Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > “アメリカで最も有名な司会者”、その人生を変えた『カラーパープル』という物語

2月9日(金)公開『カラーパープル』のプロデューサーを務めたオプラ・ウィンフリー(左)とスティーブン・スピルバーグ

“アメリカで最も有名な司会者”、その人生を変えた『カラーパープル』という物語

PR

2月9日(金)から公開になる映画『カラーパープル』は、スティーブン・スピルバーグ監督が手がけた同名作をミュージカルとして新たに描く注目作だ。スピルバーグも製作として参加し、新鋭ブリッツ・バザウーレが監督を務めているが、本作を企画し、成立させた最大の功労者は間違いなくオプラ・ウィンフリーだろう。

アメリカで最も有名な司会者オプラ・ウィンフリー

ジョーダン・ピール監督の傑作『NOPE/ノープ』のクライマックス。空を飛行する“あるもの”と対峙した登場人物は、意を決した際にこうつぶやく。

「オプラが待っている」

この映画で繰り返し名前の挙がる“オプラ”とは、本作の製作を務めたオプラ・ウィンフリーのことだ。19歳のときにローカル番組の仕事を始めた彼女は、トーク番組の司会で人気を博すようになる。やがて、彼女が司会を務めるトーク番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』が全米で放送されるようになると、その人気は絶対的に。

軽快な語り口、臆することなく意見を表明する姿勢、市井の人々の暮らしに寄り添う目線などが好評で、番組中に文学について紹介したり、LGBTQなどの“声を奪われてきた人”たちの地位向上も目指してきた。番組は残念ながら2011年にひとまず終了したが、すぐさまケーブルテレビ局「オプラ・ウィンフリー・ネットワーク(OWN)」を開局。いまもアメリカで最も有名な司会者といえば彼女だろう。

オプラは俳優、映画製作者でもある。ディズニーアニメーション『プリンセスと魔法のキス』では主人公の母の声を演じ、フォレスト・ウィテカー主演作『大統領の執事の涙』では、主人公セシルの妻を演じた。また製作者としてもHarpo Filmsを率いて『グローリー/明日への行進』や配信ドラマ『ブラックケーキ』をプロデュース。彼女にとって物語を語ることも重要な活動のひとつになっている。

そんな彼女が俳優として初めて出演したのが、1985年製作の『カラーパープル』だ。

『カラーパープル』はオプラの人生を変えた

1985年版『カラーパープル』でソフィアを演じたオプラ・ウィンフリー

スティーブン・スピルバーグが監督し、1985年に製作された映画『カラーパープル』でオプラは、主人公セリーの親友ソフィアを演じた。圧倒的な男性優位な社会の中でセリーは日々、暴力や恐怖にさらされているが、ソフィアはどんなときも相手が誰であっても、自分を曲げない豪快な人物として描かれる。劇中ではそんな彼女にもさまざまなドラマが待っているが、ソフィアとセリーは試練を共にし、確かな友情を築いていく。

そんなソフィアを演じたオプラの演技は高評価を獲得し、アカデミー助演女優賞にノミネート。アメリカで最も有名な司会者は“俳優”としても実力があることを証明することになったが、それ以上に本作の存在は彼女のキャリアに決定的な影響を与えたという。

「あの映画に出演したことで、私のすべてが変わりました」とオプラは振り返る。「私は大好きな仕事をしていて、同じように情熱を持った人たちに囲まれていました。 毎日とても幸せでした。この小説は、女性の地位向上を目指すナショナル・アンセム(国歌)のひとつです」

単に演じた役や映画に恵まれただけでなく、そこに描かれるメッセージ、表現される登場人物たちの“心の声”に深く共振した彼女は、撮影を通じて「心の底から喜びを感じた」という。

その後、彼女は今回の映画のベースになったミュージカル公演のプロジェクトを開始。長年に渡って本作のドラマ、キャストたちと向き合い続けた。そして、これまでの経験や積み重なってきた想いと情熱を新たにスクリーンで描くときが来た。ミュージカル映画『カラーパープル』の製作を決意したのだ。

オプラが映画『カラーパープル』に込めた想い

オプラ・ウィンフリー(右)

本作でオプラは製作を担当。1985年版で監督を務めたスピルバーグや、クインシー・ジョーンズにも声をかけ、製作陣に迎えた。

彼女がこのタイミングで新たな映画製作に着手したのは、いくつか理由があるが、この物語がリバイバルやノスタルジーではなく“いまも生き続ける物語”だという確信がオプラにはある。

「この物語が長年、生きながらえている理由は、大切にされていないと感じたことのあるすべての女性や男性にとって、これこそが自己発見という素晴らしい体験を味わえる物語だからです。私たちが世界に向けて再びリリースすることで、この物語は引き続き生き残っていきます」

そのため、本作では脚本執筆、キャスト選び、撮影、音響のミックスにいたるまで、すべてが“現代を生きる観客”に向けて行われた。撮影はノスタルジックなルックを採用せず、舞台となるジョージアの自然や衣装を鮮明な色彩で描き出す。音響は最新の劇場設備を存分に活かしたミックスで、迫力があるだけでなく、観客の目の前でキャストが歌っているような“親密さ”を感じられる音に仕上がった。そして、原作小説に敬意を払いながら現代の観客の心に響く展開が新たに加えられた。

オプラをはじめとする本作の作り手たちが目指すのは、小説やかつての映画や舞台を映画化するのではなく、現代の観客に響く映画にすること。そのために音楽も表現もすべて最高のものにすることだった。

本作を観ると、非常に深刻な題材を扱っているのに、なぜかワクワクしたり、思わず笑ってしまったり、登場人物の感情の爆発や、歯に衣着せぬ姿勢に爽快な気持ちになったりするだろう。同時に、投げ出さずに問題に取り組む姿勢や、複雑な問題を単純化しない真摯な態度も感じることができるはずだ。そして、それらはすべて、オプラ・ウィンフリーのキャリアから受ける印象と重なる。

いま全世界で好評を集めている映画『カラーパープル』の奥底には、オプラ・ウィンフリーという人物の激烈な情熱と想いがしっかりと根づいているのだ。

『カラーパープル』
2月9日(金)公開
(C)2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
Photo:AFLO