ブラッド・ピット、かっこよすぎ! 『F1(R)/エフワン』は異次元のモータースポーツ映画だった──【おとなの映画ガイド】
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『F1(R)/エフワン』 (C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories
続きを読むこの夏の超話題作、ブラッド・ピット主演『F1(R)/エフワン』が6月27日(金)、日米同時公開される。一度はF1の世界から姿を消した伝説のドライバーが再び熾烈な戦いに挑戦するという、あの『トップガン マーヴェリック』の制作チームが妥協を許さず完成させた、もはや異次元のスポーツムービー。サーキットの爆音と熱気に興奮し、勝利への執念と人間模様に涙する。没入感で満たされる155分だ。
『F1(R)/エフワン』
これまで観たことがない、モータースポーツ映画だ。レースシーンは、最新鋭の撮影技術、設備によるリアルな映像と音。時速300キロ超えのF1マシンが、キュイーンと画面を横切るかと思えば、目もくらむコックピットからの視界が展開する。いやあ、すさまじい! 地上版『トップガン』誕生、がふれこみですが、大げさではありません。

それもそのはず。この映画、監督はジョセフ・コシンスキー、脚本はアーレン・クルーガー、撮影はクラウディオ・ミランダ、音楽はハンス・ジマー、と『トップガン マーヴェリック』制作チームが再集結しているのだ。製作総指揮を『トップガン』第1作や、「パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズを生んだヒットメーカー、ジェリー・ブラッカイマーが担当して、観るものを楽しませるツボを心得た作り。映像を筆頭に、すべてに妥協なきこだわりが見える。
内容は、伝説のF1ドライバー、ソニーのカムバック物語。“伝説の存在”ってからには、相当なオーラを放つ俳優が演じなければ成立しない。そこで選ばれたのが、ブラッド・ピットだ。彼なくしてこの映画はありえない。

世界三大耐久レースのひとつ、フロリダの「デイトナ24時間レース」から映画は始まる。超ベテランであるソニーは、このレースに優勝し、健在ぶりを示す。そこに、かつてライバルで、いまはF1チームのオーナーのルーベン(ハビエル・バルデム)が声をかける。ルーベンのF1チームは現在最下位。ここで勝たないと後がないという状況下、万策尽きたところでのオファーだった。ソニーは最初は固辞したが、彼の生涯の心残りは、F1グランプリで栄光の座につけなかったこと。気を奮い立たせ、参戦を決める。
そこからは、チームにやって来たスゴ腕の男が、つむじ風を巻き起こしながら、次第に周囲をまとめあげ、中心的存在になって、不利な状況から敵に堂々とわたりあっていくという、王道もののストーリー。

語りたい魅力はいくつもある。
まず、やはり驚愕のF1映像。ドライバー目線の、前面に広がるコース、接近してくるライバルのマシンを捉えた緊迫のシーン……。ドライブシミュレーターなんて比較にならないリアル感で、息つくひまがない。

レースシーンは、なんと、CGやVFXは使われていない。プロデューサーとして参加したF1界の王者ルイス・ハミルトンの「本物のレーシングカーを使おう」というアイデアで、実際のマシンを6台購入。撮影用に改造し、F1の全面協力により、世界各国のサーキットで、F1グランプリ開催中に撮られている。すべてが本物の迫力だ。
それだけではない。いままでにない臨場感を可能にしたのは、マシンに搭載された最大4台のカメラ。この映画、実はAppleの製作なのだが、カメラはiphoneのカメラ技術を応用した特注品だという。それを遠隔操作で動かして撮影しているのだ。

ソニーの華麗かつ挑発的な神テクニックをはじめ、ドライバー役のドライビング映像もすごくリアルだ。出演者たちは数カ月の厳しいトレーニングを積み、F1マシンを実際に操縦するなど、限界までリアルさを追求したそうだ。特に、ブラピは天才的といっていいスキルを発揮、実際にグランプリ開催中に本物のサーキットを走ってみせたが、観客はまさか本人が運転しているとは気づかなかったという。

ほかにも出演者は、才能あふれるが自信過剰な若きレーサー、ジョシュア役にダムソン・イドリス、ピットクルーの女性リーダー、ケイトにケリー・コンドンと、魅力的な顔ぶれが並ぶ。
日本語吹き替えも、“ブラピ公認声優”の堀内賢雄、SixTONESの森本慎太郎ほか、大塚明夫、佐古真弓、森川智之、木村昴、本田貴子など豪華キャストが熱演するので、吹替版を観て映像だけに没入するのもいいかもしれない。
なにせAppleの映画だから、公開後ほどなく配信されると思うが、そこまで待てばいいや、なんてあまりにももったいなさすぎる。できればIMAXの大スクリーン、そうでなくても、サーキットの興奮を伝える音響の数々や音楽担当ジマーのスコア、エド・シーラン、BLACKPINKのロゼ、そしてあのQueenまで繰り出す音楽、それらを満喫できる“音のいい”映画館でぜひ。
最初から最後までどこをとっても興奮必至。全世代、老若男女、すべての人のアドレナリンを全開にさせる、傑作です。
文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】
渡辺祥子さん(映画評論家)
「……車の見せ方、レース・シーンの盛り上げ方のうまさは文句なし……」
中川右介さん(作家、編集者)
「……練りに練られた、無駄のないセリフによるドラマ部分も、見事。これがあるから、レースシーンも手に汗を握ってみることになる。」
春日太一さん(映画史・時代劇研究家)
「……まさに王道のハリウッド映画……」
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