なぜ『グラディエーター』シリーズはスター俳優を生むのか?
リドリー・スコット監督の最新作『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が11月15日(金)から公開になる。本作は、2000年公開の名作『グラディエーター』のその後を描いた作品で、壮大なスケールの物語と俳優たちの重厚かつダイナミックな演技が見どころの作品だ。
本シリーズは数々の“名優/スター俳優”を生み出してきた。そして新作もまた、明日の映画界を担う注目俳優たちが顔を揃えている。
第2回
人気俳優を続々と輩出した前作『グラディエーター』
前作『グラディエーター』は第73回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞を含む5部門に輝いたが、12部門で候補になり、助演男優賞にもノミネートされた。男たちの熾烈な戦いを描く作品で主演、助演ともに賞の候補になった“俳優で魅せる映画”なのだ。
アカデミー主演男優賞に輝いたラッセル・クロウは当時、『L.A.コンフィデンシャル』で注目を集め、前年の『インサイダー』でオスカー候補になった当時36歳の人気俳優だった。本作で彼は、ローマ帝国の将軍から奴隷になるも、正義と復讐のために剣闘士になって戦う男マキシマスを演じた。その気迫あふれる演技と、スクリーンを埋め尽くすほどの存在感が高く評価され、俳優としての評価を決定づける1作になった。
以降、彼は翌年の『ビューティフル・マインド』で再びオスカー候補になり、ゴールデングローブ主演男優賞を受賞。『マスター・アンド・コマンダー』『3時10分、決断のとき』と主演作が次々に公開になり、『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』などリドリー・スコット監督とのタッグ作も続いた。
そして、本作で助演男優賞候補になったのが、当時26歳だったホアキン・フェニックスだ。子どもの頃から俳優活動をスタートしていた彼が、演技力を高く評価され一躍有名になったのが『グラディエーター』で、冷酷さと孤独な心を抱えた皇帝の息子コモドゥスを演じた。
不安定な感情を丁寧に描き出していく集中力の高さ、一度観たら忘れない鋭い目つきと表情は映画ファンに強烈なインパクトを与えた。彼の以降の活躍は誰もが知るとおり。『ジョーカー』を筆頭に主演作が必ず話題に挙がる名優ホアキン・フェニックスの“ターニング・ポイント”は、間違いなく『グラディエーター』だろう。
全世界の映画ファンが注目する俳優ポール・メスカル
そして2024年、再びスクリーンに戻ってくる剣闘士たちの物語の主役を誰が担うのか? 監督、製作陣が多数の候補の中から抜擢したのが、アイルランド出身の俳優ポール・メスカルだ。
1996年生まれのメスカルはスポーツの世界で活躍した後、演技の世界に転身し、舞台で着実に才能を磨いてきた。その才能の開花は早く、初出演したドラマ『ふつうの人々』で第67回英国アカデミー賞テレビ部門主演男優賞を受賞。翌年には映画デビューを果たし、2022年の『aftersun/アフターサン』の演技で高い評価を集める。
娘の視点から“かつての父と娘の日々”を描く『aftersun/アフターサン』でメスカルは父カラムを演じた。娘に見せる優しい表情の合間から、娘には見せずにきた父親の悲しみや孤独が浮かび上がってくる。語らずとも感情やキャラクターの背景が漂ってくるような繊細な演技が高く評価され、彼は映画出演4作目にしてアカデミー主演男優賞の候補になった。
以降も『異人たち』で主人公と行動を共にする青年ハリーを演じたほか、クロエ・ジャオ監督の新作で劇作家シェイクスピア役を演じることも決定。リチャード・リンクレイター監督の新作への出演も報道されており、いま、ハリウッドが最も注目する気鋭の俳優と呼んで間違いない。
本作でメスカルは、前作の主人公マキシマスのかつての恋人ルッシラの息子ルシアスを演じている。ローマ帝国の襲撃を受け、すべてを失ったルシアスは奴隷になるが、復讐のために剣闘士(グラディエーター)として命がけの戦いに身を投じる。
写真を見ると爽やかなルックスのメスカルだが、スポーツと舞台で鍛えた身体能力は極めて高く、本作でも速度、パワー、表現力のすべてで圧巻のアクションと格闘を次々に披露する。さらに勇ましさだけでなく、愛する妻を失った悲しみ、復讐に燃える怒り、自身の過去を知った葛藤などを高精細に表現。“語らずとも感情の伝わってくる”メスカルの演技力の高さが、主人公ルシアスのドラマを何倍もドラマティックなものにしているのだ。
本作の公開後、メスカルの評価はさらに高まることになるだろう。かつてラッセル・クロウやホアキン・フェニックスが『グラディエーター』を機にさらなる飛躍を見せたように、メスカルも本作によってスター俳優の仲間入りを果たすことになる。
ペドロ・パスカル、デンゼル・ワシントン……主演級俳優が激突!
そんなポール・メスカルと共演する名優たちにも注目だ。本作はとにかくキャストが豪華。他の映画であれば主演を務める名優たちが続々と集結しているのだ。
主人公の国を襲撃するローマ帝国の将軍アカシウスを演じるのは、日本でも熱狂的なファンの多い人気俳優ペドロ・パスカルだ。チリ出身の彼はドラマの世界で活躍していたが、『ゲーム・オブ・スローンズ』の戦士オベリン・マーテル役で注目を集め、スター・ウォーズシリーズ『マンダロリアン』に主演し世界的な人気を博した。『マンダロリアン』でパスカルは常に全身を装甲で隠した孤独な賞金稼ぎを演じたが、その動き、セリフ術だけで全世界のスター・ウォーズファンを納得&熱狂させた。演技力、高すぎる男である。
本作でも彼はローマ帝国の将軍でありながら、自身の考える忠義や正義について考え、揺れ動く男を熱演。劇中ではポール・メスカルとの息詰まる一騎打ちのシーンも登場する。
そして、奴隷の身になった主人公を買いあげ、剣闘士の世界に導く謎の男をデンゼル・ワシントンが演じている。もはや説明の必要もないほどの名優として数々の人気作で活躍しているワシントンだが、リドリー・スコット監督とは『アメリカン・ギャングスター』でもタッグを組んでおり、監督からの信頼も厚い。
本作で彼が演じるマクリヌスは、莫大な富を駆使して剣闘士たちを集め、闘技場に足を運んでは権力者たちの中に入り込んでいく。言葉巧みに相手を操り、皇帝を憎んでいる彼の真の目的は? その正体は? 本作の物語の鍵を握る重要な役どころだ。
ちなみにこれまで数々の超大作に出演し、ハリウッドを代表する俳優のひとりでもあるデンゼル・ワシントンは本作について「私のキャリア史上最大の作品だ。とにかく規模がケタ違いなんだ」と語る。
彼ほどの人気俳優が“ケタ違い”と語る本作のスケールは一体、どんなものなのか? そんな大スケールの舞台で俳優たちは何を見せてくれるのか? 『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』は、闘技場での手に汗握る戦いだけでなく、“名優たちの演技競演”も楽しめる作品だ。
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
11月15日(金) 公開
(C)2024 PARAMOUNT PICTURES.
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