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【おとな向け映画ガイド】

広瀬すずと松坂桃李がW主演、本屋大賞受賞作を李相日監督が映画化──『流浪の月』

ぴあ編集部 坂口英明
22/5/8(日)

イラストレーション:高松啓二

今週(5/13〜14) の公開映画数は15本。うち全国100館以上で拡大公開される作品が『シン・ウルトラマン』『流浪の月』『バブル』の3本。中規模公開、ミニシアター系が12本です。そのなかから今回は、広瀬すずと松坂桃李のダブル主演『流浪の月』をご紹介します。

『流浪の月』

李相日監督というと、明るいコメディ作品『フラガール』もありますが、妻夫木聡と深津絵里主演の『悪人』、同じく妻夫木と宮崎あおい主演『怒り』の2本のように犯罪に絡む男女の愛を描いた作品がよく知られています。今回はこちらに近い感じ。広瀬すずと松坂桃李がダブル主演し、横浜流星と多部未華子が共演した、今考えられる日本映画トップクラスの顔ぶれによる「禁断の愛」の物語、ショッキングな、しかしあってもおかしくない内容です。

原作は凪良(なぎら)ゆうの同名小説。2020年本屋大賞を受賞し、年間ベストセラー1位となりました。19歳の大学生が10歳の少女を誘拐し、2カ月にわたり監禁した事件、“その犯人”と“被害少女”が15年後に再会する……というストーリー。

当時、犯人逮捕の瞬間はテレビのニュースが現場報道し、ロリコン大学生の小学女児誘拐・監禁という猟奇的でスキャンダラスな事件として拡がりました。が、ふたりしか知らないもっと深い事情があったとしたら、この再会も意味合いがちがってきます。

SNSの時代。過去はネットを通じてどこまでもついてまわります。広瀬すず扮する更紗(サラサ)という名の主人公は25歳になり、事件のことを承知しているエリート会社員の恋人(横浜流星)と暮しながらファミレスでバイトをする日々。しかし、更紗は、たまたま仕事仲間と入ったコーヒー専門のカフェで、34歳になった“元犯人”の文(フミ・松坂桃李)を見かけます。彼は、夜だけ開くその店でひっそりとマスターをしていたのです。知らぬふりをするふたりでしたが……。

俳優たちの演技が光ります。広瀬すずは過去を背負った女性の役。いよいよ大女優の域に入ったといいますか、おとなの女を感じます。そして19歳と34歳を演じ分ける松坂桃李。あまり感情をあらわにしない寡黙な役、悲しみをたたえた表情が印象的です。横浜流星は更紗に翻弄される恋人役、複雑なキャラに挑み、好演しています。小学生の更紗役、白鳥玉季の“目で語る演技”にも驚きます。1歳でデビューし、すでに芸歴10年だそうです。

中心にいる4人だけでなく、ファミレスの店長(三浦貴大)、更紗の同僚(趣里)、文の母親(内田也哉子)……すべての登場人物から「純粋がゆえの不器用さ」が漂います。

突然の雨に始まるふたりの最初の出会い、水際の逮捕劇、再会の街にふる冷たい雨、夕暮れ、雲がかかった月……小都市を舞台にしたしっとりとした映像は米アカデミー賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』のホン・ギョンピョが撮影監督を務めています。文(フミ)のシンプルな住まい、働いているクラシカルなカフェ、柄本明がオーナー役のアンティークショップなど印象的な映画美術を担当したのはタランティーノ監督の『キル・ビル』などで知られる種田陽平。音楽は現代音楽の原摩利彦。国際的な最高のスタッフたちの仕事です。

切ない。とても切ない話です。でも意味深な『流浪の月』というタイトルに込められた主人公たちの明日は、世間の常識とは相容れないかもしれないけれど、やっとみつけた希望の光のようにも感じられます。

【ぴあ水先案内から】

佐々木俊尚さん(フリージャーナリスト、作家)
「……禁断の愛のありようをストレートに描いていて、あまりにもセンセーショナル。しかし圧倒的な感動がある。……」

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相田冬二さん(映画批評家)
「……横浜流星は、この許されざる亮を、あくまでも人間として、わたしたちの隣人として、演じている……」

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中川右介さん(作家、編集者)
「ストーリーも、謎が謎を呼ぶ感じで引き込まれるが、なんといっても、主要人物4人の演技に驚嘆した……」

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(C)2022「流浪の月」製作委員会

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