今あらためて振り返る、“ロックの英雄”ブルース・スプリングスティーンとは?
今あらためて振り返る、“ロックの英雄”ブルース・スプリングスティーンとは?
早くもアカデミー賞の呼び声高く! ブルース・スプリングスティーンの若き日を描く映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』が11月14日(金)から公開になる。“ザ・ボス”の愛称で知られるブルースは現代を代表するシンガーソングライターのひとりで、彼を主人公にした映画の登場は世界中の注目を集めている。
“心の声”を歌い続ける男、ブルース・スプリングスティーン
エルヴィス・プレスリー、ボブ・ディラン、ザ・ビートルズ……ポピュラー音楽の歴史には教科書にその名と功績が載ることが確実視されている(その一部はすでに掲載されている)人物がいるが、ブルース・スプリングスティーンも間違いなく歴史にその名を刻む音楽家だ。
1949年に米ニュージャージーで生まれた彼は地元でバンド活動をしながらキャリアを模索し、ディランやアレサ・フランクリンを見出した伝説的なA&Rのジョン・ハモンドに見出されてデビューを果たす。直後は地道な活動が続いたが、1975年にアルバム『明日なき暴走 (Born to Run)』で大きな注目を集め、スター街道を走り出す。
1980年には5枚目のアルバム『ザ・リバー (The River)』でチャート首位を獲得。現在も語り継がれる名盤『ネブラスカ (Nebraska)』を1982年に発表した後、1984年にアルバム『ボーン・イン・ザ・U.S.A. (Born in the U.S.A.)』を発表。その成功を決定的なものにする。
以降もアルバムは好評を博し、全世界におけるアルバム総売上は2024年時点で約1億4000万枚。その作品群はレコード、CD、ストリーミングと聴かれ方が変化しても常に音楽ファンの前で鳴り響き、新たなファンを獲得している。
彼はキャリアを通じて様々な曲を手がけ、歌詞の内容も多岐にわたっているが、アメリカで地道に暮らしている若者や労働者の声、誰もが人生の中で壁を感じたときに抱く複雑な感情、時代を経ても変わらない社会の真理などが歌われ、ファンは共感を抱いて彼の音楽を聴き、共に歌っている。
そう、ブルースは観客が「これは自分のことを歌っている」と思ってしまうシンガーだ。楽曲ごとに世界観も主人公も異なるが、観客はそこから、普通の労働者の声、通りを歩く一般の人の声、アメリカ人の生の声、自分の中にある想い、つまり“心の声”を聞き取る。
その感覚は彼のコンサート会場で大歓声と観客の歌声となって現れる。ブルースは現代屈指の“ライブ・パフォーマー”だ。活動の中でもライブツアーが占めるウェイトは大きく、1984年から翌年にかけて全世界で行われた「Born in the U.S.A.ツアー」は約390万人が会場に集まり、ロック史に残るライブツアーになった。
その後もライブの動員は衰えることはなく、2023年から始まり現在開催中の最新ツアーの動員数はすでに500万人を突破。発売されているライブ・アルバムを聴けば分かるが、ブルースと彼の朋友Eストリート・バンドの熱いパフォーマンス、それに負けない観客の歓声が同じ空間で渾然一体となるのが彼のステージの醍醐味。ファンがブルースに厚い信頼を寄せていることが伝わってくる。
映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』では、彼が若い頃に悩み、苦しんだ時期の物語が描かれる。本作が公開されることで、ファンはブルースの楽曲をさらに深く聴くことができるはずだ。さらに本作は新たなファンを呼び込むことが期待されており、彼の最新ステージではこれまで以上の歓声があがることになるだろう。
“ザ・ボス”が日本に降り立った日
そんなブルース・スプリングスティーンが初めて日本でライブを行ったのは1985年。先ほど紹介した「Born in the U.S.A.ツアー」の一環で4月10日と11日、13日、15日、16日に国立代々木競技場第一体育館、19日に京都府立体育館、22日と23日に大阪城ホールでステージに立った。
8公演の総動員数は75000人でチケットは完売。いずれの公演も3時間超えの圧巻のパフォーマンスで、観客はブルースが登場する前から声をあげ、大きな盛り上がりを見せたという。
このほど公開になったのは、雑誌「ぴあ」1985年4月19日号の表紙。楽器を手に馬車で通りを行く彼の姿が描かれている。当時はアルバムも大ヒットし、初の来日公演に向けて観客の期待が高まっていたタイミングだ。その後、ブルースは2度、来日公演を行っているが、初来日時の3時間を超えるライブの盛り上がりは格別で、ファンの間では今も伝説として語り継がれている。
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