シネフィルWOWOW×ぴあ
バック・トゥ・ザ 80’s-90’s ムービーズ!
世界中の名作映画を中心に、WOWOWオリジナルドラマや英国ドラマ等の優れたドラマ、傑作アニメを本編中CMなし、高画質で放送する専門チャンネル「シネフィルWOWOW」。毎月、テーマと作品選びにこだわっている「シネフィルWOWOW」が12月~1月にかけて、特に力を入れてお送りするのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など映画史に残る傑作や、今まさにブーム到来!な80年代を代表する日本の大人気アニメ『うる星やつら』など、80年代~90年代の“面白い!”映画の数々。今観ても懐かしいだけじゃない、新たな発見たっぷりの80’s-90’s ムービーの魅力をお届けします!
第8回
『私をスキーに連れてって』でひも解く80-90’sムービー〈邦画編〉
ホイチョイ・プロダクション原作の『私をスキーに連れてって』は1987年の公開作。その後『彼女が水着にきがえたら』『波の数だけ抱きしめて』へと続く“ホイチョイ3部作”の1作目であり、スキーブームのきっかけを生み出した作品だ。若い世代の中には、日本の冬の風物詩であるJR SKI SKIキャンペーンの2017年のポスターで、この映画の存在を知った人もいるかもしれない。
商社に勤務するサラリーマンの矢野は、退勤間際に気もそぞろ。帰宅するやいなや手際よくスキーや無線の道具を積み込んで、赤い車を走らせる。冬の夜道を駆け出して、カセットテープをガチャンとデッキに入れれば、流れ出すのはユーミンの『サーフ天国、スキー天国』! あまりにも完璧なタイミングでスタートするこの映画は、友人たちと出かけた志賀高原のゲレンデに出かけた矢野(三上博史)と、彼がひと目惚れをしたOLの優(原田知世)との恋を描き出していく。
矢野は恋愛には積極的ではないがスキーの腕前は抜群で、まさに“ゲレンデマジック”が発揮されるタイプ。会社ではスキーへの愛ゆえにスポーツ課で頼りにされ、ゲレンデで出会った優にも「内足を持ち上げる癖を直せ」と律儀にアドバイスする。軽薄さの感じられない真面目な性格で、今見ても好感度の高いキャラクターだ。
ちなみに雪国の田舎で育ち、スキーは冬の体育の授業で行われるものという認識しか持っていなかった自分は、ロッジで開かれるカクテル片手のパーティの様子も含めて「スキーってこんなにもおしゃれなスポーツだったのか!」とかなり衝撃を受けたことを覚えている。ゲレンデには出会いがあるのだと錯覚して、大学時代は何度も友達とスキー場に足を運んだ。もちろんそれは映画の中だけのお話だったわけだが、スキーへの愛や当時のファッションなどディテールへのこだわりがあるこの作品には、冬の恋を信じさせてくれる説得力があったのだと思う。
今でも奇跡的な透明感を持つ原田知世だが、それにしても“私スキ”での彼女のかわいらしさは尋常ではない。懐かしの真っ白いワンピース型スキーウェアに身を包んだ彼女は、まるでゲレンデに舞い降りた最後の天使。指で作ったピストルで「バーン」するシーンの殺傷能力は凄まじく、もしもこのときの彼女を手作りうちわで応援できるとしたら、文字は絶対に「バーンして」だろう。
『時をかける少女』でスクリーンデビューを果たして主題歌も大ヒットを記録した角川3人娘の末っ子は、メディアミックスの先駆けの時代、『愛情物語』『天国にいちばん近い島』『早春物語』と映画化された原作の表紙も飾っていた。どこか儚げでつかみどころがないゆえに人を惹きつけてしまう彼女の表情を、今でもありありと思い浮かべることができる。
映画の終盤ではスキー用品の新製品がお披露目会に届いていないというトラブルが発生するわけだが、ここで大活躍をするのは矢野の友人の真理子(原田貴和子)とヒロコ(高橋ひとみ)。ダイナミックなスキーの滑走シーンのみならず、路面を触って「凍ってるね!」と声を揃える女ふたりの痛快かつ唐突なカーアクションは、クールなことこの上ない。デリカシーにはかけるけれど憎めないお節介を焼く男友達の存在も、最後までストーリーを弾ませている。
今や世代を超えて冬の定番曲となった『恋人がサンタクロース』をはじめ、『A HAPPY NEW YEAR』『BLIZZARD』と松任谷由実の名曲たちに彩られた『私をスキーに連れてって』。この映画にはバブル前夜の高揚感がギュッと詰まっている。社会人になっても、こんなふうに友達とはしゃいで恋して滑って、時には馬鹿騒ぎしたっていい。人生を楽しむことを知っている大人たちの冬の物語は、永遠のきらめきを放っている。
Text:細谷美香
80年代を代表するアイドル・原田知世初主演作『時かけ』も放送!
今回ご紹介した『私をスキーに連れてって』のほかに、シネフィルWOWOWでは原田知世の初主演、大林宣彦監督の『時をかける少女』('83年)も放送!本作で原田自身が歌った主題歌もオリコンチャート2位を記録、第7回日本アカデミー賞新人俳優賞も受賞し映画は大ヒット! 本作の出演をきっかけに “角川三人娘”(当時、角川映画で看板女優だった薬師丸ひろ子、渡辺典子、原田知世の総称)のひとりとしてスターになっていきました。
83年のぴあ表紙にはならなかったものの、その年の読者の投票によるベストテン="ぴあテン"では『時かけ』は邦画部門で2位にランクイン!1990年代以降は本格的に歌手活動に取り組み、1991年6.20号のぴあの表紙にも登場!
■『時をかける少女』
1月11日(土) 21:00〜23:00
1月17日(金) 深夜 1:00〜深夜 3:00
1月23日(木) 18:30〜20:30
1月31日(金) 13:00〜15:00
■『私をスキーに連れてって』
1月13日(月) 12:30〜14:30
1月31日(金) 15:00〜16:45