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©︎松竹

生誕120年
“はじめて”の人のための小津安二郎監督特集

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日本が世界に誇る映画監督のひとり、小津安二郎が生誕120年を迎えた。

『東京物語』『晩春』など数多くの名作を世に残し、現在も世界中のどこかの映画館のスクリーンで小津作品が上映され続けている。その一方で、「小津安二郎の名前は知っているけど、実際に作品は観たことがない」という人も多いのではないだろうか。

気軽に配信で小津作品が観賞できるようになったこのタイミングで“はじめて”の方に小津安二郎監督の魅力を紹介したい。

これを観ておけばハズさない! 代表作レビュー

©1953/2011 松竹株式会社

『東京物語』(1953)

名作の多い小津作品の中でも最も愛され、世界中に熱狂的なファンをもつ作品。尾道で暮らす年老いた両親が子どもたちに会うために上京するところから物語がはじまり、子どもたちとの交流、そして戦死した次男の妻・紀子とのドラマが描かれる。笠智衆と東山千栄子が両親を、紀子を原節子が演じるほか、香川京子、杉村春子、山村聡らが出演。日本はもちろん、海外での評価もきわめて高く、山田洋次監督の『東京家族』や侯孝賢監督の『珈琲時光』、ヴィム・ヴェンダース監督の『東京画』など本作にオマージュを捧げた作品も多い。映画ファンなら絶対に見逃すことのできない1作だ。

©1957/2017 松竹株式会社

『東京暮色』(1957)

父を裏切り、家を出た母を求める娘のドラマを描く小津安二郎にとって最後の白黒作品。有馬稲子が娘・明子を演じ、その父を笠智衆、姉を原節子が演じる。子を身籠った状態で、ある女性を「家を出ていった自分の母ではないか」と疑うようになる主人公は終始、笑顔がなく、描かれるドラマもシリアスなもの。しかし、激動のドラマをくぐり抜け、主人公の周囲の女性たちがそれぞれの日常に戻っていく展開にほのかな希望を感じる1作でもある。

©1952/2017 松竹株式会社

『お茶漬の味』(1952)

地方出身者で素朴な夫を名優・佐分利信が、裕福な家庭に育ち、夫の質素な暮らしに不満を募らせている妻を木暮実千代が演じた夫婦ドラマ。鶴田浩二、淡島千景、笠智衆ら脇も豪華な顔ぶれ。ある出来事がきっかけで夫婦のいさかいは次第に大きくなっていき、その関係は完全に壊れたかに思えるが、ある事件が夫婦の仲を再びとりもつことになる。タイトルにもなっている“お茶漬け”を食べながら夫婦が心のうちを語り合うシーンは絶品。劇中には1950年代初頭の日本の食生活や街の風景もふんだんに登場しており、こちらも見どころだ。

©1956/2017 松竹株式会社

『早春』(1956)

当時、東宝のスター俳優だった池部良と淡島千景を主演に迎え、『君の名は』で人気を博した岸惠子も出演した作品。戦後から復興しつつある東京・蒲田で暮らす共働きの夫婦は子を病で失ってから関係がうまくいっていない。そんなある日、夫の正二は遊び仲間のタイピストの女性と一夜を共にしてしまう。事態に気付いた妻・千代は家を飛び出し、さらには正二に転勤話がもちあがり……。夫婦の緊迫した状況や、意地の張り合いからさらに関係が悪くなっていく過程、そして夫婦が荒波を乗り越えて再出発するまでのドラマは現在の目で観ても考えさせられる部分が多い。

©1951/2016 松竹株式会社

『麥秋』(1951)

タイトルの“麥秋”とは麦の収穫する時期=夏の初めのこと。大手企業で働き、独身生活を楽しんでいる娘・紀子(原節子)と、そんな娘に早く結婚してほしいと願っている家族を中心に、それぞれの人間関係やドラマを描き出していく。大きな事件が起こるわけでもなく、なにげない日常が語られるが、それぞれの登場人物の描写が豊かで、ユーモラスな場面も次々に登場。2年後の『東京物語』では原節子の義父を演じることになる笠智衆は本作では紀子の兄を演じるほか、淡島千景、菅井一郎、東山千栄子、杉村春子らが出演する。何度も観ていくと1度目では気づかなかった紀子以外の家族の心情や、ちょっとした関係の変化に気づくことの多い作品で、配信などでじっくりと繰り返し観たい1作といえる。

©1949/2015松竹株式会社

『晩春』(1949)

その後、繰り返しタッグを組むことになる“小津安二郎監督、原節子”が初めてコンビを組んだ作品。早くに妻を亡くした大学教授の父と暮らす娘の紀子。娘は父を案じ、父を置いて嫁ごうとしないが、親戚はそんな父娘に気を揉んでいる。叔母が見合いをすすめるも渋る紀子を結婚させるため、父は娘のために“再婚の意志がある”と言い出す……。小津作品に繰り返し登場する“娘の結婚”をめぐる物語を最初に描いた作品で、映画後半に父と娘が京都に旅行に向かうシーンは、映画ファンの間でも人気の高い場面だ。海外での評価も高く、後に原節子が“紀子”を演じた本作、『麥秋』『東京物語』は多くの映画ファンから“紀子三部作”と呼ばれ、愛され続けている。

©1959/2013 松竹株式会社

『お早よう』(1959)

家族や夫婦を主人公にじっくりと楽しみたい作品の多い小津監督が、活発な子どもたちに振り回される大人を描いたコメディ色の強い作品。多摩川沿いの新興住宅地にはたくさんの子どもたちが暮らしている。ある日、小学生の実と勇は叱られたことがきっかけで学校の給食費のことを親に伝えることができず、先生が家庭を訪問するも、家を抜け出した兄弟は夜になっても戻ってこなくなり……。子役の演技の素晴らしさ、笠智衆、沢村貞子、東野英治郎ら名優たちの確かな演技が楽しめる作品で、スター俳優・佐田啓二が重要な役どころで出演しているのもポイントだ。

©1960/2013 松竹株式会社

『秋日和』(1960)

数多くの小津作品で“娘”を演じてきた原節子が初めて母親役を演じた作品。夫を亡くし七回忌を迎えた母と、そんな母をひとり残して結婚することをためらっている娘のアヤ子。周囲はアヤ子を嫁ぐ気にさせるためには、まず母親を再婚させることが先決と考えるが、このことがきっかけで母子の関係が複雑になり……。多くの小津作品では“娘の結婚と父”が描かれるが、本作では“娘の結婚と母”が題材になっている。娘のアヤ子を司葉子が演じるほか、佐分利信、岡田茉莉子らが出演。のちに『秋刀魚の味』でヒロインを演じる岩下志麻が本作では端役を務めている。

©1958/2013 松竹株式会社

『彼岸花』(1958)

小津監督初めてのカラー作品。大手企業の常務をしている父と、結婚の時期を迎えた三人の娘たち、そしてその相手の家族との間に起こる騒動を描いたホームドラマ。佐分利信が父を演じるほか、有馬稲子、久我美子、田中絹代、そして当時、大映のスター女優だった山本富士子が出演。女優陣の個性豊かな演技と、色鮮やかな映像が魅力的な作品だ。

©1962/2013 松竹株式会社

『秋刀魚の味』(1962)

小津安二郎監督が最後に手がけた作品。大手企業の重役の平山は妻に先立たれ、長女の路子、次男の和夫と暮らしている。平山は娘に結婚の話をもちかけるが、路子はとりあわない。やがて、平山は路子が密かに想いを寄せている相手がいることを知る。父を笠智衆、娘を岩下志麻が演じ、“娘の結婚と父”を再び描いているが、他作品とは異なるはつらつとした魅力や、父の孤独が浮かび上がる展開など新たな面も感じられる。2013年にはデジタル修復版がカンヌ国際映画祭で上映されるなど、時を超えて新たな観客を獲得し続けている。

※Blu-ray/DVDは
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