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【おとな向け映画ガイド】

渋さの極み!イーストウッドの『クライ・マッチョ』

ぴあ編集部 坂口英明
22/1/9(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(1/14〜15)公開は23本。うち全国100館以上で拡大公開される作品が『コンフィデンスマンJP 英雄編』『ハウス・オブ・グッチ』『クライ・マッチョ』の3本。中規模公開、ミニシアター系が20本です。今回はそのなかから、クリント・イーストウッドの監督・主演作『クライ・マッチョ』をご紹介します。

西部劇の匂い

『クライ・マッチョ』

これはもう「クリント・イーストウッド」という“映画ジャンル”、といいたくなります。映画の撮影中に90歳を越え、ことしの5月には92歳になります。こんな長きにわたり映画界の一線で活躍している監督・役者はいないはずです。レジェンドの功績をたたえずにはいられません。チラシには「監督生活50年の集大成」と書かれ、「かつ新境地ー」という言葉が続きますが、看板に偽り、ございません。

かつてロデオのスターだった男、マイクが、雇い主の息子をメキシコからテキサスへ連れ戻すというロードムービー。といっても、なかば誘拐のように、別れた妻のもとから少年を連れ出し、追っ手を避け、国境をめざす逃避行。少年が飼う闘鶏の「マッチョ」が旅の仲間です。

実はこの映画、40年程前にイーストウッドに持ち込まれた企画。時代はその脚本が書かれた1980年ごろという設定で、落ちぶれた老カウボーイが人生を取り戻すチャンスを得る話です。当時、この役柄をこなすには、“まだ自分は若すぎる”と見送ったものの、ずっと心にひっかかっていたのだそうです。……機は熟したというわけです。

それだけに、彼の過去作の役やシーンを想起させる場面がたくさん散りばめられています。メキシコ国境あたりの舞台は西部の匂いがして、ファンにとってはたまりません。つば広のカウボーイ・ハットをかぶり、馬にまたがるイーストウッドは、アカデミー賞作品賞に輝く『許されざる者』以来30年ぶり。さすがに派手なアクションとはいきませんが、さまになります。少年との旅といえば、『グラン・トリノ』を思い出します。隣家に住む移民の少年に、男の生き方を実践してみせる頑固な元自動車工の老人役でした。あまり有名ではありませんが、『センチメンタル・アドベンチャー』という作品も少年が入った旅でした。それから、警官に追われるシーンは、麻薬の運び屋をしてのける役を楽しそうに演じていた『運び屋』を、気さくな未亡人マルタとのロマンスもあり『マディソン郡の橋』を連想します。モテ爺なあたりは、彼の魅力のひとつです。

一方、イーストウッドをほとんど知らない、例えば少年の立場で観るような年令の人たちに、この作品はどう映るのでしょうか。人として一番大切なモノ、あたりを胸のどこかに刻み込んでくれるといいのですが。

マイクは、過去の栄光に未練はあるし、これまでの生きかたに後悔もある。彼が言う「人は自分をマッチョに見せたがる。すべての答えを知っている気になるが、老いとともに無知な自分を知る」、そんなセリフが、沁みます。再スタートはいつだってできる。もしそうなら、年をとることも悪くない、と思えます。こんなジイさんみたいに……。

【ぴあ水先案内から】

笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……驚きは、自らの“老い”を隠さない演出……」

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高松啓二さん(イラストレーター)
「……伝説をリアルタイムで観られるのは、幸運なことだ」

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堀晃和さん(ライター&エディター)
「……イーストウッドはまた傑作を撮ってしまった。……」

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相田冬二さん(映画批評家)
「……瞳がきらきらしている。この人を見よ。それは、91歳のきらきらではない。イーストウッドの、イーストウッドだけの、きらきらだ。」

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