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ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 水先案内人による東京国際映画祭ガイド 「ワタシはコレが観たい!」

©2023 MASTER MIND LTD. ©2023 TOHO CO., LTD. ©Juda Khatia Psuturi ©2023「怪物の木こり」製作委員会 ©Films Boutique ©NEZHA BROS. PICTURES COMPANY LIMITED BEIJING MODERN SKY CULTURE DEVELOPMENT CO,LTD © BrandThinkCinema 2023 ©土田世紀/日本文芸社, Aniplex Inc. ©WOWOW/松竹

水先案内人による東京国際映画祭ガイド
「ワタシはコレが観たい!」

メジャー作品からアート作品まで世界各国の映画が集結する東京国際映画祭がいよいよ10月23日から開幕! 今年は世界各国から集まった映画人との交流の場も増え、多彩なプログラムが企画されている。

ぴあでは、映画ツウでもあるぴあ水先案内人の方々に注目する部門と作品をリサーチ。 14日には一般発売もスタートするが、映画祭でどれを観ようか迷っている方、ぜひ参考にしてみてください! 

今年のTIFF主要部門

コンペティション  作品一覧

世界各国から集まった長編映画(今年1月以降に完成した作品が対象)の中から厳正な審査を受けた15本の作品を上映。今年は114の国と地域から1,942本もの応募が! クロージングセレモニーでは各賞が決定する。

アジアの未来  作品一覧

今回で11年目を迎えるアジア・コンペティション部門。長編3本までのアジア(日本・中東を含む)の新鋭監督の作品が対象となる。今年は日本映画2本が入選し、入選10作品すべてが世界初上映となる。

ガラ・セレクション  作品一覧

今年の世界の国際映画祭で話題になった作品、巨匠監督の最新作、本国で大ヒットしたエンタメ作品など日本公開前の最新作をプレミア上映。邦画では北野武監督や三池崇史監督の最新作も!

ワールド・フォーカス  作品一覧

現在の世界の映画界の潮流を示す作品を上映。また、「ラテンビート映画祭」とのコラボによるスペインや中南米の秀作に加え、生誕100周年を迎えるフランコ・ゼフィレッリ特集、香港映画特集など多彩な特集上映も実施!

Nippon Cinema Now  作品一覧

この1年の日本映画を対象に、特に海外に紹介されるべき日本映画という観点で選考された作品を上映する。また、今年は様々なジャンルの映画で精力的に活躍する城定秀夫監督の特集上映も!

アニメーション部門  作品一覧

今年からコンセプトも新たに再スタート!「ビジョンの交差点」と題して海外での話題作も取り上げ、国内の最新作と合わせて9作品上映。またレトロスペクティブは海外映画祭で賞に輝いた監督の作品を3作品上映する。

日本映画クラシックス  作品一覧

今年、没後40年を迎える山本薩夫監督のデジタルリマスターされた2作品、及びサイレント映画の傑作として知られる『雄呂血』 のデジタルリマスター版を上映。

ユース  作品一覧

名前の通り、若者に映画の素晴らしさを体験してもらうための作品をお届け。「TIFFチルドレン」ではサイレント映画の名作をパフォーマンス付きで、「TIFFティーンズ映画教室」では中学生たちが制作した映画をスクリーン上映!

TIFFシリーズ  作品一覧

TV放映、インターネット配信等を目的に製作されたシリーズものを日本国内での公開に先駆けスクリーン上映。今年は小津安二郎生誕120年記念として『連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~』の上映も!

TIFFならではのこちらにも注目!

小津安二郎生誕120年記念企画”SHOULDERS OF GIANTS”  詳細

小津安二郎監督の生誕120年、没後60年にあたる今年は、新たにデジタル修復した多くの作品を初公開するほか、国立映画アーカイブでの小津安二郎監督週間(10月24日~29日)での上映と合わせて、ほぼ全作に近い35本が上映される。

黒澤明の愛した映画 詳細

昨年14 年ぶりに復活した黒澤明賞に伴い、世界のクロサワが愛した名作が甦る! 『街の灯』『大人は判ってくれない 4Kデジタルリマスター版』など名作5作品がスクリーン上映されるこの機会を見逃すな!

映画ツウが注目する今年のみどころは!?
水先案内人による東京国際映画祭ガイド

相田冬二(Bleu et Rose/映画批評家)

ワールド・フォーカス『湖の紛れもなき事実』 ©Films Boutique

注目の部門

ワールド・フォーカス

もはや、この部門をひとつの映画祭として独立させてもいいほどの百花繚乱、豊潤・充実の極み。ラヴ・ディアスからフレデリック・ワイズマンまでを取り揃えた巨匠博覧会もさることながら、特にアジアの新鋭、気鋭の注目作がズラリと居並び、東京国際映画祭はこの部門に専念する、という観客が現れてもおかしくないほどの風格と威容に到達している。プログラムディレクター最新の矜持を体感する感動。

コンペティション『西湖畔に生きる』©Hangzhou Enlightenment Films Co., Ltd.
©2021 GENSAN PUNCH Production Committee

ワタシはコレが観たい!

『西湖畔に生きる』(コンペティション)
『湖の紛れもなき事実』(ワールド・フォーカス)
『左手に気をつけろ』(Nippon Cinema Now)

ビー・ガン、そして『宇宙探索編集部』のコン・ダーシャン。いま、中国が最も先鋭的な作家を生み出しているかもしれない。中でも、ワールドワイドに通用するスケールの大きな存在は、グー・シャオガンに他ならない。偉大なる前作をどう引き継ぎ、いかに発展させているのか。活劇でも、歴史でも、文芸でもない。ただただ人間が生きているという現象をエモーショナルに昇華する視点に期待が高まる。

ラヴ・ディアスの作品はもはや映画祭で観ておかなければ、もう二度と巡り逢えないかもしれないので、心してスケジュールをキープせねばなるまい。前作に連なる犯罪ハードボイルドの系譜、そして、グー・シャオガンとも繋がる【湖】のモチーフ! 映画という湖水に溺れる愉悦を、これでもかというほど堪能したい。

井口奈己は今、かつてないほど自由に、伸びやかに、作品づくりを愉しんでいるのではないか。何にも縛られないクリエーションが、どのような奇蹟を巻き起こしているのか。映画祭ならではのワクワク感と共に、天才監督の鮮やかな帰還を歓びたい。

伊藤さとり(映画パーソナリティ・評論・心理カウンセラー)

『年少日記』(ワールド・フォーカス) ALL RIGHTS RESERVED © 2023 ROUNDTABLE PICTURES LIMITED

注目の部門

ワールド・フォーカス

世界各国の映画祭に認められたワールドワイドな作品群を堪能できる。しかも日本で劇場公開しない作品も多いので、本部門で後に頭角を表す監督や俳優の出演作品を観ておくことが出来るだろう。それだけでなく、その国が抱える問題や監督が描く題材から本人の興味、主張、社会問題が見えてくることで、世界を知るきっかけを与えてくれる作品群だからだ。世界の映画は、社会的弱者に注目していることが今回のラインナップでもわかる。

『マリア』(アジアの未来)

ワタシはコレが観たい!

『西湖畔に生きる』(コンペティション)
『マリア』(アジアの未来)
『年少日記』(ワールド・フォーカス)

『春江水暖〜しゅんこうすいだん』(2019)では驚異のカメラワークで、俳優達の自然な演技と場所が持つ魅力こそが映画の力を最大限に活かすことを証明した新鋭監督グー・シャオガンの最新作『西湖畔に生きる』(コンペ)は必ずや観に行く。きっと美しい茶畑の中で急速に進む経済の流れに戸惑い、生きる姿を主人公や彼が関わる人々との関係とともに、しっかり見せてくれるはずだ。

その他、個人的にはイランのジャファル・パナヒ監督作品や、アリ・アッバシ監督がイランを舞台にした『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2022)を観ても、国家権力から女性差別や規制が生まれていることもあり、映画自体にもメッセージ性が強く表れているので、『マリア』(アジアの未来)は非常に気になっている。しかも題材が、ネットがきっかけによる女優失踪というミステリーならば、昨今のネットという顔の見えない空間が生み出す問題点に切り込んでいるのではないか。

そしてあらすじを読む限り、「子供の自殺」を題材に中学校教師が自身の過去を思い出す『年少日記』(ワールド・フォーカス)は、年々、低年齢化が進む「いじめ」や「不登校」に繋がる教育の在り方を問う作品なのではと期待している。

イソガイマサト(フリーライター)

『わたくしどもは。』(コンペティション)©TETSUYA to MINA film

注目の部門

コンペティション

「コンペティション」は今年もいちばん注目してしまう部門。新たなる才能の意欲作が、世界中から東京に集結するのだから、こんなに刺激的なことはない。そこで岸善幸監督(『あゝ荒野』)の『正欲』やすでに国際的に高い評価を得ている富名哲也監督の『わたくしどもは。』、教員でもある小辻陽平監督の『曖昧な楽園』は賞を勝ち取ることができるのか? 審査委員長のヴィム・ヴェンダース監督が何を選出するのか? 興味は尽きない。

『マリア』(アジアの未来)

ワタシはコレが観たい!

『マリア』(アジアの未来)
『メニュー・プレジール~レ・トロワグロ(原題)』(ワールド・フォーカス)
『トニー・レオン マスタークラス/2046』(ワールド・フォーカス)

「アジアの未来」は、アジアの新しい才能にスポットを当てた「コンペティション」と並ぶ注目の部門だが、中でも、ここにラインナップされたイランの新鋭メヘディ・アスガリ・アズガディのデビュー作『マリア』はかなり気になる。現代の暗部を切り取るサスペンスフルな設定だけでもワクワクするが、それを描く28歳の未知なる才能とセンスに出会えるのが楽しみだ。

「ワールド・フォーカス」部門で上映される、フレデリック・ワイズマン監督の『メニュー・プレジール~ルーレ・トロワグロ(原題)』も見逃せない1本。刑務所、動物園、病院、図書館といった組織の構造に切り込むことで定評のあるドキュメンタリーの巨匠が映し出す、伝説のフランス三つ星レストランの驚愕の秘密っていったい何? 観ずにはいられない!

「ワールド・フォーカス」部門からもう1本。個人的にいちばん観たいのが、『恋する惑星』『ブエノスアイレス』『花様年華』などのウォン・カーウァイ監督とトニー・レオンが再びタッグを組んだ『トニー・レオン マスタークラス/2046』だ。90年代に世界中の映画ファンの胸をときめかせたふたりが、どんな過去と現在を見せてくれるのか? 観る前から目頭が熱くなってくる。

水上賢治(映画ライター)

ファイト・ヘルマー監督『ゴンドラ』(コンペティション) 

注目の部門

コンペティション

映画祭の「顔」となる部門だけにやはり注目したい。あくまでざっと見渡してパッと思いついた相関図に過ぎないが、『ツバル TUVALU 』などで知られるファイト・ヘルマーのように独自の作風をもつ監督から、本映画祭にゆかりのある監督、そこに世界が注視する新人監督も加わって、非常に個性的なラインナップになった印象を抱く。各監督がどんな新たな作品世界を見せてくれるのか期待だ。

『雪豹』(コンペティション)

ワタシはコレが観たい!

『西湖畔に生きる』(コンペティション)
『タタミ』(コンペティション)
『雪豹』(コンペティション)

『西湖畔に生きる』は、驚異のデビュー作といっていいだろう『春江水暖~しゅんこうすいだん』の中国の新鋭、グー・シャオガン監督の新作。あの巧みなカメラワークとロングショットで世界を驚かせた彼が、デビュー作以上に難しいとされる第2作でどんな進化と深化を遂げているのか注視したい。

『タタミ』は、カンヌ映画祭女優賞を受賞した『聖地には蜘蛛が巣を張る』での好演が記憶に新しいパリ在住のイラン人女優、ザル・アミールが共同監督を務める。イラン社会に言及した作品に携わり続ける彼女が、自ら出演もした監督作でどんな物語を作り上げたのか注目だ。

『雪豹』は、今年の5月に訃報が伝えられたチベット人監督、ペマ・ツェテンの最後の作品のひとつになるとのこと。日本では東京フィルメックスの常連監督としても知られたが、50代半ばという若くしての死去は残念でならない。チベット映画の先駆者としてチベットのさまざまな側面を描いてきた彼が遺した新たな作品との出合いに期待する。

のむみち(名画座かんぺ発行人)

『大人の見る繪本 生れてはみたけれど 4Kデジタル修復版』 ©1932/2023松竹株式会社

注目の部門

小津安二郎生誕120年記念企画”SHOULDERS OF GIANTS”

小津安二郎の生誕120年である今年、横浜の近代文学館では「小津安二郎展」が。さらにカンヌでの『長屋紳士録』と『宗方姉妹』の4Kデジタル修復版プレミア上映も記憶に新しい。そんな小津のメモリアルイヤー、大トリの一大イベントが本部門です! 国立映画アーカイブにて共催の「小津安二郎監督週間」を併せると、上映作品数は35本に上ります。なお、『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』の4Kデジタル修復版は世界初上映!

『長屋紳士録 4Kデジタル修復版』©1947/2023松竹株式会社

ワタシはコレが観たい!

『長屋紳士録(4Kデジタル修復版)』(小津安二郎生誕120年記念企画)
『小早川家の秋(4Kデジタルリマスター版)』(小津安二郎生誕120年記念企画)
『浮草(4Kデジタル修復版)』(小津安二郎生誕120年記念企画)

自他共に認める飯田蝶子ファンとしては、蝶子の代表作のひとつである『長屋紳士録』は観に行かざるを得ない。本作は、今年5月のカンヌ国際映画祭がプレミア上映だったもので、カンヌのスクリーンに映った、全観客を魅了したであろう蝶子のしかめっ面を思うと痛快至極。4Kで大層美しく甦っているに違いない蝶子のしかめっ面を堪能したい。そしてもちろん、みんな大好き笠智衆の「のぞきからくり」のシーンも。

他2本は、あえて小津が松竹の外で撮った作品を。両作品共、中村鴈治郎主演で、特に『小早川家の秋』での飄々とした造り酒屋の当主役は面目躍如。また、長女役の新珠三千代の演技がとにかく素晴らしく、思わず唸ってしまう。小津が撮影中、上機嫌だった(出演者のひとり、宝田明さん談)というのも頷ける。

『浮草』は、飯田蝶子ファンの私からすればオリジナル作品である『浮草物語』の方を推すべきであろうが、とはいえ、自分は京マチ子も大好きで、京マチ子が小津作品に出ていることがとても嬉しい、そんな一本。本作で忘れられないシーンは、京マチ子と中村鴈治郎が対峙する雨のシーン。このワンシーンを4Kで観られるだけでも足を運ぶ価値があると信じています!

村山 章(映画ライター)

『浮草 4Kデジタル修復版』(小津安二郎生誕120年記念企画 “SHOULDERS OF GIANTS”) ©KADOKAWA1959

注目の部門

小津安二郎生誕120年記念企画 “SHOULDERS OF GIANTS”

日本映画の巨匠といえば黒澤と小津、と言われた時代が長かったが、正直、権威的な暑苦しさはあったし、いまとなっては「それはどちらさま?」となる世代が増えていて当然。しかしやっぱり小津はすごい映画、そして面白い映画をわんさか撮っていて、4K修復版で観まくれる機会を逃す手はない。個人的には大好きな『浮草』『麥秋』はぜひスクリーンで観たいし、初期のサイレントギャング映画にトランペットの生演奏付きとか超楽しそうでしょ。

『魔術』(ワールド・フォーカス/第20回ラテンビート映画祭 IN TIFF) ©Fabula

ワタシはコレが観たい!

『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』(ワールド・フォーカス)
『お早よう デジタル修復版』(小津安二郎生誕120年記念シンポジウム “SHOULDERS OF GIANTS”)
『魔術』(ワールド・フォーカス)

『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』は、アルモドバルの新作なんだから、映画祭で観なくとも一般公開されるだろうと思っていたら、これ短編なんですね。イーサン・ホークとペドロ・パスカル主演の、アルモドバル初の西部劇。そりゃあ気になる。

「小津安二郎生誕120年記念シンポジウム “SHOULDERS OF GIANTS”」は『お早よう』のデジタル修復版が観られることよりも、シンポジウムの参加者が豪華すぎる。ケリー・ライカートなんてまだ新作が2本も日本で公開されてないってのに、小津について喋るためだけに来日する模様。ちゃんと監督作も上映してほしいが、ライカート、黒沢清、ジャ・ジャンクーが語る小津話はぜひ聞いてみたい。

チリ映画の『魔術』は、親を殺された13歳の女の子が、仇の子供を呪術で犬に変えるお話だそうで、自分たちの常識からかけ離れた価値観と文化の映画が観たい欲を満たしてくれそうで期待大。

よしひろまさみち(オネエ系映画ライター)

『成功補習班』(ワールド・フォーカス/台湾電影ルネッサンス2023)©2023 Drama Draft Dragon Film Production Co., Ltd.

注目の部門

ワールド・フォーカス

さまざまな部門のなかでも、この部門が今年は一番華があり、多様なのでは? と思っているのがワールド・フォーカス。世界各地の良作にスポットを当てたごった煮部門ではあるものの、今年は連帯しているイベントが多いのが特徴。たとえば常連特集の「ラテンビート映画祭 IN TIFF」や、サン・セバスチャン映画祭が協力した「バスク映画特集」などなど。おまけにアジアン・シネラマのマスタークラスにはトニー・レオンが! もっともカラフルなプログラムを楽しめる。

『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』(ワールド・フォーカス/第20回ラテンビート映画祭 IN TIFF 20th Latin Beat Film Festival in TIFF) © El Deseo. Photo by Iglesias Más. Courtesy of Sony Pictures Classics.

ワタシはコレが観たい!

『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』(ワールド・フォーカス)
『ディープ・ブレス 女性映画監督たち』(ワールド・フォーカス)
『成功補習班』(ワールド・フォーカス)

映画祭の目玉のひとつでもあるトニー・レオンのマスタークラスはおそらくチケット瞬殺でしょうから、ワールド・フォーカス部門での他の作品をピックアップ。「第20回ラテンビート映画祭 IN TIFF」での最注目はペドロ・アルモドバル監督による短編『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』! 今年のカンヌ国際映画祭でお披露目され、アルモドバル版『ブロークバック・マウンテン』と大絶賛を浴びた小品だ。短編だけに一般興行には難しく、日本での公開を諦めていただけに、超絶楽しみ。

また、ラテン映画とバスク映画を分けたのもいい判断。バスク語圏はざっくりスペインと一緒にされることが多いが、じつは全く別の文化を育む特別な場所。スペイン内での文化の多様さを学ぶチャンスでもある。『ディープ・ブレス 女性映画監督たち』をはじめとする4作は全て女性監督によるものというのも興味深い。

そして、台北駐日経済文化代表処台湾文化センター共催の「台湾電影ルネッサンス2023」は、新鋭が続々と注目作を発表している台湾映画の今を表す特集。なかでも台湾以外では初上映となる90年代を舞台にした青春映画『成功補習班』は、当時のゲイコミュニティを映し出した注目作でもある。

坂口英明(ぴあ編集部)

『連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~』(TIFFシリーズ) ©WOWOW/松竹

注目の部門

TIFFシリーズ

TV放送、インターネット配信を目的に製作されたシリーズものの秀作を国内公開に先駆けてスクリーン上映する企画。この映画祭で注目されている小津安二郎監督のサイレント作品群を原作にしたWOWOWで放送予定の『連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~』から3話分を先行上映する。「第1話 出来ごころ」を監督したのが、「監督特集」に選ばれた城定秀夫というのも、いかにも今年の映画祭にふさわしい。

『異人たち』(ガラ・セレクション) ©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ワタシはコレが観たい!

『エア』(コンペティション)
『異人たち』(ガラ・セレクション)
『ムービー・エンペラー』(ガラ・セレクション)

第二次世界大戦中、独ソ戦を戦った女性パイロットたちの物語『エア』。同じ独ソ戦をテーマにした逢坂冬馬のベストセラー小説『同志少女よ、敵を撃て』のような、ソ連の女性兵士像を描いているのでは、と注目している。ロシア映画。監督はブレジネフ時代の作家を主人公にした『ドヴラートフ レニングラードの作家たち』のアレクセイ・ゲルマン・ジュニア。

大林宣彦監督作品にもなった山田太一の小説『異人たちとの夏』をイギリスで映画化した『異人たち』。監督は『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ。現代のロンドンが舞台だそうだが、どんな映像になるのか。ホラーなのか? ファンタジーか? すき焼きは出てこないよな?

アンディ・ラウが、イメージチェンジのために風変わりなインディーズ作品に挑戦する映画スターを演じる風刺コメディ『ムービー・エンペラー』。セルフ・パロディなのだろうか。監督が『クレイジー・ストーン 翡翠狂騒曲』のニン・ハオというのは期待が膨らむ。

平辻 哲也(映画ジャーナリスト)

『非常線の女 4Kデジタル修復版<生演奏付き上映>』(小津安二郎生誕120年記念企画 “SHOULDERS OF GIANTS”) ©1933/2022松竹株式会社

注目の部門

小津安二郎生誕120年記念企画 “SHOULDERS OF GIANTS”

映画祭の魅力は、新たな発見だと書いてきたが、旧作を観るのも再発見になる。なにしろ、コロナ禍で名画座も減ってしまった。繰り返し特集上映されている小津安二郎を観る機会も少なくなった。『非常線の女 4Kデジタル修復版』は小津作品としては異色の和製ギャング映画。1933年公開のサイレント映画が生演奏付きで上映されるのは映画祭以外ではなかなかないだろう。

『違う惑星の変な恋人』(アジアの未来)  ©「違う惑星の変な恋人」製作委員会

ワタシはコレが観たい!

『違う惑星の変な恋人』(アジアの未来)
『ネクスト・ゴール・ウィンズ』(ガラ・セレクション)
『地球星人(エイリアン)は空想する』(「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」受賞作品上映)

ずっと追いかけているのは邦画とサッカーなので、まずはアジアの未来部門『違う惑星の変な恋人』に期待したい。W杯の裏で繰り広げられる恋愛群像劇だそう。製作は『アルプススタンドのはしの方』も手掛けたSPOTTED PRODUCTIONS。サッカーをネタにどんなドラマを見せてくれるか。出演者もネクストブレーク必至の若手もいそうだ。

同じくサッカーものでは、ディズニー製作『ネクスト・ゴール・ウィンズ』もある。W杯予選史上最悪の0−31の大敗を喫したサモアチームの実話をベースにしたスポーツコメディ。これは絶対面白いに決まっている。

最後の1本は既に観た作品の中からオススメの1本を。『地球星人(エイリアン)は空想する』はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023で、SKIPシティアワードと国内コンペティション長編部門優秀作品賞をW受賞した。「UFOのまち」石川県羽咋市で起きた「大学生エイリアンアブダクション」(要は誘拐事件)をきっかけに、物語が予想もつかない展開を遂げる。スタッフはほんの数人で撮り上げたそうだが、そんなことを感じさせない力作。美術セットも凝っている。

開催概要

第36回東京国際映画祭

期間:2023年10月23日(月)~11月1日(日)

会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区

※映画祭公式サイトにて、メルマガ会員向け抽選販売、先行抽選販売に続いて、10/14(土)に一般販売を部門別で開始。詳細はこちら

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