『CHAGU CHAGU ROCK FESTIVAL 2025』、2日目がスタート。この日は岩手山にガスがかかっていたが、昨日に続いて午前中から眩しい日差しが降り注ぎ、暑い1日となった。アイドルやダンス&ボーカルグループ、シンガーが多く出演した1日目に対して、この2日目はロックバンドが中心。客層もファミリー層から、普段ライブハウスに足繁く通うようなキッズの姿が多くなって、2日間でちがった盛り上がりを見せた。両日を通して、岩手でライブをするのは初めてのアーティストも多かった。フェスを通じて新たなアーティストに、また新たな観客に出会い、そこから次なるライブツアーやクリエイティブへとつながっていく。その足がかりとなればという願いがフェスが掲げる“岩手に音を、活気を、熱を。”に込められていると思うが、アーティスト、バンド、観客からもその気概が感じられた。楽しみが大きく広がっていく2日間となった。
11:00~ 盛岡さんさ踊り清流
この日は、毎年8月に開催される『盛岡さんさ踊り』や、県内外のイベントや大会にも出演する、盛岡さんさ踊り清流がステージへと登場。親子3代で活動する方もおり、地域に伝わるさんさ踊りを保存継承していくステージには、同じくここから未来へと紡がれていくこのフェスの思いも重なっている。
11:45~ FLYING KIDS
「帰ってきたよ、岩手に。いくぞー! 後ろの方も盛り上がっていくよ」という浜崎貴司(vo)の挨拶とともに、賑やかにバンド・アンサンブルのボリュームを上げていったのは、昨年に続いての出演であるFLYING KIDS。大所帯によるファンキーなサウンドで踊らせ、「毎日の日々」ではコール&レスポンスを起こし、また「ディスカバリー」では強靭なビートとパワフルな歌とで会場内の熱気を上げた。気持ちよく晴れた空に、そのサウンドや観客のシンガロングが舞い上がっていく。メジャーデビュー35周年を迎え、6月11日に記念アルバム『希望のシッポ』をリリースする FLYING KIDS。リリース日は浜崎が還暦を迎える誕生日でもある。「還暦を迎えても嫌いにならないでください」と言って会場を沸かせつつ、ここで記念アルバムにゲスト参加したPES(RIP SLYME)をステージに呼び込んで「ハナフブキ~宴もたけなわ~ feat.PES」を披露。積み重ねてきた時間に思いを馳せながら、さらなる高みを目指す。歌に込めたその思いが、岩手山にこだました。心の炎とソウルを燃やし続けるバンドを祝すように、ラストに全員で大合唱した「幸せであるように」は格別の響きとなった。
12:45~ 離婚伝説
今夏も全国各地の夏フェスへの出演が決まっている、松田歩(vo)、別府純(g)による離婚伝説。昨年のツアーで東北には来ているが、岩手でのライブは『CHAGU CHAGU ROCK FESTIVAL』が初めて。サウンドチェック時に別府は「初めてきたけどいいところだね。あれは何山? 岩手山か」と観客とフランクに話していたが、本番では一転。MCらしいMCはなしで、「あらわれないで」から観客はその甘美な音楽にどっぷりと浸り、深く酔いしれるステージとなった。松田のシルキーなボーカルが冴える「スパンコールの女」、また爽やかに空へと駆け上っていくサウンドに手拍子が高鳴る「まるで天使さ」、そして懐かしい歌謡曲を思わせる「萌」での饒舌なギターに歓声が上がる。「本日のおすすめ」から「愛が一層メロウ」へと高揚感たっぷりで繋がっていった後半では、グルーヴィなサウンドに踊り、“愛が一層メロウ”のシンガロングで一体感を生んだ。春にリリースした「紫陽花」は、野外のライブでは歌心がより際立って鮮やかさを増す感じだ。濃厚なバンド・アンサンブルによる「メルヘンを捨てないで」後も、心地よい酩酊感が後を引くライブとなった。
13:45~ Kroi
「みなさん調子はどうですか。天気がよくて気持ちいいですね」と内田怜央(vo)が挨拶し、のっけから興奮のメーターを振り切っていく「Juden」でシャウトを轟かせたのは、昨年に続き出演のKroi。内田はパーカッションを叩き、あるいはステップを踏んでバンドのグルーヴの温度を上げていき、またメンバーそれぞれアグレッシブなプレイで見せ場を作りながら、観客のボルテージを上げていく。「どうも、Kroiちゃんでございます」とかわいらしく言うが、アンサンブルは容赦なしにうねりを帯びながら、観客に襲いかかってくる。 FLYING KIDSにはじまり離婚伝説、そしてKroiと世代はちがえどソウルミュージックの遺伝子を継いでいくバンドが続き、観客は体の揺れを止められないといった状態。「Page」や定番ファンクのオマージュや遊びをふんだんに盛り込んだ「Monster Play」等ライブで練り上げられてきた曲は圧巻だ。盛岡出身の千葉大樹(key)が「ただいま!」と声をあげ地元のフェスに凱旋する喜びを炸裂させるとライブは後半へ。艶やかなシンセを響かせる「Balmy Life」から、「今年も躍進し続けたいと思ってます」(内田)と宣言し「Fire Brain」の白熱したアンサンブルで加速度的に熱量を上げながら爆走。そのビートを観客の体と心に刻みつけていった。
14:45~ Novelbright
サウンドチェック時から観客のシンガロングを巻き起こし、「CHAGU CHAGU、はじめようか!」という竹中雄大(vo)の高らかな叫びでスタートしたのは、岩手でのライブはこれが初となる5人組バンドNovelbright。彼らのライブを地元で観ることを待っていた観客も多かったのだろう、1曲目の「フェアリーテール」から観客は高く手を伸ばし、あるいは大きくハンドクラップをして音に乗る。続く「seeker」では馬力たっぷりのロックサウンドにコブシが上がり、竹中が超ロングトーンのボーカルを空へと放つと、歓声と熱気が会場内に満ちていった。一緒に口ずさんでもらえたら、と中盤では「愛とか恋とか」や、竹中の口笛ではじまる「また明日」などミディアムなナンバーを聴かせる。竹中は「山を目の前にやらせていただくのは新鮮な気分」と岩手山を眺め、後半は山に轟かせるようにアンサンブルのボリュームを上げ「カノープス」「Sunny drop」で観客のジャンプを巻き起こしていく。笑顔が溢れる会場に「出会ってくれてありがとう。またすぐに会いましょう!」と約束をして、「Walking with you」を贈った。
16:00~ coldrain
「2日間でいちばんうるさいバンドの時間がきました」(Masato・vo)と、ド頭から挑発的に超重量級のサウンドとグロウルとで会場をかき回していったラウドロック・バンド、coldrain。アスファルト敷の会場に、足元から痺れる低音のビートが轟き、「THE REVELATION」から観客は大きくジャンプする。Masatoは、初めてくる野外のフェスは不安があると語る。「なぜなら18年前に“冷たい雨”(coldrain)というバンド名をつけたから──でもめちゃめちゃいい天気じゃないですか」と言って盛り上げると、Y.K.C(g)のタッピングから最新シングル「INCOMPLETE -Super long intro ver-」へと突入。どの曲も観客の反応が熱い。コブシを振り上げ、ヘッドバングしながらその轟音を全身で浴びる。初めてのフェスでもその場をホームと化していくバンド力、また初めて激音に触れる人も惹きつける練り上げられたステージで、観客の心を掴んだようだ。そして今日初めてcoldrainに出会ったように、またフェスに行ったら好きなバンドを見つけてほしいとフェスの楽しみを語って、ラストの「FINAL DESTINATION」までアグレッシブなサウンドを浴びせていった。
17:00~ サンボマスター
会場に大きな“愛と平和”コールを起こし、熱いロックンロールを響かせたサンボマスター。「ここに恥ずかしがりに来たのか踊りに来たのか、どっちなんだ」「それなりに楽しい岩手のフェスにするのか、とんでもねえフェスにするのか。どっちにするか決めろよ」(山口隆・vo/g)と、1曲目の「青春狂騒曲」から観客のリミッターを外していくライブで、会場には感情を爆発させるようなエモーショナルな熱気が満ちる。「俺たちはお前らのことを全員優勝させにきたんだ。全員優勝ってことは、愛と平和だ」と、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」では観客がピースサインを掲げ、また一人ひとりに「生まれてくれてありがとう!」と語りかけるような山口の叫びではじまった「Future is yours」では歓喜の声が上がる。昨年も出演したかったが、同日に岩手でワンマンライブをやっていたという3人。昨年の分のエネルギーも注入して、何重にも輝きを増したロックンロールが会場を眩しく照らし、観客はその音楽を全身で受け取っていく。《あなたが花束》というエンドレスとも思えるシンガロングを巻き起こした「花束」での美しい光景は、フェスのハイライトのひとつとなった。
18:00~ Dragon Ash
夕陽がステージへと差し込む時間帯。この最高の舞台にドラマを紡いでいくようにスタートしたのは、Dragon Ash。BOTSのDJにはじまり、Kj(vo/g)が歌を、櫻井誠(ds)、hiroki(g)、T$UYO$HI(b)が音を重ね合ってダイナミックに音の景色を広げていく「Entertain」から、続く「Mix it Up」では「好きにやれ、CHAGU CHAGU!」というKjの声を合図に観客が飛び跳ねる。ステージ上ではKjとT$UYO$HIがヘッドバングで盛り上げ笑顔でフィストバンプし、興奮に沸く会場に更なる燃料を加えていった。昨年に続いての出演となるが、「この35分間、ひとりでも気に入ってもらうために来ました」とKjは語る。四半世紀以上ロックシーンを走り続け、慢心するどころか、彼ら自身が誰よりもロックミュージックを楽しみ、衝動的なパワーに身を委ねてステージで飛び跳ねている。その姿も観客を熱くさせ、「For divers area」で楽しくジャンプし、「Fantasista」で大きなシンガロングを起こした。またこの日トリに登場するRIP SLYMEとは長い付き合いがあり、その仲間が再びステージに立つことを我がことのごとく喜び、ラスト「New Era」で観客のボルテージを最高潮にしRIP SLYMEへと最高のバトンを渡した。
19:00~ RIP SLYME
『CHAGU CHAGU ROCK FESTIVAL 2025』の2日間を締めくくるのは、今年メジャーデビュー25周年を迎え、PES、SUが再加入したフルラインナップで活動再開を果たしたRIP SLYMEが登場した。ステージど真ん中に鎮座したDJブースにDJ FUMIYAが登場し“RIP SLYME IS BACK!”の声とともに、ILMARI、RYO-Z、PES、SUが歓声に迎えられステージへ。「STEPPER’S DELIGHT(2025ver.)」ではじまったライブは、この日を待っていたという熱量の高い観客の声で彩られていく。「しっかりダンスクラシックもぶち込んでやるからな」と、アッパーな「Super Shooter」や「熱帯夜」で、興奮の歓声をダンスに変える。客席では肩車された子供もビートに乗っていたが、むしろ肩車をするお父さんの方が楽しそうだ。RYO-ZによればRIP SLYMEが岩手でライブをするのは、2005年の安比高原での『APPI MUSIC CAMP』以来だという。満を辞して、さらにそこからそれぞれ大人の戯れも遊び心も増して、『CHAGU CHAGU ROCK FESTIVAL』で岩手に帰ってきた。「どON」や「Wacha Wacha」といった今年リリースされた新曲もすでにライブでの起爆剤となっているほか、グルーヴィなビートにメロディが冴える「SLY」や、延々とジャンプを繰り広げ宴を盛り上げていく「JUMP」、ヒットチューン「楽園ベイベー」など惜しみなく曲を連投。興奮に火照る会場に夜風が気持ちよく吹いたところで、ラスト「JOINT」で再び太陽を呼び戻すかのように全員でタオルを回し、クライマックスを更新し続けるステージとなった。大きなアンコールの声でステージへと舞い戻った5人は、再結成してまだ一度もやっていない曲を、と「One」を披露。『CHAGU CHAGU ROCK FESTIVAL』の2日間を大団円でしめくくった。
<公演情報>
『CHAGU CHAGU ROCK FESTIVAL 2025』
6月8日(日) 岩手・ツガワ未来館アピオ 岩手産業文化センター野外特設会場
【セットリスト】
■FLYING KIDS
M1.CHAGU CHAGUの皆さん
M2.我想うゆえに我あり
M3.毎日の日々
M4.REFLEX ACTION
M5.ディスカバリー
M6.ハナフブキ~宴もたけなわ~ feat.PES
M7.風の吹き抜ける場所へ
M8.幸せであるように
■離婚伝説
M1.あらわれないで
M2.スパンコールの女
M3.まるで天使さ
M4.萌
M5.本日のおすすめ
M6.愛が一層メロウ
M7.紫陽花
M8.メルヘンを捨てないで
■Kroi
M1.Juden
M2.Page
M3.Monster Play
M4.Balmy Life
M5.Fire Brain
■Novelbright
M1.フェアリーテール
M2.seeker
M3.愛とか恋とか
M4.また明日
M5.カノープス
M6.Sunny drop
M7.Walking with you
■coldrain
M1.THE REVELATION
M2.ENVY
M3.INCOMPLETE -Super long intro ver-
M4.CUT ME
M5.THE SIDE EFFECTS
M6.VENGEANCE
M7.FINAL DESTINATION
■サンボマスター
M1.青春狂騒曲
M2.ヒューマニティ!
M3.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
M4.Future is yours
M5.できっこないを やらなくちゃ
M6.花束
■Dragon Ash
M1.Entertain
M2.Mix it Up
M3.ROCKET DIVE
M4.For divers area
M5.百合の咲く場所で
M6.Fantasista
M7.New Era
■RIP SLYME
M1.STEPPER’S DELIGHT(2025ver.)
M2.Super Shooter
M3.熱帯夜
M4.どON
M5.SLY
M6.FUNKASTIC
M7.JUMP
M8.Wacha Wacha
M9.黄昏サラウンド
M10.楽園ベイベー
M11.JOINT
EN1.One
<特別番組概要>
放送日時:2025年6月28日(土) 15:30~16:25
放送局:テレビ岩手
放送内容:『CHAGU CHAGU ROCK FESTIVAL 2025』、熱狂の2日間をドキュメンタリー形式で放送。圧巻のライブパフォーマンス、アーティスト&観客のインタビューもたっぷりと。現地の熱気と感動を余すことなく伝える。
公式サイト:
https://www.tvi.jp/chagurock