【おとなの映画ガイド】AIと人類が戦う近未来、最終兵器は意外な形! 『ザ・クリエイター/創造者』
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『ザ・クリエイター/創造者』 (C)2023 20th Century Studios
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すべて見る対話型AI「ChatGPT」などの登場で、AI(人工知能)がこれまでにない盛り上がりを見せている今年にぴったりのSF映画『ザ・クリエイター/創造者』が、10月20日(金)から日本公開される。観ているうちに、AIに感情移入してしまうような、そんな新時代を描く超大作だ。これまで見たことのない新発想のVFX映像や、AIロボットたちの形と動きに、きっと心揺さぶられると思う。
『ザ・クリエイター/創造者』
この作品の監督はギャレス・エドワーズ。そのキャリアが、実にカッコいい。
イギリスの映画学校で映像を学び、視覚効果スタッフとして活動した後、低予算映画専門の映画会社に独自企画を売り込み、脚本、撮影、視覚効果まで担当したデビュー作『モンスターズ/地球外生命体』(2010)を発表した。この超低予算の作品は、英国インディペンデント映画賞の監督賞の受賞や、英国アカデミー賞のノミネートなどで注目をあつめ、あるエージェントの目にとまることに。
そこからの快進撃がすごかった。監督は軽いタッチで「エージェントに“ゴジラは好き?”と声をかけられた」と語っているが、ローランド・エメリッヒ監督が一風変わったゴジラを登場させ不評に終わった後を受けて、ハリウッド版の『GODZILLA ゴジラ』(2014)を監督するチャンスを得、見事に復活させる。さらに、『スター・ウォーズ』のスピンアウト作品『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)、こちらも大成功。
監督した長編映画は以上3本だけ。しかし、数ある映画人のなかでも『ゴジラ』と『スター・ウォーズ』を制したのは彼ひとりだ。フィルモグラフィとしてはこれで十分映画史に残る偉業。4本目の本作は、いよいよ、アイデアも脚本もエドワーズ監督のオリジナル。まさに彼が、この世界の創造者なのである。

描いているのは、AIテクノロジーが頂点に達した今から50年後の未来。人類を守るはずのAIが核を爆発させた事から始まり、人類とAIの間で戦いが激化している。AI側はついに人類を滅ぼす“兵器”を開発した模様だ。その兵器のクリエイターを探しだし、破壊するというミッションを遂行するため、元特殊部隊のジョシュアが敵陣に潜り込む。ところが、ジョシュアがつきとめた兵器は、あどけない6歳の少女の姿をした超進化型AIだったのだ。アルフィーと名付けたその少女を、彼は「ある理由」で守ることに……。
ジョシュアを演じるのはジョン・デヴィッド・ワシントン。クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』に主演したアクションスターだ。ちなみに父親のデンゼル・ワシントンも主演作『イコライザー THE FINAL』が10月6日(金)に公開されたばかり。
兵器のAI少女・アルフィー役は、ドイツ系アメリカ人の父と東南アジア系の母を持つマデリン・ユナ・ヴォイルズ。オーディションで監督が一目ぼれした、演技初体験の当時8歳、天才子役の呼び声も高い。
他のキャストも、“AI時代に国籍や言葉の違いは無意味だ”と語るかのごとく、様々な背景を持つ俳優が起用されている。まず、AI戦士・ハルン役には、日本人俳優の渡辺謙。エドワーズ監督とは『GODZILLA ゴジラ』に次ぐタッグとなった。ジョシュアの妻マヤ役は香港出身の両親を持つジェンマ・チャン。ミッションの指揮を執るハウエル大佐には、TVシリーズ『ホワイトハウス』で報道官役を演じて4度のエミー賞に輝き、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』で米アカデミー賞助演女優賞を受賞したアメリカの名優、アリソン・ジャネイが扮している。

映像の見事さにも目を見張る。監督はインタビューで「『ブレードランナー』が舞台の黒澤映画」と語っているが、エキゾチックを超えた、風景だ。タイ、ベトナム、カンボジア、シンガポール、インドネシア、そして日本など8カ国でリアルにロケーション撮影をしたのち、その映像の上に、CGで独自のデザインを加えていくという変わった手法がとられている。
本作の世界観を築き上げる時にインスパイアされた作品として、『バラカ』『ブレードランナー』『AKIRA』『地獄の黙示録』をあげているけれど、本作創造の原点は、日本語のロゴ、だそうだ。休暇旅行でアイオワに行く途中、草原のなかに建つ工場に書かれていたものだという。その時、日本好きの彼の、SFオタク的想像力が膨らんだ。「これはロボット工場にちがいない!」と勝手に思い込んだ。 そこから更に妄想が膨らみ、「そこで作られたロボットが、トラブルで工場の外にでてしまい、世界にふれる。果てしなく広がる草原のなかで、ロボットは何を感じたんだろうか…」と考えた。それをきっかけに、ベトナムへ旅した時には、目の前に広がるベトナムを舞台にした『ブレードランナー』的なものを作ったらどうだろう、とアイデアがアイデアを呼び、今回のストーリーが出来上がった。

渡辺謙などが扮するAIロボットは、驚くほど自我と心をはっきり持ち、体形も少々奇妙な姿に見える。けれど、ロボット工学の専門家から見ると「学術誌の未来予想図を見るよりも、はるかにリアルな、“ちょっと先のAIロボット技術”を実感できるもの」(千葉工業大学未来ロボット技術研究センター 古田貴之所長)だそうだ。
そんなAIと人間の更なる行く先を、エドワーズ監督がどう創造したのか、ぜひ体感してみてください。この映画もやはり、大スクリーンがオススメです。
文=坂口英明(ぴあ編集部)
【ぴあ水先案内から】
植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)
「……生成AIの今後が注目される現在だからこそ、必然的に生まれた近未来SFアクション映画……」

(C)2023 20th Century Studios
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