巨大ライブ会場は前代未聞の“罠”だった。驚愕のサスペンス『トラップ』が登場
M・ナイト・シャマラン監督の最新作『トラップ』が10月25日(金)から公開になる。本作は、ライブ開催中の巨大アリーナを舞台に“騙し合いサスペンス”を描く注目作で、シャマラン監督の集大成的な側面と、彼の新境地が混ざり合う映画ファン必見の1作になっている。
第1回
娘想いの優しい父は“最凶の切り裂き魔”だった。
本作の主人公は、娘を愛する父クーパー。彼は娘ライリーが大ファンの世界的アーティスト、レディ・レイヴンのアリーナ公演のチケットを手に入れ、娘と会場に向かう。
会場には大勢のファンが集まり、すでに熱気が高まっている状態。売店やオフィシャルグッズのエリアにはファンが行列を作り、ロビーや客席で待機中のファンのテンションも上昇中。大規模な公演だけに会場には係員や警備員が多数配置され、開演の瞬間に向けて観客を誘導している。
ライブが始まり、ステージにレディ・レイヴンが登場。アリーナが大歓声に包まれる中、娘のためにひとりグッズ売り場に向かったクーパーは、このライブが指名手配中の切り裂き魔を捕えるための罠=トラップだと知る。ここに集まった約2万人の観客の中に“切り裂き魔”が確実におり、会場内だけでなく、外のエリアも警官がギッシリと待機中。罠にかかった犯人が逃げる道はひとつも残されていないという。
問題は、この話を「ここだけの秘密」と耳にした優しい笑顔の父クーパーが、世間を恐怖に陥れている“切り裂き魔”だったこと。
クーパーは知らず知らずのうちに罠の真ん中に放り込まれていたのだ。娘は現在もライブに夢中で、会場のすべての場所には警官、警備員が待ち構えている。クーパーはこの罠を突破できるのか? 罠にかかった彼が仕掛けた誰も予想できない“トラップ”とは?
“どんでん返し”のシャマラン、集大成にして新機軸
本作の脚本と監督を手がけたM・ナイト・シャマランは、『シックス・センス』『サイン』『オールド」など数々のヒット作を生み出す映画界きってのストーリーテラーにして、毎作、観客を驚かせるサスペンスの名手だ。
彼の作品にはいくつかの特徴、魅力的なポイントがあるが、必ず出てくるキーワードが“どんでん返し”と”サプライズ”だ。それまでの物語の流れをすべてひっくり返すような展開が描かれたり、観客が予想もしなかった衝撃の真実が明らかになることが多く、「シャマランと言えばサプライズ」と思っている人も多いかもしれない。
最新作『トラップ』は、“どんでん返し”シャマランの集大成的な作品で、“優しい父と思っていたら、実は切り裂き魔だった”という、通常のシャマラン映画ならクライマックスに出てきそうなサプライズが映画の冒頭で描かれてしまう。予告編にも堂々と登場する。え? いつものシャマラン節が冒頭から? ということは……本作ではそれを上回る驚きが後半に待っていることになる。これまでの驚きは本作では“序の口”というわけだ。
さらに本作では彼の新機軸も楽しむことができる。詳しくは観てのお楽しみだが、シャマランはこれまで、サプライズにいたるまでに、じっくりとキャラクターの内面やその生い立ちを描くことに力を注いできたのを思い出してほしい。『アンブレイカブル』『スプリット』『ミスター・ガラス』の3部作が驚きとサプライズに満ちた話であるのと同時に、“特殊な力を持ってしまった人間の孤独と苦悩”を描いたシリアスなドラマであったことを。シャマランマジックの半分は驚きでできているが、もう半分はキャラクター描写、中でも生い立ちや来歴に起因する苦悩やアイデンティティの問題が中心に据えられていることが多い。
本作は、“みんなの大好きなシャマラン映画”と、“まだ誰も知らないシャマラン映画”が同時に楽しめる必見の1作だ。
主人公を取り囲むトラップ=罠。絶対予測不可能な結末とは?
これまで数々の映画で絶体絶命の危機、脱出不可能な状況が描かれてきたが、本作『トラップ』で描かれる状況は、その中でもトップクラスのピンチではないだろうか。
クーパーが現在いるライブ会場は、アリーナ席、スタンド席と階層状にはなっているものの、通路はすべて見通しがよく、隠れる場所などない。観客が入ることができるエリアは限られており、関係者がいる場所にはすべてIDパスによるロックがかけられている。隠れ場所ナシ、逃げ場ナシ。さらには無数の監視カメラ。クーパーの行動は筒抜けだ。
さらにクーパーは娘とライブに来ており、単独で逃げることができない。ライブは進行中で、父の正体を知らない娘のライリーはステージに夢中だ。ライブ中に彼女を連れて客席を出ることはできないと考えていいだろう。ライブの休憩時間ともなれば約2万人の観客がロビーに出ることになるが、すべての出入り口には警官と警備員が立っていて、どうやら警察は正体不明の“切り裂き魔”の行動パターンを分析し始めているようだ。
つまりクーパーは「娘に正体がバレてはならない」「自分ひとりで逃げることができない」「ライブが終わるまで娘は自席から絶対に動くことはない」という条件下で、罠をかいくぐり、脱出の道を探ることになる。そんなことが可能なのか?
シャマランはこの“どう考えても解決が思いつかない”状況に、アッと驚く結末を用意している。詳しくは書けないが、主人公クーパーはただ逃げるだけでなく、仕掛けられた罠をすり抜けて、自ら罠を“仕掛ける”。それはクーパーが現在、背負っている悪条件(娘と一緒、ライブが進行中、娘はライブが終わるまでは席を立たない……)のすべてを“逆手にとった”作戦だ。
『トラップ』は追い詰められた主人公を描くサバイバルものではない、複雑な迷路を逃走していくダンジョンものでもない。本作はこれまでにない、シャマランですらもキャリアの中で描いてこなかった新種の“騙し合いサスペンス”だ。
この結末は絶対に予測不可能。観客はクーパーの行動を共に見守りながら、彼のとる謎の行動と、その真意に何度も声をあげることになるだろう。
『トラップ』
10月25日(金)公開
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第1回