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名作映画から舞台版、そしてミュージカル映画へ。色褪せることのない『カラーパープル』の歴史

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スティーブン・スピルバーグが製作を務めるミュージカル映画『カラーパープル』が2月9日(金) から公開になる。本作は小説を基に映画化、舞台化されてきた傑作で、長年にわたって多く人から熱烈な支持を集めてきた。本作の製作を務めるオプラ・ウィンフリーはこう宣言する。「この小説は、女性の地位向上を目指すナショナル・アンセム(国歌)のひとつです」

アメリカ文学史に残る名作小説

アフリカ系アメリカ人作家アリス・ウォーカーは米国の文学史を語る上で欠かすことのできない人物のひとりだ。彼女の創作は小説だけでなくエッセイや詩など多岐に渡っており、その多くの作品でアフリカ系アメリカ人が体験したことや目撃したもの、そこで感じた想い、考え、決意が題材になっている。

また彼女はフェミニストの論客として知られており、社会における女性の立場について語るだけでなく、歴史の中に埋もれてしまった、あるいは無視されてきた才能ある女性についての記事も執筆し、反響を呼んだ。

そんな彼女の代表作のひとつが1983年に発表された小説『カラーパープル』だ。

主人公は若い女性セリー。彼女は名前も知らない男性のもとに嫁がされ、夫の暴力に耐えながら過酷な日々をおくることになる。さらに愛する妹は夫に追い出され、絶望の中、アフリカに渡る。セリーは絶望や葛藤に苦しみながら、差別や暴力の渦の中で自ら自由を勝ち取ろうとする。

「神さま、あたしは十四歳です(DEAR GOD, I am fourteen years old.)」という書き出しから始まるこの物語は、ひとりの視点から黒人の問題だけでなく社会における暴力、家庭内での女性の立場、若い女性の成長と葛藤、神の問題までを徹底的に描き出していく。

ここに書かれた物語はウォーカーの創作だけではない。本当に苦しい想いや体験をしてきた女性たちの声や想いを物語としてすくい上げていく(小説の結末でウォーカーは自身を“作者および霊媒の役割を果たした”と記している)手腕は、圧倒的な支持を集めた。本書はピューリッツァー賞のフィクション部門を受賞。同賞はアメリカ南部の社会を描き続けてきたウィリアム・フォークナーや、アラバマ州で黒人青年の事件を担当する弁護士の姿を描いたハーパー・リーの『アラバマ物語』、19世紀のアメリカを舞台に奴隷になった少女が自由を求めて逃亡する姿を描いたコルソン・ホワイトヘッドの『地下鉄道』も受賞しており、小説『カラーパープル』もアメリカ文学史に残る名作として現在も読み継がれている。

スティーブン・スピルバーグ監督が実写化

小説は批評だけでなく商業的な成功もおさめ、すぐさま映画化が持ち上がった。マイケル・ジャクソンのプロデュースでも知られる音楽家クインシー・ジョーンズらが製作を、当時『ジョーズ』や『E.T.』を大ヒットさせ注目を集めていたスピルバーグが監督を務め、1985年に映画『カラーパープル』が公開。日本では翌年の9月に公開された。

映画の完成度は高く、第58回アカデミー賞で作品賞を含む10部門にノミネート(助演女優賞ではオプラ・ウィンフリーとマーガレット・エイヴリーが同時ノミネート)。受賞はなかったが、原作者のウォーカーが見出した主演女優のウーピー・ゴールドバーグはその後、スターの道を歩み出した。その他、本作に出演したオプラ・ウィンフリーは、後に俳優、トーク番組司会者として大成功。『リーサル・ウェポン』シリーズ、『プレデター2』のダニー・グローヴァー、『TINA ティナ』『マトリックス』のローレンス・フィッシュバーンらも出演している。

ウーピー・ゴールドバーグが主演した1985年のスピルバーグ版『カラーパープル』

スピルバーグ監督は公開時、娯楽大作を手がける監督のイメージが強かったが、本作に続いてJ・G・バラードの半自伝的小説を映画化した『太陽の帝国』、『ジョーと呼ばれた男』をリメイクした大人のラブストーリー『オールウェイズ』を発表。娯楽超大作と重厚な作品を時に交互に、時に並行して製作するスタイルが始まり、『ジュラシック・パーク』と『シンドラーのリスト』が同じ1993年に発表された。

通常であれば、小説の大ヒットから映画化の成功で終わるが、この物語はここで終わらない。時を超えて、多くの人に語り継がれていく。

彼女たちの魂が音楽に! ミュージカル版の誕生

本作が描くのは単にシリアスな物語ではない。観る者の心を鷲掴みにし、時に勇気づけ、時に前に進む力を与えてくれる物語だ。

本作で映画デビューを飾ったオプラ・ウィンフリーは、この物語に新たな命を吹き込むべく、ミュージカル『カラーパープル』のプロダクションに着手する。2004年からワークショップが始まり、2005年12月にブロードウェイで初演。2007年からは全国ツアー公演も行われ、2015年にはリバイバル公演も実施。アメリカだけでなくロンドン、南アフリカ、オランダ、カナダ、ブラジルなどでも公演されており、セリーを演じたラシャンゼはトニー賞ミュージカル主演女優賞を受賞。映画『ドリームガールズ』でアカデミー助演女優賞に輝いたジェニファー・ハドソンもキャストに名を連ねている。

この舞台版の物語、音楽、エネルギーに磨きをかけ、スクリーンに描き出すのが、間もなく公開になる2023年製作の映画『カラーパープル』だ。本作ではウィンフリー、スピルバーグ、そしてクインシー・ジョーンズらが製作陣として名を連ね、新鋭ブリッツ・バザウーレが監督を務める。

2023年版『カラーパープル』に製作総指揮として名を連ねるオプラ・ウィンフリーとスピルバーグ

この世界には繰り返し、映画化、リメイクされる物語がある。そこには時を超えて人々を魅了するドラマや、キャラクターがいる。『カラーパープル』にも、時代を経ても色褪せないドラマが宿っている。ウィンフリーが語るとおり、本作は観客の心にいつも宿っている“ナショナル・アンセム(国歌)”のようなパワーがあるのだ。

今年、映画館で再び多くの人の人生を変えた国家が鳴り響く。今回はミュージカル版だ。そのメロディと力強い歌声はさらに多くの人の心を捉え、その人生に影響を与えることになるだろう。

『カラーパープル』
2024年2月9日(金)公開
(C)2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
Photo:AFLO

『カラーパープル』日本語吹替音声追加収録版 <4K ULTRA HD & ブルーレイセット>(2枚組)

2024年1月24日(水)発売
7,480 円(税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

(c)1985 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.