Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > なぜ私たちは、シャマラン映画に惹かれるのか?

なぜ私たちは、シャマラン映画に惹かれるのか?

PR

M・ナイト・シャマランが脚本と監督を手がける映画『トラップ』が10月25日(金)から公開になる。シャマラン監督はこれまでにも多くのヒット作を世に送りだしており、本作にも大きな注目が集まっている。

シャマラン、驚きと躍進の四半世紀

『アンブレイカブル』のイベントでのシャマランとブルース・ウィリス、サミュエル・L・ジャクソン
Photo;AFLO

M・ナイト・シャマランは1970年生まれの映画監督。インドで生まれ、生後すぐにアメリカに移住し、幼少期から8ミリフィルムで映画づくりを始めた。数々の自主映画をつくり、22歳のときに長編映画デビュー。順風満帆のスタートではなかったが、長編3作目として手がけた映画が彼を一躍、スター監督の座に押し上げる。1999年製作の『シックス・センス』だ。

ブルース・ウィリス演じる精神科医が、死者が見える第六感=シックス・センスをもつ少年コール(ハーレイ・ジョエル・オスメント)に出会うところから始まるミステリーで、巧みな語り口、恐怖描写の魅力、キャラクター造形の面白さ、そして観客が思わず声をあげたラストのサプライズが絶賛を集め、映画は大ヒット。日本でも70億円を超える興行収入を記録し、その年のアカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞など5部門にノミネートされた。

シャマランは翌年に再びブルース・ウィリスをキャストに迎えて『アンブレイカブル』を発表。乗客が多数死亡する壮絶な列車事故に巻き込まれるも、なぜか傷ひとつ追わなかった主人公が、自身に眠る謎に迫るさまを描くサスペンスで、本作も大ヒット。

以降、彼は『サイン』『ヴィレッジ』『ハプニング』『ヴィジット』など次々と新作を発表。近年も作品の発表ペースは衰えることはなく、2021年には登場人物が急速に老いていく奇妙な時空間を描いた『オールド』を、2023年には世界の命運を託されてしまった一家を描いた『ノック 終末の訪問者』を発表した。

プロデューサーとしても活動しており、今年6月には娘イシャナ・ナイト・シャマランの監督作『ザ・ウォッチャーズ』で製作を務め、同じ年に監督最新作『トラップ』が公開。自作でも彼はプロデューサーを兼任している。

振り返れば、シャマランは約四半世紀に渡ってペースを落とすことなく活動を続けている。どの監督作も自ら脚本を手がけ、ほぼ2年に1作のタイミングで新作が届く。どんなに映画界が変化しても、映画館に通っていれば必ず出会う男、これだけ映画をつくっても“驚きのタネ”が尽きない男、それがM・ナイト・シャマランだ。

シャマラン映画=この映画にはある秘密があります

『シックス・センス』の演技で大ブレイクを果たしたハーレイ・ジョエル・オスメントとシャマラン
Photo;AFLO

『シックス・センス』の日本公開時、上映前に奇妙な画像がスクリーンに現れた。そこには

【お客さまへお願い】
この映画のストーリーには“ある秘密”があります。
これから映画をご覧になる皆さまは、その秘密を
まだご覧になっていない友だちやご家族に
決してお話にならないようお願いします。
ブルース・ウィリス

の文字が。冒頭でこのテロップが出た時点で「あ、劇中に何かある」と思ってしまうので逆効果だとも言えるし、なぜに監督ではなくブルース・ウィリスがそんなことを言い出したのかは今もって明かされない永遠の謎だが、ここからシャマラン映画=何か秘密がある、が定着した。

もちろん、それまでにもサプライズやドンデン返しのある映画は多く存在した。しかし、シャマランは毎回、手を変え、品を変えて毎作“違う手”で観客に驚きを仕掛けてくる。ホラー映画的なショック描写もある、決定的な瞬間が来るぞ、来るぞと盛り上げて緊張感を高めていく表現もある、さらには何げない場面だと思っていたシーンが実は壮大な伏線だったと明かされることもある。それぞれの描写はシンプルで、映画の王道だ。しかし、それらが組み合わさると“シャマラン色”になるのがポイントだ。

確かに奇策を使えば観客は驚くが、奇策だけに気が向いてしまって物語が置き去りにされたのでは元も子もない。シャマランは「映画としては正統」な描写だけで“飛び道具”を積んでいるように見せる名人だ。

その結果、シャマラン映画は結末まで観て、すべてがネタバラシされた後にあらためて観ると、ズルや飛躍がないことが分かる。すべては物語とキャラクターのために描写がある。しかし、初見は“何かある”と思ってしまう。そして驚かされる。

最新作『トラップ』もこの“シャマランマジック”を存分に楽しむことができるはずだ。

“驚き”だけじゃない! シャマラン映画の魅力

『トラップ』撮影中のシャマラン監督

意外だが、シャマラン監督はアクション、ホラーなどの“ジャンル映画”を目指して監督になった人物ではない。

日本では劇場未公開の監督第2作目『翼のない天使』は、愛する祖父が天国にたどり着いたかどうか確かめるために奮闘する少年の物語。『サイン』は愛する妻を失って牧師を辞めた男が周囲で起こる異変に立ち向かう姿を描く。

シャマラン映画は設定が面白く、ユニークな展開に思わずワクワクしてしまうが、多くの作品で喪失を抱えた主人公のドラマが描かれている。シャマラン映画の登場人物は冒頭から大事なものを失っているか、劇中で何かを喪失する。家族を失っている場合もあるし、自分が社会やこの世界から“はじき飛ばされてしまった”感覚を抱えている場合もある。

どんな映画も主人公は何かしらの問題や欠損を抱えているが、シャマラン映画ではその空洞がサプライズやサスペンスを凌駕して、急にじっくりと描かれることがある。まるで監督が「みなさん、驚いている場合ではありません。この人物の内面の方が謎だと思いませんか?」と語りかけるように。

シャマラン映画は、謎と驚きの奥に、それを上回る謎を秘めたキャラクターの内面が描かれている。

新作『トラップ』は、ライブ開催中の巨大アリーナにやってきた切り裂き魔の主人公クーパーが、ライブ会場という罠=トラップから抜け出そうとする物語が描かれるが、劇中では主人公の来歴が物語を語る上で重要な役割を果たしている。なぜ、彼は恐ろしい殺人者になったのか? なぜ彼は惨殺を繰り返す一方で、娘を愛する心優しい父親でいられるのか?

主人公クーパーの内面を超える謎はない。本作は“驚き/サプライズ”の側面でも、“謎に満ちた人間描写”の側面でも、シャマラン映画の集大成的な1作になっている。

『トラップ』
10月25日(金)公開
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/trap/

(C)2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED