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ハッとさせられる子どもたちの世界を見事に描いた呉美保監督の『ふつうの子ども』──蒼井優、風間俊介、瀧内公美が大人役【おとなの映画ガイド】

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『ふつうの子ども』 (C)2025「ふつうの子ども」製作委員会

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またひとつ、少年少女映画の傑作が生まれた。9月5日(金)に全国公開される『ふつうの子ども』。コーダの男性を主人公にした『ぼくが生きてる、ふたつの世界』などの呉美保監督の新作。ある“ふつうの”小学生の身に起きた、彼にとってはとても大きな夏の事件。大人役では、蒼井優、風間俊介、瀧内公美らが出演。主役の嶋田鉄太をはじめ、子どもたちのエネルギッシュで、無邪気で、チョイ危険な世界に魅了される。でもそれって誰もが通りすぎた夏の記憶だったりして……。

『ふつうの子ども』

きっかけは作文の発表だった。自分の身のまわりのことを書く、そんな宿題で、唯士(嶋田鉄太)は受けをねらって「うんち」のことを書いたのだけれど、担任の浅井先生(風間俊介)から軽く「ふざけるのと自由はちがう」といわれ、ちょっとしょげた。そんな自分の作文にくらべ、次に発表をした心愛(瑠璃)のは、地球の温暖化や環境破壊について、大人たちを糾弾する内容で、その毅然とした彼女の姿に、唯士は釘付けになってしまった。物語は、このふたりと、威勢がよくてクラスの問題児ともいえる陽斗(味元耀大)の3人が、その夏に熱中した、ある“活動”を描く。

心愛は、スウェーデン出身の環境活動家グレタ・トゥーンベリに影響を受け、図書館でいつも環境問題の本を読んでいて、正義感の塊のような小学生。そんな、グレタのような女の子に恋をした男の子が環境問題を必死に勉強しはじめる……この感じがたまらない。

このアイデアを思いついたのは菅野和佳奈プロデューサー。それを『そこのみにて光輝く』と『きみはいい子』の 監督・呉美保と脚本・高田亮のコンビがふくらませた。

監督、脚本のふたりはちょうど同じくらいの子どもがいて、その子育ての経験や、多くの父兄への取材をもとに、今の日本に生きる子どもたちと、彼らと同じ時間に向き合う大人たちにフォーカスした映画を作ろうと考えた。

男の子ふたりと女の子ひとり、ちょっとした大人社会への異議申し立てを行動に示す、イギリスの名作『小さな恋のメロディ』を彷彿とさせる。あれは、結婚がテーマのロマンティックなラブストーリーだった。本作の唯士クンは、心愛さんのことが好き、彼女は陽斗クンにちょっと心ひかれている、という三角関係のなかで、彼らなりに考えた環境問題へのアプローチをする。

なんといっても、主人公唯士を演じた嶋田鉄太の演技、存在感がまず、大きい。超利発といった風でもなく、こまっしゃくれてもいないし、お芝居をしている感はまるでない。彼の資質か、監督の演技指導か、はわからないけれど、完璧な“ふつうの子ども”。彼の元気で、まっすぐな姿をみているだけで、心楽しくなるのだ。

環境汚染につながるからお肉は食べない、と宣言はするものの、ママ(蒼井優)が作ってくれた春巻をつい美味しいと食べてしまったり。終盤、考えようによってはかっこいい発言をするのだが、それも毅然とではなく、めそめそしながら。

子どもの世界といってもさまざまだ。仲良しグループで同じ消しゴムを使う、グループ外のひとには使わせないようにするというたわいない陰湿さがあったり、虫好きもいれば、虫に怯える子もいる、その嗜好と人間関係が微妙にいりくんでいたり。子どもの世界は一様ではない。

ものすごく面白くて、ちょっぴり怖くもあり、なんだかいい気分にさせてくれる、そんな映画です。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】

笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「なんていとおしい映画! こんなにも子どもたちを生き生きと活写した作品を久しぶりに観た……」

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相田冬二さん(Bleu et Rose/映画批評家)
「……作り手たちの気概と本気の志に胸打たれる。2025年必見の1本。」

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(C)2025「ふつうの子ども」製作委員会

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