分間の心理劇が展開。今回、この二人ミュージカルに挑むのは、尾上松也&廣瀬友祐(私&彼、以下同)、木村達成&前田公輝、松岡広大&山崎大輝の3チームだ。初演から演出を担う栗山民也とともに、それぞれのペアが衝撃のドラマをいかに構築するのか注目必至! インタビュー第2弾は、本作に初参加、そして初共演となる木村達成&前田公輝。「初めまして」の挨拶から、ふたりの飾らない語らいが始まった。
挑戦するには格好の舞台
――本作に初めて挑むおふたりです。まずは出演を決めた思いをお話しいただけますか?
木村 僕は、作品は知っていましたけど、まだ観たことがなくて。観に行ったことありますか?
前田 あります。僕は一度、松下洸平さんと柿澤勇人さんのペアを観て、その時の衝撃も覚えています。今回はまず、ミュージカルであることが一番心惹かれたところで、僕にとっては『ロミオ&ジュリエット』(2021年公演に出演)以来なので、タイミングがいいなと。あとは二人芝居であること、そしてシンプルな構成で物語が進んでいくところなどが決め手となりましたね。
木村 僕も、すごく面白いミュージカルがあるという噂は聞いていて、今回物語の流れを知って、面白そうだなと思いました。また舞台上、何の助けもないような状態でふたりだけで戦わなきゃいけない、そういう劇構造も素晴らしいなと。ピアノだけで、ふたりで作品を紡いでいくと考えたら、もう誰にも嘘をつけないわけじゃないですか。やっぱりそういう場で戦っておかないと、だんだん自分が鈍っていくような気がして。今の自分に何がベストかを考えると、この時期にやる『スリル・ミー』なのかなと思いました。あと、いろんな方が演じられて、こうして続いて来た作品なので、すでにファンのお客さんが大勢いる。ぶっ壊すのに、こんな格好な舞台はないですよね。
前田 ハハハハ!
――ぶっ壊す!?(笑)
木村 いい意味で、ですよ。もちろん物語に沿っていかなきゃいけないけれど、その期待をどんどん裏切っていきたい、そんな挑戦的な意味で。自分に発破をかけているんです。
――その物語がふたりの少年の凶悪犯罪を描いたもので、ミュージカルにしてはあまりに異色ですよね。
木村 これが実話をもとにしていると聞いた時は、ちょっとびっくりしました。こんな事件があったのか!と。
前田 当然フィクションだろうなと思っていたけど、実話だと聞いて、事件のことをいろいろ調べましたね。
木村 この作品にファンのお客さんがいっぱいいるというのも、また怖いですよね。
前田 ハハハ! ドラマの余白みたいなところに、いろんな魅力があるんでしょうね。さまざまな組み合わせのペアが演じることで、まったく違う人物像が見られるところも面白さのひとつだろうなと。
木村 あと、僕はこんなに、100分間も集中出来るのかなって思ったり(笑)。ミュージカルって緊張するじゃないですか。台詞だけなら大丈夫なんだけど、歌が入って来るとヤケに緊張するんですよ。
前田 ほお〜。僕の場合、登場した瞬間は緊張なのか、高揚なのか、武者震いなのか(笑)みたいな感覚はありますけど、舞台に立ってしまえばもう、とりあえず練習したものが出ればいいなと。立つまでのほうがすごく緊張するかな。
第一印象は「ベンヴォーリオ」
――二人芝居の相手役を知った時は、どう思われましたか?
木村 実際にお会いしたのは今日が初めてですけど、前田さんについて知っていたのは、それこそ『ロミジュリ』で同じ役(ベンヴォーリオ。木村さんは2019年公演に出演)をやっていたことくらいですね。
前田 そう、僕にとってはベンヴォーリオという役がどういうものか、参考に見させていただいていた人で。なので、木村さんというよりベンヴォーリオのイメージが最初は強かったです(笑)。でも木村さんはいろんな作品に出られているので、ご本人はどういう方なんだろうと、とりあえずYouTubeをいろいろサーフィンして調べて(笑)。
木村 おお〜(笑)。
前田 ま、だからどうという話じゃないんですけど。“私”の役と何が通ずるか、それは分からないので。
木村 でも、不安じゃないですか?
前田 いや、まったくそんなことは思わないです。
木村 言葉だけでも嬉しい(笑)。
前田 いやいや、本当に!
木村 僕は、まだ共演したことのない方とやれることが嬉しいし、いい意味で、“彼”役が「ミュージカルの舞台を踏み倒して来た!」みたいな人じゃないといいなと思っていたから、安心したと言いますか。
前田 ああ〜分かる。演出の栗山さんも、芝居をメインに考える方ですよね。これまでの稽古でも「なぜ今、動いたの?」といった指摘をされたりして、気持ちで動くことをビジョンとされていると聞いたので、その軸をブレないようにしないといけないだろうなと。
木村 前田さんは映像のお仕事もたくさんやっていらっしゃるし、型にはめるようなことはない、柔軟な考えの持ち主だなと今、聞いていてすごく安心しましたね。「なぜ今、一歩動いたか」の探究心を持って取り組める人は素晴らしいなと思います。ふたりで『スリル・ミー』に新たな風を吹かせられたら嬉しいな、前田さんでよかったなと思っています。
前田 おお〜。初めてお会いしてまだ30分とは思えないお言葉をいただいて、光栄ですね。(一同笑)
木村 だって、ちょっと会話を交わしただけでも、どういう思いでこの作品に挑もうとしているのか、お互いに分かりますよね?
前田 うん、本当に。前回の上演の時は、栗山さんがそれぞれのペアにキャッチフレーズみたいなものをつけられていたって話も聞いたんですけど、もし栗山さんが我々ふたりの芝居を見てつけてくれるなら、抽象的な言葉で、どんな意味にも受け取れるキャッチフレーズがつくのが一番理想だなって思いました。今、木村さんに“新たな風”って言ってもらえたのは嬉しかったですね。
――今のキャッチフレーズにも通じるかと思いますが、現時点で理想として、ほかの2チームとは違う、おふたりのペアが醸し出す空気、色はどんなものになりそう? これ、すべてのチームに聞いている質問なんですが。
木村 なんか……インタビューから戦わせに来てますね!(一同笑)
前田 僕はさっきの話で言うと、「どういうペア」ってカテゴライズされないペアのほうがいいですね。
木村 あ、僕も。
前田 色が入ったとしても真っ白な状態で。例えば観劇された方が緊張感やスリルを味わって、いろんな色が混ざっていくような感覚に陥るけれど、一番最後には真っ白になって……あれ? このペアって結局、何だったんだろうって後から気になったりして。そういう生の感覚、ライブ感を大事に出来たらいいなと思います。
木村 どういうペアにしたいかは……分からないですね。自分だけじゃなくてふたりとしてどう見られたいかと考えると、それは結局、化学反応でしかないから。個人的には、出来るだけお芝居をしない雰囲気でいけたらいいかな、という気持ちはありますね。先ほど前田さんが「舞台に上がったら、稽古でやって来たものを出す」とおっしゃっていたように、その日、その場の感覚で、フレキシブルな考えを持って、ふたりでぶつかっていけたらなと思います。
人気作だからこそ、以前のものを越えていきたい
――おっしゃるように多くのファンの方が再演を待ち望んでいた作品です。これほどに求められる理由をどのように考えますか?
前田 やっぱり我々も驚いたように、ノンフィクションでもある、というところは大きいですよね。現実に起こった話なんだと。あとは曲の魅力ももちろんあって……ミュージカルに関しては新参者の僕が言うのもおこがましいんですけど、物語と曲調がピタッとハマっていて、その不穏な雰囲気が僕はすごく好きですね。深刻な内容で、台詞も歌詞もディープだけれど、つい口ずさみたくなる、ずっと心に残る。そんなふうに作品が整理されているからこそ壊せると思うし、お客さんは、キャストを替えていろんな色を見たいと思われるんじゃないでしょうか。
木村 やっぱりこういう緊張感やスリル、刺激的で何が起こるか分からないところにお客さんはそそられるんじゃないですかね。
――おふたりから「壊す」という言葉が出たので、このペアははたして何をして、どんな『スリル・ミー』を見せてくれるのか!? 期待満々です。
前田 どの作品でもそうだと思うんですけど、やっぱり以前のものを越えて行かないともったいないですよね。「これは前にも見たことあるな」って思われるのが一番嫌じゃないですか?
木村 確かに。いや、考え方の方向性が同じで、本当に良かったです。
前田 僕も良かったです。まあ、ハッピーな、夢と希望を与えるような作品じゃないところが難しいですけど……。
木村 僕はハッピーエンドにしますよ!
前田 そうですよね! 今話したことが実現できるように頑張りますので、ぜひよろしくお願いします。
木村 素晴らしい〜、僕ももう一度言います。最高のハッピーエンドにします!
取材・文:上野紀子 撮影:杉映貴子
ヘアメイク(木村・前田):天野誠吾
スタイリスト:(木村)部坂尚吾(江東衣裳) / (前田)立山功
衣裳協力:(木村)BARENA( ジャケット ・トラウザーズ・シャツ)、OMEGA(時計)
★『スリル・ミー』キャスト対談第1弾:尾上松也さん×廣瀬友祐さんのインタビューはこちら
★『スリル・ミー』キャスト対談第3弾:松岡広大さん×山崎大輝さんのインタビューはこちら
<公演情報>
ミュージカル『スリル・ミー』
【東京公演】
2023年9月7日(木)~2023年10月3日(火)
会場:東京芸術劇場シアターウエスト
【大阪公演】
2023年10月7日(土)~2023年10月9日(月・祝)
会場:サンケイホールブリーゼ
【福岡公演】
2023年10月11日(水)・12日(木)
会場:キャナルシティ劇場
【名古屋公演】
2023年10月14日(土)・15日(日)
会場:ウインクあいち 大ホール
【群馬公演】
2023年10月21日(土)・22日(日)
会場:高崎芸術劇場 スタジオシアター
チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2343901
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