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ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 第5回:高良健吾×片岡一郎対談「80’s-90’sの映画には、嘘の面白さがつまっている」

シネフィルWOWOW×ぴあ
バック・トゥ・ザ 80’s-90’s ムービーズ!

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世界中の名作映画を中心に、WOWOWオリジナルドラマや英国ドラマ等の優れたドラマ、傑作アニメを本編中CMなし、高画質で放送する専門チャンネル「シネフィルWOWOW」。毎月、テーマと作品選びにこだわっている「シネフィルWOWOW」が12月~1月にかけて、特に力を入れてお送りするのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など映画史に残る傑作や、今まさにブーム到来!な80年代を代表する日本の大人気アニメ『うる星やつら』など、80年代~90年代の“面白い!”映画の数々。今観ても懐かしいだけじゃない、新たな発見たっぷりの80’s-90’s ムービーの魅力をお届けします!

第5回
高良健吾×片岡一郎対談「80’s-90’sの映画には、嘘の面白さがつまっている」

高良健吾と活動弁士・片岡一郎

無声映画時代の活動弁士の青春を描いた映画『カツベン!』。作中でスター弁士の茂木役を演じた高良健吾と、活弁指導を務めた活動弁士の片岡一郎は、ともに無類の映画ファン。数々の名画にふれてきたふたりにとって80’s-90’sの映画はどんな存在なのか。ふたりの映画愛あふれるトークから80’s-90’sの魅力を解剖します。

影響を受けて育った80’s-90’sの映画には、現実を凌駕する魅力がある

高良 80’s-90’sの映画と言えば、やっぱり真っ先に挙げたいのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ですね。

片岡 僕もです! 世界中の人をこれだけ楽しませた映画ってなかなかないと思う。まさにお化けみたいな映画ですよね。

高良 本当にそう思います。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のいちばんの魅力は、映画の嘘がたくさん散りばめられているところ。よくCGじゃないかと言われていますけど、当時はまだVFXが登場する前。CGを使わず、観る人を楽しませたい一心で、大の大人たちが集まって、あれだけのつくりこみをしているところに感動します。

片岡 ストーリーを細かく覚えているかと言うと意外とそうでもないんですよ(笑)。でも、断片断片が鮮烈で、だから忘れられなくて、何回でも観たくなる。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1月1日(水)ほかシネフィルWOWOWで放送)
(C) 1985 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

高良 『金曜ロードSHOW!』ってあるじゃないですか。あの番組で流れる映画は王道の娯楽作品が多くて。僕が今まで出てきた映画はどちらかと言うと、『金曜ロードSHOW!』では流れないタイプの作品が多いんですけど、だからこそ『金曜ロードSHOW!』で流れる映画に対する憧れがすごくある。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はまさにその代表格ですよね。僕はこれで(監督の)ロバート・ゼメキスを知って、そこから『フォレスト・ガンプ/一期一会』に辿り着きました。

片岡 『フォレスト・ガンプ/一期一会』! 懐かしいなあ。

高良 僕の中でとても大きな作品のひとつです。優しくて、寓話的で。今の映画はリアルを追求しているものが多いけど、この頃の映画って嘘だらけなんですよね。だけど、そこに夢があるから、観る人が救われたり、熱狂したりできる。そういうところが大好きです。

片岡 『グーニーズ』なんかもね。

高良 あとは『ホーム・アローン』も!

片岡 他にも『シャイニング』があって、『ネバーエンディング・ストーリー』があって、『ゴーストバスターズ』があって、『フラッシュダンス』があって。こうやって名前を並べてみると、やっぱり僕はこの時代の映画で育ったんだって感じます。

高良 中でも特に影響を受けたものってありますか?

片岡 『アマデウス』かな。『アマデウス』の魅力は構成の見事さと虚実の巧さ。モーツァルトという誰もが名前は知っているけど実態はよく知らない歴史上の有名人を主人公に、その生涯に肉薄するというね。あれを観ると、実際はサリエリがモーツァルトを陥れたわけではないと研究結果が証明しているのに、モーツァルトの人生はこうだったんじゃないかと思い込んでしまう力がある。現実を凌駕する魅力があるんですよ、『アマデウス』には。そういう意味では、娯楽作品の到達点と言っていい作品だと思います。

高良 こうやって話をしてみると、映画の嘘の面白さがつまっていたのが、80’s-90’s の魅力かもしれませんね。

片岡 そうだね。あとは今の日本が失ってしまった時代感を体感できるという意味では『私をスキーに連れてって』なんかは実に80’sらしい映画。おそらく今後どれだけ日本の景気が良くなっても、こんな映画は未来永劫つくれない(笑)。軽薄と言ってしまえばそうかもしれないけど、見事に時代が切り取られている映画ですね。

知らない世界を知る楽しさを教えてくれる、周防正行監督の作品たち

高良 僕は『愛と青春の旅だち』や『時をかける少女』、『羊たちの沈黙』も好きです。あ、あとは周防(正行)監督の『Shall we ダンス?』も90’sを代表する映画ですよね。

片岡 いい映画だよね。

高良 今でもよく覚えているのが、電車に乗っている主人公が窓から社交ダンス教室を見つけるシーン。教室の窓に佇むヒロインが気になって思わず中に入るっていう最初の出会いがカッコいいですよね。あとは何と言っても竹中直人さんの存在感!(笑)

片岡 ちょうど僕、『カツベン!』をレイトショーで観たあとに家で『Shall we ダンス?』を観たんですよ。そしたら竹中さんに渡辺(えり)さん、徳井(優)さんに田口(浩正)さんと、『カツベン!』で観た人たちが20歳若い状態で出ていて。思わず時間を20年逆行したような気分になりました(笑)

竹中直人など『カツベン』!にも出演中のキャストが多く登場する『Shall we ダンス?』(1月7日(火)ほかシネフィルWOWOWで放送)
(C)1995 KADOKAWA 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ 日販

高良 周防さんの作品の魅力は、一見とっつきづらそうな題材をエンタテインメントにしているところ。『Shall we ダンス?』なら社交ダンス、『シコふんじゃった。』なら相撲。みんながなかなか関心の持ちにくい題材の魅力をわかりやすく伝えてくれるところがすごいなと思います。

片岡 社交ダンスだって教則本はたくさんあるし、教室に通えば習うこともできる。けれどそうじゃなく、知らない世界をこれだけ面白く知ることができるのは周防監督だから。人間って知的好奇心が旺盛な生き物。ですから本来知らないものを知るのって楽しいはずなんですよね。知らない世界をエンタテインメントとして知る喜びが周防作品にはあるんです。今公開中の『カツベン!』も無声映画という現代の人が知らない世界をエンタテインメントとして知る面白さがあります。

高良 片岡さんに教わって活動弁士の稽古を3カ月やらせていただいたんですけど、いちばん面白かったのが、稽古に入ってすぐ片岡さんから「活動弁士は感情を込めてやっちゃいけません」と言われたこと。てっきり芝居のように感情を込めてやるものだと思っていたので驚きでした。

片岡 個々のキャラクターに感情を込めるのではなく、作品を語るのが活動弁士。作品を語るためには、個々に入り込みすぎるとかえって散漫になってしまうわけですね。特に高良さんが演じた茂木は正統派の弁士。なので、現代のお客さんにはちょっとわかりづらいかもしれないけど、語りのプロが見たときに「この人はうまい」と思ってもらえるものに持っていきたかったんです。

高良 この作品の魅力は、当時の映画館の雰囲気が映し出されているところ。お客さんはみんな映画というより活動弁士が見たくて映画館にやってきて、面白ければ一緒になってわーっと盛り上がる。今の映画館では見られない光景が描かれているところが面白いなと思います。あとはやっぱり活劇としての面白さ。サイレント映画って音がない分、動きが大きくて活劇的。『カツベン!』は音もあるし色もついているけど、どこかサイレント映画の雰囲気が残っていて、常に人が動いている。そういうところが活劇という感じがして、いいなと思いました。

片岡 『カツベン!』がソフト化したらぜひオーディオコメンタリーをしたいんですけど、「ここは実在したある弁士のエピソードがもとになっていて……」と解説しはじめたら6時間はかかっちゃう(笑)。それぐらい随所に無声映画時代へのオマージュが散りばめられているんです。きっと映画史をちょっとかじったことのある人なら永遠に楽しめるはず。だから一度観た人も、当時の映画のことを調べて、もう一度観てほしい! そしたらいろんなネタに気づくと思うし、そうすると他にも別の視点があるんじゃないかってまた観たくなる。何回観ても楽しめる作品であることは間違いないです!

時代を感じられるから面白い! 80’s-90’sの映画の魅力

高良 昔の映画を観てみると時代を感じますよね。特に80’s-90’sの映画と今の映画の違いは、携帯電話があるかないか。当時の映画は携帯が普及していない分、出会いが違うし、恋愛の描かれ方もドラマチック。気軽に連絡をとれない分、ひとりで相手を想う時間があって、それが豊かなドラマを育んでいる気がしました。

片岡 僕なんかは77年生まれだから、80’s-90’sの映画というのは、まさに中二病まっさかりの年頃(笑)。みんなが娯楽映画を観に行っている中、人とは違う自分を演出したくて、フランス映画とかイタリア映画をセレクトしたりしていました(笑)。

高良 片岡さんにもそんな時代があったんですね。

片岡 ありましたよ。当時の僕にとって、映画は異世界を覗かせてくれるもの。今いる場所とは、まったく違うところに連れて行ってくれる感覚がありました。過剰な自意識ばかり膨らんで、自分の実力はまったく伴わない暗がりにいた僕は、それらの映画に光を見出していましたし、そこで形成された人格が今の自分につながっています。高良さんは?

高良 僕は87年生まれなので、80’s-90’sはまだ映画が何かもわからないような子どもでした。当時の僕にとって、映画は母親がデパートで買い物をしている間に放り込まれる場所。何か新しいことを考えさせてくれるような作品より、とにかく純粋に楽しませてくれる映画が好きでした。

片岡 80’s-90’sはたくさんの優れた娯楽映画が生まれた時代ですよね。

高良 これは僕の考えですけど、今の僕たちが80’s-90’sの空気に惹かれるのって、“便利じゃないから”だと思うんです。今はインターネットが発達して、誰とでもすぐにつながれるし、ちょっと検索すれば全部をわかった気になれる。でも、その便利さにどこかで疲れちゃっているんでしょうね。そんな僕らにとって80’s-90’って、ちょうどいい不便さなんだと思います。そしてその不便さが、恋人だったり、家族だったり、いろんな関係にスパイスを与えていて、それが僕たちの心を揺さぶるというか豊かにしてくれる。だから今観ても面白いし、何度でも観たくなるんだと思います。


撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明

高良さん・片岡さんが語る『カツベン!』舞台裏インタビュー も公開中です。

必見の80’s-90’s ムービーを、放送する映画の中からシネフィルWOWOWがレコメンド!

スリリングでドラマチックなアクション巨編『アンタッチャブル』

アルマーニのスーツがキマってる! 『アンタッチャブル』1月放送
(C) 2019 Paramount Pictures. All rights reserved.

配収17億円を超える大ヒットを記録し、禁酒法時代のシカゴを舞台に暗黒街のボス・アル・カポネに立ち向かう財務官の戦いを描いたブライアン・デ・パルマ監督のアクション巨編『アンタッチャブル』を放送。
 
注目すべきはなんといっても役者陣の豪華さ! 主役に抜擢されたケビン・コスナーは、この作品での好演により、ハリウッド・スターの仲間入り! 主人公を助ける老警官役のショーン・コネリーはアカデミー賞助演男優賞ほか各映画賞を受賞、ロバート・デニーロは役作りとして額の生え際の毛を全て抜き、実在のマフィア、アル・カポネを熱演! ぴあの87年10.2号でも表紙として描かれ、各キャラクターの大きさが両者の力関係を明快に表しています。

■『アンタッチャブル』

〈字幕版〉
1月2日(木)7:00〜9:15
1月18日(土)14:30〜16:40
1月24日(金)10:45〜13:00

〈吹替版〉
1月2日(木)21:00〜23:00
1月24日(金)21:00〜23:00

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放送情報

高良健吾出演『蛇にピアス』シネフィルWOWOW 1月放送

1月7日(火)深夜4:15〜6:30
1月27日(月)深夜2:15〜深夜4:30


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片岡一郎「シネフィルWOWOW「名画の理由」声の案内役」

毎週 月曜日 23:00頃
映画監督をはじめ、脚本家やカメラマンなど映画にまつわる様々な名匠を取り上げ、彼らの手がけた映画が名画たる理由を解説。1月に紹介するのは、イギリスの名匠デヴィッド・リーン監督。


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