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【おとな向け映画ガイド】

君は “伝説のコメディアン” ジョン・ベルーシを見たかー『BELUSHI ベルーシ』

ぴあ編集部 坂口英明
21/12/12(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(12/17~18)に公開される映画は15本。全国100館以上で拡大公開される作品が『マトリックス レザレクションズ』『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』の3本。中規模公開、ミニシアター系の作品が12本です。今回はそのなかから、伝説のコメディアンを描いたドキュメンタリー『BELUSHI ベルーシ』をご紹介します。

破天荒なエンタテイナー、嵐のような人生

『BELUSHI ベルーシ』

いま見てもこの狂気はスゴイ。1978年の『アニマル・ハウス』で一挙に人気者になり、80年の『ブルース・ブラザース』というカルト映画で頂点を極め、82年に33歳の若さで亡くなったジョン・ベルーシ。死因は薬物過剰摂取でした。そのすさまじい伝記映画です。高校生の時から付き合いはじめ、ともに成長し、まさに苦楽をともにした妻、ジュディス・ベルーシが製作に参加しているため、秘蔵資料もふんだんにもりこまれています。生き急いだ天才コメディアン、嵐のなかの青春時代を赤裸々に描いたドキュメンタリーです。

ベルーシ直筆のネタ書き、ラブレター、詩、復元された8ミリフィルム……“初めて明かされた”資料の数々。アルバニア移民の二世としてイリノイ州で生まれ育ち、近所の知り合いの家に出没して、ものまねやコントで笑わせていたという少年時代は、カナダのロバート・バレーによるアニメーションとジュディスをはじめとする幼馴染の証言で綴られます。

やがて、シカゴの劇団に入り、そこからのし上がっていく時代。ニューヨークに乗り込んでからの、才気にあふれ、こわいものなしのべルーシは、やはりただものではありません。

ニューヨークで最初に認められたのはパロディ雑誌『ナショナル・ランプーン』の世界観をもとにした舞台やラジオショーなどへの出演。彼をとりまく人間模様も、いまからみるとまるで水滸伝といいますか、芸達者ばかりで壮観です。そしてベルーシとその仲間たちが中心となり、伝説のテレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』が始まります。チェビー・チェイス、ビル・マーレイ、ハロルド・ライミス、ダン・エイクロイドといった、その後、アメリカ・コメディ界の大御所となるコメディアンたちがここから飛びだします。

この、1975年に始まった『サタデー・ナイト・ライブ』の人気コントも、いくつか観ることができます。ベルーシが三船敏郎の『用心棒』に影響を受けて作った「サムライ・デリカテッセン』は、ちょんまげにキモノ、サムライのシェフが包丁のかわりに刀で調理をするデリのコントです。“日本語のような”言葉を話し、何かクレームを言おうものならすぐ腹を切るまねをするギャグが傑作です。複雑なメニューをさけ、客の注文を強引にチーズバーガーに変えさせてしまうギリシャ人ハンバーガー屋のコントは、ベルーシのお父さんがモデルのようです。ベトナム戦争終結、スチューデントパワー、ドラッグとロック、過激な若者たちが好む、時代の空気を象徴する土曜の深夜番組で、ベルーシは暴れまくります。

主演映画は5本。なかでも『アニマル・ハウス』『1941』『ブルース・ブラザース』、代表作ともいえるこの3本がハイテンションで、ジョン・ベルーシらしいです。ブルースにはまり、バンドを始め、架空のブルース・ブラザースという存在を作り、テレビでも演奏し、大会場のコンサートを開く。このあたりのノリは絶好調です。それが映画になって、大ヒット。プライベートではクスリ漬けの日々だったようですが、こうなると誰のアドバイスもききません。

『ブルース・ブラザース』公開時に来日、ブルースを演奏する店をシーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠に尋ね、吉祥寺のライブスポットに飛び入り出演したという伝説があります。映画撮影時に、シカゴの町で、見ず知らずの家を訪問し、そこで食事をしたり居眠りをしたりすることがよくあった、そんなエピソードが物語るように、型破りだが、人懐っこい、風変わりな好人物だったようです。1949年1月生まれというから、生きていたらそろそろ73歳かな。ジョン・ベルーシ、どんなジイさんになっていたでしょうね。

【ぴあ水先案内から】

立川直樹さん(プロデューサー、ディレクター)
「……アメリカンコメディ界に革命を起こしたベルーシの姿が108分の映画の中に見事に凝縮されている……」

立川直樹さんの水先案内をもっと見る

村山匡一郎さん(映画評論家、大学講師)
「……人気が出るほど孤独感が増すとはいうが、やはり薬物に溺れる姿はやるせない……」

村山匡一郎さんの水先案内をもっと見る

首都圏は12月17日(金) からヒューマントラストシネマ有楽町ほかで、中部は12月17日(金) から伏見ミリオン座で、関西は12月24日(金) からシネ・リーブル梅田ほかで、それぞれ公開。

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