【ライブレポート・前編】「UKFC on the Road 2023」新宿を舞台に完全復活
音楽
ニュース
the telephones Photo:小杉歩
続きを読むフォトギャラリー(8件)
すべて見る新宿BLAZE 14:00 the telephones
2022年1月に新木場STUDIO COASTが閉館をしたことを受けて、今年から新宿に舞台を移して完全復活した「UKFC on the Road 2023」のトップバッターを飾るのは、この日が新体制初ライブとなったthe telephones。5月に発表された長島涼平の脱退がバンドにとって大きな節目であったことは言うまでもないが、それでも彼らは踊ることをやめず、新たな姿を見せてくれた。
新しいSE(「Hello everybody,We’re the telephones!」というワードは同じ)に乗せてメンバー3人がステージに登場すると、ライブは性急なブレイクビーツナンバーの「Gorilla Dance」からスタート。上手に松本誠治、中央に石毛輝、下手に岡本伸明が並び、サポートは迎えず同期を用いて3人のみで演奏。これまでバンドの生演奏を重視してきたthe telephonesだが、より現代的なライブセットにメタモルフォーゼを遂げた感もあるし、同期を用いることで演奏から解放されたノブがこれまで以上に縦横無尽に暴れ回るのはこの編成ならではだ。
全曲の演奏を終えて分かったことだが、この日のセットリストはなんと全て新曲。先日SNSにティーザーが公開されていた「2nd Revolution」は歪んだシンベとアシッドな上ものの組み合わせが印象的で、文字通りthe telephonesに2度目の革命が起きたことを強く印象付ける。一方「Fuzz,Fuzz,Fuzz」ではオーディエンスとともに一緒にジャンプをして、コロナ禍でもライブハウスを回り続けたバンドのパフォーマンス力はもちろん健在だ。MCではこの日が新体制の初ライブであることに触れ、「冒頭から新曲をやりまくってますが、踊ってくれてありがとう!」と感謝を伝えると、フロアからは大きな歓声と拍手が沸き上がった。
80年代ニューウェイヴ風の「Danger Boy」に続く「Up Side Down」はthe telephonesらしいシンセリフが特徴だが、ノブはこれも同期に任せてオーディエンスを煽り続ける。そして、この日のクライマックスを刻んだのは石毛がギターを置いて、ハンドマイクで披露された「Our Journey」。打ち込みも混ぜているであろう低音の効いたバスドラがスケールの大きな空間を立ち上げる。新曲なので正確な歌詞は分からないが、「Keep On Trying」「Brand New Start」といったワードが耳に入ってきて、この曲が彼らの新たな旅の始まりを告げる曲であることは明確に伝わってきた。ユーフォリックなムードの「I Feel Love (Bla Bla Bla)」まで惜しみなく新曲を披露して、記念すべき新体制の初ライブが終了。なお、彼らは12月に縁の深い新宿MARZで新体制の初ワンマンを行うことも決定している。Keep On Dancin’!!!
Zepp Shinjuku 14:40 WurtS
2023年の夏は、初めて本格的に各地のフェス/イベントに出演、今日がその9本目になるWurtSが、Zepp Shinjukuのトップを務める。
DJ/ダンスやアジテート等のパフォーマンスを担うバンドメンバー=ウサギが放つSEが響く中、他のメンバーと共に登場したWurtSが、ギター・リフを弾き始めたことで、1曲目が「檸檬の日々」であることがわかり、フロアがワッと湧く。
次は「魔法のスープ」。つまり、新井弘毅とWurtSのギター2本の絡みが印象的な曲を2曲続けてから、ギターを置いてラップ調の「BOY MEETS GIRL」へ。間奏でウサギがサックスを吹く、おなじみのパフォーマンスも。
「『UKFC』、僕は初出演ということで、ほんとに出れてうれしいです。ありがとうございます!」と挨拶し、UKプロジェクトから初めて出した楽曲が、1曲目の「檸檬の日々」だと説明するWurtS。「『UKFC』だから、UKプロジェクトにちなんだ楽曲を演奏したいと思っているので、みんな楽しんでいってください。」と、ギターを下ろして「NERVEs」を歌う。
「今日だけのセットリストでして、久しぶりにできる曲が多くて、僕もうれしいです」。自分は8月20日の「MONSTER baSH」でのステージを観たが、確かにここまでの4曲で、その日も演奏していたのは「NERVEs」だけである。「MONSTER baSH」の方が、今年の夏フェスのセトリで、今日が「UKFC」用の特別なのだろう。最後まで観てわかったが。全曲、UKプロジェクトからリリースしたファーストアルバム『ワンス・アポン・ア・リバイバル』からの曲だった。
後半、「ブルーベリーハニー」からの「リトルダンサー」では、ウサギがステージ前に出てアジテートしまくり、オーディエンスは腕を大きく振ってそれに応ずる。「もっといけますか! もっといけますか! もっといけるだろ! 『UKFC』最高です、ありがとう!」というWurtSの叫びからのラストは、彼が最初に世に出た曲である「分かってないよ」。イントロで今日最大のハンドクラップがフロアを包み、後半では「もっとみんなの声が聴きたいです!」というWurtSの言葉に応えて、この日最大のシンガロングが繰り返された。
Shinjuku BLAZE 15:20 POLYSICS
1曲目の「Stop Boom」は、けっこう前からライブで演奏されているが、音源化はまだの新曲。2曲目「For Young Electric Pop」は、2002年リリースの5thアルバムのタイトル曲。3曲目「Tei! Tei! Tei!」は、2005年の7thアルバム『Now is the time!』の1曲目。
という、なんだか新鮮な並びの3曲で、POLYSICSのステージはスタートした。4曲目の「I My Me Mine」と、ラストの「SUN ELECRIC」くらいだったのではないだろうか、定番曲は。ただし、終演後に本人たちに言ったら「え、新鮮? そうかなあ?」みたいなリアクションだったので、こちらの思い込みかもしれない。なおPOLYSICS、今日の全アクトの中でUKプロジェクトの最古参であり、『UKFC on The Road』にも、2011年の第一回から出演している。
3曲終わったところでハヤシ、「トイス!」連発で挨拶し、「いいねえ、こうしてみんなの前で『UKFC on the Road』できるの、4年ぶりだぜ!」と、喜びを露わに。そして、自分たちの前のthe telephonesを「新体制でね、ああやってかっこいいのを更新してくれると、ちょっと俺も、うずくね、いろいろね」と、称賛する。
「今日はほんとね、観たいバンドが盛りだくさんだね。なんで今日、俺もみんなと一緒に(会場を)回るんで、見かけても『ハヤシ、トイスしろよ!』とか言わないでね」と言って、次の曲に行こうとするが、フミが「(ベースの)弦、切れちゃったよ。気合い、入りすぎかな」。確かに、ギターと違ってベースの弦というのは、めったに切れるもんではない。
「I My Me Mine」でオーディエンスを上下左右に揺らし、「Funny Attitude」ではジャンプの渦に。「それでは新宿、踊れー!」とハヤシが曲名をコールした「Boys&Girls」も、フロアは、更なる盛り上がりを見せる。
ラストは「Speed Up」と「SUN ELECRIC」、超アッパーな二連発で締め。「SUN ELECRIC」の後半、最後のサビでは、フロアでクラウドサーフが出る。「すみません! もうがまんできません!」という感じだった。
去り際にハヤシ、「来月10月13日、『TOISU感謝祭!!! 2023で』お会いしましょう!」と毎年恒例トイスの日のライブを告知する(今年は下北沢Shangri-La)。そして「最後まで楽しんで行って!」とひとこと足す、UKプロジェクトの長兄であった。
新宿MARZ 15:20 Are Square
新人のショーケース的な位置づけになっている新宿MARZのトップバッターを務めるのは、セッションイベントで意気投合し、2022年4月に八王子で結成され、11月にRX-RECORDSからのリリースが決定している4ピースバンド、Are Square。
ギターのKAYA、ドラムのHikage、ベースの上田カズアキに続いて、最後にボーカルのMaruがステージに登場すると、ライブは昨年配信済みの「SMASH」からスタート。荒々しいステージングながらタイトな演奏を聴かせる各メンバーの確かな技術と、シンガロングできるポップなメロディを併せ持ち、彼らが新世代のミクスチャーバンドであることを印象付ける。中でもフリーのような低いポジションでベースを構え、派手なステージングを見せる上田はオレンジの衣装も含めてひと際存在感があり、巧みなスラップベースも引き込まれるものがあった。
「新宿MARZ、ぶちあがっていこうぜ!」という煽りから始まった「ハートビート」ではオーディエンスと一斉にジャンプしたりとステージ巧者ぶりを見せ、ミドルバラードの「風の言葉」ではMaruが叙情的なメロディを力強く歌い上げたりと、メリハリの利いたステージングもすでに堂々としたもの。MCでは「POLYSICSを見ずにAre Squareを見に来るなんて、あなたたち変態さんですね。でもうれしいです。ありがとうございます」と話し、さらには「みなさんはラッキーです。俺たちは日本の、いや世界のバンドシーンに風穴を開けるためにここに立ってるんで、伝説の始まりを目撃できて、みなさんホントにラッキーな人たちです」と語ると、フロアからは大きな歓声が起こる。こういうビッグマウスぶりも実に頼もしい。
ライブ終盤は多彩なリズムチェンジで音楽IQの高さを感じさせる「Feel Like Somethin’ Wonder」でさらに盛り上げると、ラストはHikageのスネアロールとKAYAのテクニカルなリフとともにコール&レスポンスを行い、上田の硬質なスラップベースがリードするキラーチューン「BANG!!!」で ステージもフロアも熱狂に包まれて終了。BIGMAMA〜[Alexandros]の系譜を受け継ぐ、実にRX-RECORDSらしいバンドが出てきた。
Zepp Shinjuku 16:00 the shes gone
2018年にUK.PROJECTからのデビューを発表し、2019年にUKFC初登場。今年4月にベースのDaishiが脱退して再び3ピースとなったthe shes gone(ステージにはサポートのベーシストが参加)。シガーロスの「Hoppípolla」をSEにメンバーが登場すると、兼丸の弾き語りから始まる「ラベンダー」でライブがスタート。耳に残る裏メロを弾くマサキのギターをはじめ、過不足ないアレンジでしっかりメランコリックな歌を届けると、サビでは一斉にオーディエンスが手を振り、彼らの歌の求心力の高さが伝わってくる。
「今日という一日を、この時間を甘い記憶にしていこうか」と言って始まった「甘い記憶」ではフロアの上空に位置するミラーボールが輝く中、伸びやかなメロディが場内に響き渡る。さらに「新曲やります」と言って届けられたのは、9月13日に配信された「きらめくきもち」。ミスチルやゆずなど様々なアーティストのサポートを行うSUNNYをアレンジャーに迎えたこの曲は、推進力のあるアップリフティングなポップナンバーで、〈はじめてを君に送る〉というサビの歌詞にハッとさせられる。今後の新たなライブ定番曲になりそうな印象を受けた。
MCでは兼丸が今年のUKFCの発起人になったことを話し、「僕らは所属して4年目で、前まではずっと下っ端で、このフェスに出ることが目標だったけど、この4年でいろんな新しい・素晴らしいアーティストがたくさん入ってきて、〈僕らも出たいです〉だけじゃダメだなと、全員で盛り上げなきゃと思って、酒の勢いで言ったら、うちのマネージャーが動いてくれました。UK.PROJECT最高だなって改めて思ってもらえるその一因に、要因になれるように、最後まで精一杯やります」と熱く語ると、そこからアッパーな「最低だなんて」を投下。熊谷亮也のアグレッシブなドラムをはじめ、繊細なだけではない骨太なロックバンドとしての側面を見せつけた。
勢いそのままに「一番後ろまで、心の距離の一番近くまで飛ばしに行くんで、またライブハウスで、UKFCでお会いしましょう。また一緒にたくさん思い出を作ろう!」と捲し立てて、この日ラストに届けられたのは「シーズンワン」。イントロの4つ打ちに合わせて場内がクラップに包まれ、スポットライトを浴びた兼丸が最後までしっかりと歌で想いを届けて、ライブが終了。最後にもう一度「今日まだこれで終わりじゃないから、この後素晴らしい先輩方がめちゃめちゃいいライブするんで、最後まで楽しんで行きましょう。UK.PROJECT、the shes goneでした」と語り、レーベルの中軸を担うバンドのひとつに成長したことを確かに感じさせるステージだった。
新宿BLAZE 16:40 odol
2021年にメンバーふたりが「卒業」するも、ライブでは複数のサポートメンバーを迎えながらコンセプチュアルなステージを展開してきたodol。この日はギターに初顔合わせとなる土器大洋、ドラムに深谷雄一を迎えた5人編成でのライブを行った。
軽快なアップテンポのナンバー「退屈」でスタートし、土器が空間系のエフェクトを用いたギターで早速存在感を見せて曲を終えるも、ここでエレキベースとシンセベースを使い分けるShaikh Sofianにトラブルが。するとミゾベリョウが口を開き、「僕らodolは2014年からUK.PROJECTと関わりを持たせていただいてるんですけど、UK.PROJECTのスタッフのみなさんも所属してるバンドのみなさんも、音楽でお金儲けしてやろうみたいな感じじゃなくて、音楽が好きで働いてる人と音楽が好きでバンドを続けてる人ばっかりで、そんなところに所属させていただいて、僕たちはすごく光栄だなと思っております。そして、そんなUK.PROJECTのイベントを観に来てくださっているみなさんもすごく音楽が好きだと思うので、その前で演奏できて誇らしい気持ちです」と想いを語る。
ここから改めてステージを再開させると、ダンスの機能性に特化しないサイケデリックな4つ打ちナンバーの「four eyes」、森山公稀のルーツにあるYMO的なオリエンタリズムが表出する「幸せ?」と、odolならではの楽曲を続けて行く。「未来」はショートディレイや同期によるダブリングで作り込まれたボーカルの音像が印象的で、楽器演奏に溶け込んでアンビエントなムードを作り出すと同時に、「偶像的なフロントマンの歌と、それを受け取るオーディエンス」という関係値をも融解させ、特定の誰のものでもない「みんなの歌」としてただそこに存在しているかのような雰囲気が特別だ。
ライブ後半ではシンセのループフレーズが印象的で、クラウトロック的なアレンジの新曲「幽霊」を披露すると、11月に丸の内コットンクラブでワンマンライブがあることと、同じく11月にニューアルバムを発表することを発表。最後は森山のピアノとミゾベの歌から始まって徐々に演奏が熱を帯びて行き、ラストで土器のシューゲイズギターが爆発する名曲「虹の端 (Rearrange)」でステージを締め括った。ライブでの盛り上げ方・一体感の作り方というのはそれぞれだが、音楽というアートの力で心の深いところで繋がろうとするodolというバンドが所属しているということ自体が、UK.PROJECTが音楽愛に溢れた事務所であることの裏付けになっているように思う。
新宿MARZ 16:40 ペルシカリア(1回目)
「peanut butters、観たかったあ! 1時間前に代打で出れないかと言われまして、ほんとに、やべえ事務所に入ってしまったなと思います。1時間前に言われたから、セットリスト、決めてないんですよ、ここ(足下)にできる曲があるんで、ランダムでやっていきます」
以上、ボーカル&ギター矢口結生の第一声。こう言ってから、ものすごいテンションで「東京」を歌い始める。
この枠は、peanut buttersが出演するはずだったが、急な体調不良で出られなくなり、同じMARZのトリであり、最年少であり(平均年齢21歳)、全アクトの中でもっとも後輩である(UKプロジェクトからの初リリースは昨年12月、所属になったのは半年前)このバンドが、二回出ることになったわけである。
ただ、そんな状況なので、もう好き放題にやるしかなかったのか、それとも元々、隙あらば好き放題にやる人たちなのか、とにかく破天荒で、勢いに満ちていて、それでいてメロディや歌詞の強さはしっかり伝わるステージを、ペルシカリアはやった。
「どんなでかい大先輩よりもでかい音鳴らして帰ります、よろしく」などと言ったり、5曲目の「どうしたって」を終えるやいなや「どうすか? もう一回?」とリピートした上に、最後の11曲目でも、またこの曲をやったり。
10曲目の「愛情完済日」では、ミスってイントロが止まってしまうが、「ぽい、ペルシカリアっぽい」「まあご愛嬌で」とだけ言ってすぐにやり直す。動じない。
ラストは前述のとおり、この日三度目の「どうしたって」。ものすごい勢いで駆け抜け、「めちゃめちゃありがとう、またねー! このあとも本番やるんで来てください、お願いします」「はい、練習終わり! じゃあね!」などと言いつつ、4人はステージを下りた。
Text:金子厚武(the telephones、Are Square、the shes gone、odol)、兵庫慎司(WurtS、POLYSICS、ペルシカリア(1回目))
※ライブレポート後編はこちら
<公演情報>
UKFC on the Road 2023
9月10日(日) 「Zepp Shinjuku」「Shinjuku BLAZE」「Shinjuku MARZ」3会場開催
出演者:[Alexandros] / Age Factory / Are Square / ART-SCHOOL / Helsinki Lambda Club
LAYRUS LOOP / odol / peanut butters / POLYSICS / the dadadadys / the shes gone / the telephones / WurtS / ペルシカリア
※peanut butters出演キャンセル
フォトギャラリー(8件)
すべて見る