シネフィルWOWOW×ぴあ
バック・トゥ・ザ 80’s-90’s ムービーズ!
世界中の名作映画を中心に、WOWOWオリジナルドラマや英国ドラマ等の優れたドラマ、傑作アニメを本編中CMなし、高画質で放送する専門チャンネル「シネフィルWOWOW」。毎月、テーマと作品選びにこだわっている「シネフィルWOWOW」が12月~1月にかけて、特に力を入れてお送りするのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など映画史に残る傑作や、今まさにブーム到来!な80年代を代表する日本の大人気アニメ『うる星やつら』など、80年代~90年代の“面白い!”映画の数々。今観ても懐かしいだけじゃない、新たな発見たっぷりの80’s-90’s ムービーの魅力をお届けします!
第6回
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でひも解く80-90’sムービー〈洋画編〉
1980~90年代にはカルチャーアイコンと化したブロックバスター級の大ヒット映画が続々と生まれたが、稀代のヒットメーカー、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ三部作は、その代表格と言えるだろう。一作目は1985年の世界興収トップの座に輝き、2&3作目も堂々の大ヒット。日本でも1作目はヒットしたが、1989年の2作目は興行成績面でそれを上回り、同時撮影されていた1990年の完結編にして3作目も勢いをキープ。主演のマイケル・J・フォックスはスターとなり、後に『フォレスト・ガンプ/一期一会』でアカデミー賞監督となるロバート・ゼメキスも飛躍を遂げた。
当時の熱狂を筆者も鮮明に記憶している。フォックスが劇中で着用していた赤いダウンベストはファッションアイテムとして大流行。彼演じる主人公マーティが得意とするスケートボードも本作のおかけで一気に人気が広まった。
劇中には車をモチーフにしたタイムマシンも登場するが、デロリアンというカーメーカー名はタイムマシンの代名詞に。そしてヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが手がけた主題歌『パワー・オブ・ラブ』は全米チャートでナンバーワンとなったばかりか日本でもヒットをかっ飛ばし、日本ではコマーシャルソングにもなり、現在でも他商品のCMソングとしてお茶の間に活力とともにノスタルジックな空気を届けている。
より個人的な話になり恐縮だが、家庭用ビデオデッキの普及期でもあった当時、学生だった筆者はレンタルビデオ店でアルバイトをしていたが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、返却されてはすぐに“貸出中”になる高回転アイテムだった。1988年にはそれまで1万数千円以上した映像ソフトの価格が一気に引き下げられ、セル用ビデオが3800円ほどで販売されるようになったが、本作のソフトはいち早くゲットした。とにかく、そこには見る者を熱狂させる要素が詰まっていたのだ。
改めて、そのドラマを振り返ってみよう。高校生マーティが、親友である科学者ドクが発明したタイムマシン、デロリアンに乗って、両親の結婚前の時代へ。そこでの恋愛やイジメなどの学園騒動に首をつっこみつつ、タイムマシンの燃料問題を解決しながら、なんとか現代に戻る。そんな一作目から一転、PART2では過去だけでなく、未来の問題を解決すべく21世紀に飛び、PART3では西部開拓時代の19世紀へ。
言葉で説明すると、ややこしくなるのがタイムトラベル・ムービーの常だが、本シリーズにそんな心配は無用。SFであると同時に、マーティの成長を見つめた青春ドラマであり、スリリングなアドベンチャーでもある。何より笑いがあり、痛快で、徹底して陽性。ゼメキスは物語の破綻を巧みに回避し、状況のひとつひとつを活かしながら、アップテンポで物語を演出してみせた。タイムトラベルを題材にした映画は昔からあったが、そこにさまざまなジャンルをミックスし、なおかつ完成度を高めた作品は他になかった。本作が成功した理由は、そこにある。
主演を務めたフォックスの魅力も忘れるわけにはいかない。どこにでもいるフツーの少年で、ギターとスケボーが大好き。好奇心旺盛で、ちょっぴり悪さもしてみたい。そんなティーンエイジャーを、じつにチャーミングに体現し、彼は一気にブレイク。当時フォックスは24歳で、PART2&3の撮影時は、30歳を間近にし、それでも高校生役が似合っていた。身長163センチという、ハリウッドスターには珍しい小柄な体格も説得力があったのだろう。
そんな個性も含めて、観客は彼を愛し、狼男に変身してしまう高校生を演じた『ティーン・ウルフ』や、大企業で立身出世を目指す新人会社員にふんした『摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に』といった、その他の主演作もヒット。いずれも、フォックスの人好きのする個性にフィットしたコミカルなノリの作品で、これらも彼の勢いや人気を高める作品となった。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズは確かに時代を代表する映画だが、その影響は21世紀の現代にもおよんでいる。人気海外ドラマ『ストレンジャー・シングス』では、しばし本作へのオマージュが捧げられ、2019年に世界興収記録を塗り替えた『アベンジャーズ エンドゲーム』でも言及された。80年代カルチャーを詰め込んだスピルバーグ監督の2018年のヒット作『レディ・プレイヤー1』や、ゼメキスの最新作『マーウェン』にもセルフオマージュを見ることができるし、記憶に新しい『ターミネーター ニュー・フェィト』も影響下にあると言えるだろう。最近の作品をここでは例に挙げたが、パロディやオマージュは枚挙にいとまがない。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は単なるノスタルジックなSF映画ではない。後のハリウッド映画にもその形跡を残す、エンタテインメントの最高峰である、と断言してしまおう!
TEXT:相馬学
押井監督ほかコメンタリー付きの放送も!
劇場版『うる星やつら』全6作品
漫画界とアニメ界に衝撃を与え、当時一大ブームを引き起こし、“ラムちゃん”など個性的なキャラクターが今の若者文化にも影響を与えている『うる星やつら』の劇場版全6作品を1月12日(日)に一挙放送!
特に押井守の作家性が全開となり、多くの熱狂的なファンを生み出した劇場版2作目『…ビューティフル・ドリーマー』は、新世代ファンである声優の上坂すみれ、アニメ術解説者・小黒祐一郎のふたりを聞き手に、押井守監督自身が副音声コメンタリーで振り返る特別版でお届け!レアな話も飛びだす 押井ファン、映画ファン、アニメファン必聴の内容です。
■劇場版『うる星やつら』全6作品放送
『うる星やつら オンリー・ユー』1月12日(日)19:15~ほか
『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』1月12日(日)21:00~ほか
『うる星やつら3 リメンバー・マイ・ラブ』1月12日(日)23:00~ほか
『うる星やつら4 ラム・ザ・フォーエバー』1月12日(日)深夜0:45~ほか
『うる星やつら 完結篇』1月12日(日)深夜2:30~ほか
『うる星やつら いつだってマイ・ダーリン』1月12日(日)深夜4:05~ほか
※『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』はアニメ術コメンタリー付き