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名作『カラーパープル』がミュージカルに! 心の奥底の想いが歌とメロディになって放たれる!

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映画『カラーパープル』が2月9日(金) から公開になる。本作はアリス・ウォーカーの小説が原作で、1985年にはスティーブン・スピルバーグ監督によって映画化もされたが、まもなく公開になる作品は、その後に繰り返し上演されたミュージカル版の映画化だ。なぜ、この物語は音楽と歌を必要としているのだろうか?

人気小説がミュージカルに

『カラーパープル』は、20世紀の初頭から中頃までの米ジョージア州を舞台に、ひとりの女性が自らの手で自由を掴み取るまでを描いた感動作だ。物語の冒頭で主人公のセリーは父から虐待を受け、望まぬ結婚をさせられ、愛する妹とも離ればなれになってしまう。しかし、彼女は暴力や理不尽な状況であっても反抗しない。やがて時は流れ、彼女はさまざまな出会いによって変化を遂げていく。苦境に立ち向かう強さはすでに“自分の中”に宿っている。誰かが変えてくれるのを待つのではなく、自分で変化するべきだと。

過酷な環境の中で自ら進むべき道を見出していく主人公、彼女が出会うさまざまな境遇の女性たち、当時のアメリカ社会、家庭での理不尽な状況、そして神の存在をあますところなく描いた小説は、圧倒的な支持を集めた。実写映画も高評価を獲得し、本作は時を超えて愛され続ける“クラシック”になったが、2005年に本作に新たな命が吹き込まれる。ミュージカル版の誕生だ。

プロジェクトは小さな規模から始まった。2004年からワークショップ公演として始まり、いくつかの町で上演され、ブラッシュアップを経て、2005年に世界初演された。ブレンダ・ラッセル、アリー・ウィリス、スティーブン・ブレイが書いたナンバーも好評で、ブロードウェイ公演は大成功。2008年まで上演され、2007年からは全国ツアー公演もスタート。2015年にはリバイバル公演も行われた。

多彩なミュージカル表現に感動!

ミュージカル『カラーパープル』の驚くべき点のひとつは、劇中のミュージカルシーンの多彩さだ。

舞台は二幕構成で上演されたが、映画版は舞台の要素を丁寧に再構成し、141分の作品に仕上がった。先ほど紹介したとおり、本作では苦境に置かれた主人公セリーが、さまざまな出来事を体験し、変化を遂げていく物語が描かれるが、その変化を反映するようにミュージカルシーンも鮮やかに変化していく。

バンジョーの伴奏とシンプルなリズムで歌われる「Huckleberry Pie」で幕を開け、ゴスペル調の音楽に乗せて一大ミュージカルシーンが展開する「Mysterious Ways」、名優タラジ・P・ヘンソンの圧巻の歌唱に注目の「Push Da Button」、そして主人公を演じるファンテイジア・バリーノの歌唱と演技が最高潮に達する「I'm Here」など名曲が次から次へと登場。ダンスやミュージカル演出もシーンによって趣向が凝らされており、1本の映画の中でここまでバリエーションがあるのかと驚くほど、多彩な演出と表現とメロディがスクリーンから溢れ出してくる。

これらのシーンを実現させるため、本作では演技、歌唱のどちらも最高レベルのキャストが集結した。

セリーを演じたファンテイジア・バリーノはR&Bシンガーで、ブロードウェイで公演されていたミュージカル『カラーパープル』でもセリーを演じている。劇中でセリーは最も変化を遂げるキャラクターだけに、歌唱でも求められる幅は広い。本作の彼女のパフォーマンスは高く評価されており、映画初主演にも関わらず第81回ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされた。

セリーを演じたファンテイジア・パリーノ

また、タラジ・P・ヘンソンがセリーを時に導き、時に寄り添う人気歌手シュグ役を熱演している。人々を魅了するカリスマ性と圧倒的な歌唱力、主人公の心の拠りどころになっていく包容力、そして自身が抱える家族との悩みを表現する繊細さ……そのすべてを見事に表現した本作は、彼女の新たな代表作のひとつになったと言えるだろう。

シュグを演じたタラジ・P・ヘンソン

その他、ブロードウェイでも同役を演じたダニエル・ブルックスがセリーの親友ソフィアを演じ、エミー賞俳優コールマン・ドミンゴ、グラミー歌手でもあるH.E.R.(ハー)、人気歌手のシアラ、『リトル・マーメイド』のハリー・ベイリーらが集結。

ソフィアを演じたダニエル・ブルックス

本作の世界観を熟知している、本作のメッセージに共鳴できる才能だけが慎重にキャスティングされ、最高のミュージカルシーンが実現したのだ。

キャラクターの“心の奥底”を音楽で表現

『リトル・マーメイド』ではアリエルを演じたハリー・ベイリー(右)

本作が成功をおさめた最大の要因は、主人公の心の変化と劇中のミュージカルナンバーが見事にマッチしていることだろう。

映画の冒頭、教会で華やかなミュージカルシーンが描かれるが、セリーは笑顔もなく、歌うことも踊ることもしない。彼女は自分の中にある感情を表に出せない、笑わない、言いたいことを言えない“声のない人間”として登場する。

そんな彼女が細い声で歌うのは、誰よりも信頼する妹といるときだ。快活で、どんな状況も“自分の気持ちの持ち方ひとつ”だと信じる妹の歌声に導かれるようにセリーは少しずつ笑顔を取り戻し、喜びや冒険心が小さな歌声になって表現される。

映画が始まってわずか数分。本作はミュージカルナンバーを見事に配置して主人公がどんな人物なのか、どんな心の状態なのか、誰といるときに心が安らぐのかをセリフを使わずに観客の心にダイレクトに伝えてしまう。ミュージカルシーンは単なる“盛り上げどころ”や“歌唱&ダンス”ではない。言葉では説明し尽くせない感情、人間関係、心の奥底に眠る想いが歌声になる、メロディになって放たれる。無理に言葉にするならば、本作の歌と踊りは“ソウル”の塊だ。

本作の物語を通じて、セリーはどんな歌を歌うのだろうか。“声のない人間”だった彼女がさまざまな出会いと試練をくぐり抜け、最後に何を、どんな声で歌うのだろう?

2024年公開の『カラーパープル』は原作小説や過去の映画版の魂を引き継ぎつつ、“ミュージカルだからできる/ミュージカルでしか描けない”表現で観客を圧倒する。

『カラーパープル』
2月9日(金)公開
(C)2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.