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“妖艶”……瀧内公美のひとり芝居『奇麗な、悪』、異空間に迷いこむ76分──【おとなの映画ガイド】

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『奇麗な、悪』 (C)2024 チームオクヤマ

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今注目度No.1の俳優、瀧内公美主演『奇麗な、悪』が2月21日(金) に全国公開される。76分という中編。瀧内の“ひとり芝居”で展開する異色作だ。『うなぎ』『その男、凶暴につき』など数々の話題作をプロデュースし生み出してきた奥山和由が、今回は『RAMPO』以来30年振りに監督・脚本を担当している。

『奇麗な、悪』

こんな映画は観たことがない。出演者はひとり。街を歩くシーンがチラッとあるが、あとはすべて、室内でのモノローグ。舞台となる洋館は、精神科医院のようだ。そこで、女性が自分の半生を語る。美貌を武器に、犯罪まがいのこともしながら生きてきた、壮絶で耳をふさぎたくなるような過去、それを包みかくさず、露骨なことばも交えて話し続ける……。

ただそれだけ、といえばそれだけなのだが、淡々としながらも妖艶な語りくち、その内容に、いくつものなぜ、もしかして、が浮かび、想像力を掻き立てられ、観ているこちらはつい引き込まれてしまう。

原作は芥川賞作家、中村文則の初期作品『火』。文庫本30ページほどの短編小説だ。やはりひとり語りのスタイルで書かれている。

奥山和由は、プロデューサーとして、2016年にこの原作を桃井かおり監督・主演、『火 Hee』のタイトルで映画化していて、これが2度目の挑戦。しかも今回は監督・脚本を自ら担当するという気の入れようだが、なるほど、同じ原作でもこんなに雰囲気のちがう映画ができあがるのか、と驚く。

Numero TOKYO(3月号)の奥山監督インタビューによれば、説明過多の映画ではなく「観客の想像力を刺激する映画を作りたいと考えているうちに、思い出したのが『火』でした」という。

それもこれも、演じる俳優に魅力や説得力がなければお話にならない。「出演作『由宇子の天秤』を観て、主演は瀧内公美だと直感した」と監督は語っている。ただ、相当難易度の高いお芝居。たぶん断られるだろうと考えながらオファーをだしたところ、即OKがでた。瀧内の反応は「だって、二度とこういう企画はこないもの」だったという。

瀧内はセリフを丸暗記して撮影に臨み「自分にない言葉は変えたり、省略したりして、自分の肉声として吐き出してくれました……早口になったり、言いよどんだりしてもそのまま、通して3.5回撮りました」(奥山監督のNumero TOKYOインタビューから)。

編集はされているが、全編長回しに見える映像はまるでドキュメンタリーをみているようにリアル。演じている瀧内公美の年齢もあって、「女の一生」を振り返るというよりは、いまも混乱のまっただなかにある女性の息遣いがきこえてきそうな迫力に満ちている。

それにしても、輝きを放っている俳優というのはオーラが違う。このところの瀧内公美の活躍、存在感は群を抜いている。

大河ドラマ『光る君』では義理の父に呪詛をかける道長の妻役、『敵』では元大学教授(長塚京三)を翻弄する教え子役、Netflixの『阿修羅のごとく』では鷹男(本木雅弘)の浮気相手、3月公開の映画『レイブンズ』では深瀬昌久(浅野忠信)の奔放な妻役……。今年に入ってから、春までに出演映画が4本、ドラマが2本。そのすべてで、強烈な印象を与えてくれる。4月からは朝ドラにも重要な役で顔をみせる。

まさに、今“魔性の女”系を演じたら、右に出るものはいない。

ミステリアスなヒロインを演じる瀧内、細部に心を配る奥山演出、そして、撮影監督の戸田義久はじめ、名だたる作品を手がけたベテランスタッフが加わった実にていねいな映画作り。

全編に流れる、妙に耳にのこるメロディーは、口笛奏者の加藤万里奈さんによるもの。ほかにも、女の話に聞き入っているかのようなピエロの人形、意味ありげな後藤又兵衛の「真実」という絵画、机に遺された謎めいた手紙、横浜の古い洋館、夕焼けの外人墓地……そんなさまざまなイメージが、観ているものを異空間に迷い込ませ、しばし時を忘れさせてくれる。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】

笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「やられた! 瀧内公美に持ってかれた。映画ではありえない、まさかの一人芝居。しかも、かた時も目が離せない展開と演技力……」

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立川直樹さん(プロデューサー、ディレクター)
「……かなり不思議な魅力を持った映画だ。……」

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