アイドル級の忙しさ! 映画界のオモロい内情も垣間見える『津田寛治に撮休はない』──【おとなの映画ガイド】
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『津田寛治に撮休はない』 (C)映画『津田寛治に撮休はない』製作委員会
続きを読む本人が本人役を演じるドラマはいくつかあるけれど、その中でもかなり面白いストーリー展開を味わえる映画『津田寛治に撮休はない』が、3月28日(土)にいよいよ公開される。主演は、もちろん津田寛治。出演作360本以上という人気バイプレーヤーの日常がのぞき見できる楽しさに、業界内幕ものの魅力やサスペンスのハラハラ感を加え、ラストで「そうきたか!」と唸らせる、手の込んだ1本だ。
『津田寛治に撮休はない』
映画監督で映画評論家でもある樋口尚文さんは、ぴあの連載「銀幕の個性派たち」で、津田寛治のことを、「何か目覚ましい役柄で強烈に遍く認知されたというよりも『気がついたら隣にいた』、そして『気がついたが最後、気になってしかたがない』存在である気がする」と書いている。北野武監督の『ソナチネ』でデビュー。森田芳光や黒沢清といった大監督作、4作の大河ドラマ、朝ドラだって出演しているが、新人監督の作品、超低予算映画にもフットワークよく、同じ熱量で登場する。

演技の腕も抜群なので、作る側にとって頼りがいのある役者。そのうえ、オファーされた役をたいていは興味津々に引き受けてしまうから、「撮休はない」……。そう、主役級のスターの“休みがない”のとはちょっとニュアンスが違い、さまざまな役を引き受けて飛び回っているから「撮休はない」のだ。そんな神コスパのスゴ腕バイプレーヤーを本人役で主人公にした、ってのが本作のポイント。

映画は、彼の日常を描いていく。自宅のテーブルには、何種類もの脚本が置かれ、ひっきりなしに現場入り。家族ドラマのお父さん役から、アクション映画で血糊を浴びまくる役、アイドルが主演のコミック原作ものでは銀髪のウィッグを被った重鎮役、B級味あふれる役回りの熱演には、思わず笑ってしまった。

飲み屋で隣席の客に声をかけられるシーンも、実際にありそう。……「テレビに出てる人? あ、信長やったでしょ?」「いえ、やったことないです」「じゃ、あれだ、女体盛りしてお寿司に殺されちゃう役!」「それはやりました」……ってこれは本当で、『デッド寿司』という映画。

ストーリーは、そんな撮休のない俳優・津田寛治が、全ての役柄に入魂するあまり、個人生活と映画の役が渾然一体となって、ついに「自分は何者かに付きまとわれている」妄想にとらわれてしまう、観ている側もハラハラする展開。全体のテイストは、コミカルで、哀愁も漂い、ウディ・アレン映画のような味わいすら感じられる。

監督は『夜を越える旅』『断捨離パラダイス』の萱野孝幸。この4月には田中麗奈主演の『黄金泥棒』が公開を控えている新鋭だ。「萱野監督からは、“芝居と現実が混ざる劇映画”と説明されたので、私生活の取材とか受けなきゃいけないのかなと思っていたら、それもないまま第一稿が上がってきて『なんで俺のこと、こんな知ってるの!?』と驚きましたね」と津田がコメントするほど、監督自身が津田フリーク。

ちんけなドラマのカッコつけた監督に80回以上撮り直しをさせられるシーンもあるが、リテイクのたびに違う演技をみせてくれる。そんなプロの演技者の顔、バイプレイヤーとしての美学、役者としての信条、楽屋でみせる愛嬌……。そのどこまでがホントかフィクションかはわからない。が、この人は、映画と、俳優業が心底好きなんだな、という空気はびんびん伝わって、感動さえ覚える。津田寛治……ただものではない。
文=坂口英明(ぴあ編集部)

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笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「飛び道具的面白さ!……」
(C)映画『津田寛治に撮休はない』製作委員会

