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これは掘り出し物! NYの空港の『入国審査』を強烈な緊張感とリアル感で描いた、サスペンススリラー【おとなの映画ガイド】

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『入国審査』 (C)2022 ZABRISKIE FILMS SL, BASQUE FILM SERVICES SL, SYGNATIA SL, UPON ENTRY AIE

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アメリカに移住を決めたスペインのカップルが、ニューヨークの空港の入国審査で受けた驚愕の尋問と隔離を描く映画、『入国審査』が、8月1日(金)に日本公開される。ふたりが足止めされた理由は一体何なのか? 派手なセットもなく、低予算、上映時間77分という小品ながら、スリリングな緊張感にあふれ、しかも、政治の理不尽さをも突きつける濃厚な一作。2023年にサウス・バイ・サウスウエスト映画祭などで話題になったが、アメリカではまだ公開されていない。よくぞ見つけてきてくれた!の掘り出し物です。

『入国審査』

何度海外旅行をしても、空港の入国審査の列に並び、審査官の前に立つときは、なんだか緊張する……。旅行サイトの「落ち着いて、自信を持って回答することが重要です」といったノウハウを読んでみたり、英会話を丸暗記して臨んだりするのだけれど、不都合があったらどうしようとつい考えて、ドギマギしてしまう。そういうひと、結構いるんじゃないかと思う。

この映画の主人公、ディエゴとエレナは、移住のためにスペイン・バルセロナからアメリカにやってきた事実婚のカップル。エレナがアメリカ政府による永住権(グリーンカード)抽選プログラムに応募したところ、幸運にも当選し、新天地での生活を夢見て、万全の準備のうえ、ニューヨークの空港に降り立った。

観光旅行ではなく、移住なので、入国審査の緊張はひとしおだが、手続きに不備はないはず、書類もちゃんと用意している。あとは感じのいい審査官に当たればいいな、くらいに思って審査受付の列に並んだ。

運良く優しそうな審査官になって、Q&Aが始まる。ところが、これが、簡単にはいかない。指紋照合もかなり念入りで、写真と実物を何度も何度も見比べられたり、あげくは、「こちらへ」と別室に連れていかれ……。

ここから始まる恐怖の尋問。えっ!? なんでそんなことを聞かれなきゃならないの?といった内容まで根掘り葉掘り。審査官が何を問題にしているか、意図がよくわからず、ふたりは戸惑うばかりだ。トイレには行かせてくれるが、水も食べ物もとらせてくれない。もちろん、携帯は電源を切らされて使えない。密室の中、ときに別々に尋問され、彼らはプレッシャーで、どんどん追い込まれていくのだが、思わぬ事実が発覚して……。

監督はアレハンドロ・ロハスとフアン・セバスチャン・バスケス 。現在バルセロナで活動するふたりは、この作品が初の長編脚本・監督作品になる。撮影は、Netflixオリジナル『パラメディック - 闇の救急救命士-』など数々の作品で撮影監督を務めているバスケスのほうが担当した。

ふたりとも、ベネズエラ生まれ。ベネズエラといえば、南米大陸の北端に位置し、世界最大の滝がある美しい国。しかし、経済崩壊と治安悪化により、多くの国民が国外に避難して、人口は10年前の約3050万人から2650万人にまで減少しつつある。本作は、ロハス監督自身が、スペインに移住した時の実体験をもとに制作したもの。

ディエゴを演じたのはアルゼンチン出身のアルベルト・アンマン。エレナ役はバルセロナ生まれのブルーナ・クッシ。ふたりとも実績のあるスペインの俳優だ。審議官役の威圧的な女性を演じるのは、ドミニカ出身のアメリカで活躍する役者ローラ・ゴメス。もうひとりの審議官はニューヨーク出身、現在スペインで活躍するベン・テンプル。と、役にぴったりのバックボーンを持つ俳優を選んでいる。

ストーリーは、トランプ大統領1期目の時代に起こったこと、という設定で作られた。移民への風当たりや、審査官の威圧的な行動は、その時期の政府の意向と無縁ではない。今年、2期目のトランプの移民政策は、報道で知るかぎり、さらに熾烈になっていて、この映画の内容がますます現実味を帯びてきた。そんな時期にスクリーンで公開されるとは、なんとも絶妙のタイミング。

鳴り物入りの大作でも、大ヒット作でもない。すさまじいアクションもない。しかも監督とキャストも日本ではほぼ無名。だがこんなに刺さる! よくぞこれを見つけてきたと思う。"目利き"の配給さんに拍手を送りたい気持ち。できたら大ヒットしてほしいですね。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】

池上彰さん(ジャーナリスト)
「……トランプ大統領が不法移民追放を主張して実行に移す一方で、新規にアメリカに入国しようとする人間に対しても厳しい態度を取っています。こんなアメリカだから、こんな状況もあるかもしれない……」

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笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……強盗も殺人も拳銃やナイフも出てこないが濃密な舞台劇のような脚本によって、こんなにも緊張感溢れる作品になるとは!……」

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植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)
「……他人事とは思えない緊迫の連続に、戦慄する。実に良く練られた展開が、独創的だ。……」

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