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ぴあ 総合TOP > 反田恭平が奏でるブラームスとショパンの世界 バンクーバから始まったコンサートツアーで魅せた圧巻のステージ

反田恭平が奏でるブラームスとショパンの世界
バンクーバから始まったコンサートツアーで魅せた圧巻のステージ

音楽
2025年12月19日
メイン画像

Text:山田治生(音楽評論家)
Photo:(C)上野隆文

『反田恭平ピアノリサイタル2025』のツアーは、11月9日のカナダ・バンクーバーから始まった。11月29日の東京・サントリーホールでのリサイタルは、このツアーの10公演目にあたる。プログラムはブラームス(ブゾーニ編曲)の「11のコラール前奏曲op.122」より第8番「一輪のバラが咲いて」、ブラームスのピアノ・ソナタ第3番、ショパンの4つのスケルツォというものであった。

反田は、黒ジャケットにテーパード気味の黒パンツというカジュアルフォーマルな衣装(ヨウジヤマモト)で登場。まず「一輪のバラが咲いて」。この小品は、ブラームスが最晩年にオルガンのために書いたものを、20世紀初頭前後に活躍した作曲家であり、ピアノの名手でもあったフェルッチョ・ブゾーニが独奏ピアノ用に編曲したものであり、しばしば単独で弾かれる。反田は、ゆったりと洗練された音色で、レガートにロマンティックに演奏。静まり返った余韻に聴衆の集中を感じる。拍手は起きず、少しだけ間をとって、反田は、ブラームスのピアノ・ソナタ第3番を続けて弾き始めた。ブラームスにとって最後のソナタにあたるが、3つのピアノ・ソナタすべてが彼のキャリアの初期に書かれたものであり、ブラームスがまだ20歳の頃の作品である。

反田は、「一輪のバラが咲いて」からの沈黙を力強く打ち破り、オーケストラのように楽器を鳴らし切った。第2主題は丁寧でロマンティック。第2楽章は月夜に秘めた思いが描かれ、ハッとするような弱音も聴かれる。

第3楽章はスケルツォ。情熱的で重みがあり、リズムはきっぱりとしている。第4楽章「間奏曲」では、ベートーヴェンの「運命」のリズムを強調。そして、第5楽章。副主題での歌心が印象的であり、ブラームスの若々しい情熱の発露とともに力強く全曲が締め括られた。

プログラム冊子のインタビューの中で、反田は2023年にブラームスの交響曲第1番を指揮したことについて述べていたが、彼は同年にアラン・ギルバート指揮ハンブルクNDRエルプフィルとブラームスのピアノ協奏曲第1番も演奏している。それらの経験も影響しているのだろう。反田のこの日の演奏には、力強さが増し、音楽のスケールがさらに大きくなったように感じられた。

リサイタル後半は、ショパンの4つの「スケルツォ」。反田は、インタビューの中で、ブラームスのピアノ・ソナタ第3番とショパンの4つの「スケルツォ」の組み合わせは親交のあるピアニストのクリスチャン・ツィメルマンのプログラミングの真似だと語っているが、2023年のリサイタルの「バラード」全曲に続くプログラムともいえる。第1番は速めのテンポ。攻めの姿勢で、ショパンの内面を描く。中間部ではベースをたっぷりときかせて歌う。第2番は冒頭の強音に驚く。音楽のスケールが大きい。一方、中間部では沈み込むような弱音を奏でる。激しい攻めの表現、ダイナミックスの幅の広さが印象に残る。

第3番では強靭な打鍵で二千席の大ホールを満たす。中間部も華やか。そして最後の第4番ではリズミックな運動性が強調される。ショパン後期の含蓄も感じられる。

鳴りやまない拍手に応えて、アンコールとしてまず、シューマンの「トロイメライ」がじっくりと静かに歌い込まれた。弱音表現の素晴らしさ。そしてアンコールの2曲目にブラームスの「間奏曲」op.118-2が演奏された。優しく温かく、歌曲のような歌心がたっぷりと示される。

ブラームスで始まり、ブラームスで終わったプログラム。反田の充実ぶりを実感する一夜であった。

公演概要

『反田恭平ピアノリサイタル2025』
11月29日 東京・サントリーホール

公演情報

2026年
『新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 すみだクラシックへの扉#35』
1月9日(金) ・10日(土)東京・すみだトリフォニーホール
『反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ 冬ツアー2026』
1月30日(金) 奈良・なら100年会館 大ホール
1月31日(土) 広島・リーデンローズ 大ホール
2月6日(金) 東京・サントリーホール
2月7日(土) 愛媛・愛媛県県民文化会館メインホール
2月8日(日) 高知・高知県立県民文化ホール・オレンジホール
『NHK交響楽団 第2062回定期公演Cプログラム』
4月24日(金) ・25日(土) 東京・NHKホール
4月29日(水) シンガポールEsplanade Concert Hall
『パーヴォ・ヤルヴィ音楽監督 チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団』
5月18日(月) 東京・サントリーホール
5月21日(木) 東京・すみだトリフォニーホール
5月22日(金) 愛知・愛知県芸術劇場コンサートホール
5月23日(土) 大阪・ザ・シンフォニーホール
2027年
『反田恭平&ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団 日本ツアー2027』
3月15日(月) 神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール
3月16日(火) 岡山・倉敷市民会館
3月17日(水) 福岡・福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
3月18日(木) 愛知・愛知県芸術劇場コンサートホール
3月20日(土) 宮城・仙台銀行ホールイズミティ21 大ホール
3月21日(日) 新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
3月22日(月) 京都・京都コンサートホール 大ホール
3月25日(木) 東京・東京オペラシティコンサートホール
3月27日(土) 北海道・札幌 会場名後日発表

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