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ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 『ドミノ』特集 なぜ、ロバート・ロドリゲスは20年かけて『ドミノ』を完成させたのか?

『ドミノ』に主演したベン・アフレック(左)とロバート・ロドリゲス監督(右)

なぜ、ロバート・ロドリゲスは20年かけて『ドミノ』を完成させたのか?

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ベン・アフレックが主演を務める超大作『ドミノ』は、ロバート・ロドリゲス監督が20年に渡って構想し、長い時間をかけてついに映画化した作品だ。

家族や仲間と共にフットワークをいかした映画づくりをすることで知られるロドリゲス監督はなぜ、ここまでの年月を投じて本作を映画化したのだろうか?

ロドリゲス監督が“自分で”映画化を決意した理由

ロドリゲス監督はこれまでのキャリアの中で様々な作品を手がけてきた。キャリア初期を代表するアクション映画『デスペラード』、愛するスパイ映画のパロディ『スパイキッズ』、息子の考えたヒーローを描いた『シャークボーイ&マグマガール 3-D』、ジェームズ・キャメロンの誘いを受け、木城ゆきとの漫画を映画化した『アリータ:バトル・エンジェル』など、扱うプロジェクトは多岐にわたっている。

ジェームズ・キャメロンが長年温めていた企画をロドリゲスが継いだ『アリータ…』。パフォーマンス・キャプチャー・アニメで描かれる主人公に対し、他のキャラクターは俳優たちが実写で演じるという作りにも、ロドリゲスらしい攻めた姿勢が垣間見えた

ロドリゲス監督は当初、本作『ドミノ』を自分で監督するつもりはなく、脚本だけ書いて誰かに売ろうと思っていたそうだ。しかし、『ドミノ』のアイデアはロドリゲスを魅了してしまった。監督は笑顔でこう振り返る。

「何より、自分のオリジナルのアイデアだったことが大きいです。それに、アイデアを気に入ってくれて、評価してくれる人や出資しようという人まで出てきました。そこで、このプロジェクトは時間をかけてもじっくりと育てていくべきだと思ったんです」

彼の頭に本作のアイデアが浮かんだのは2000年代の初めだという。そこから時間をかけてアイデアを積み上げ、2015年には脚本を誰かに売るのではなく“自分で監督する”と決意。そこからも『アリータ…』の制作と平行して改稿や準備が進められたようだ。

ロドリゲス監督はデビュー以来、常に映画制作に取り組んでおり、時には2年連続で新作が公開された年もあった。そんな彼が20年をかけても手放さなかった『ドミノ』は、ロドリゲス監督が最も情熱を注いだプロジェクトといえるだろう。

ロドリゲス監督がサスペンスで“新境地”に挑む

本作は、娘が行方不明になった刑事ロークが、失踪した娘の行方と、相手の脳を“ハッキング”し自在に操る謎の男の行方を追うサスペンス大作だ。

その世界観はまるで迷路のように先が読めず、アルフレッド・ヒッチコック監督の作品のようなタッチも随所に感じられる。

ロドリゲス監督はこれまでにガンアクションや、スパイ映画、キッズムービーなどで知られ、グラフィックノベルの世界をそのまま映像化してハードボイド&クライムの要素を盛り込んだ『シン・シティ』や、アクション活劇にホラーのテイストを盛り込んだ『プラネット・テラー』なども手がけきたが、ヒッチコックタッチのサスペンスに挑むのは初めてだ。

ヒッチコック作品といえば、“美女”が欲しいところ。本作ではその立ち位置にブラジル出身のアリシー・ブラガがいるのもロドリゲスらしさが感じられるキャスティング

『サイコ』や『めまい』など、映画史に残る名作で知られるヒッチコック監督は、主人公が何かしらのトラブルに巻き込まれ、主人公が窮地に陥ったり、観客の予想を裏切るような展開でドラマを転がしていくことが多い。その描写は洗練されており、時に大胆な省略や、危険が迫っていることを先に観客に知らせておいて“主人公だけが危険を知らない”ことで観る側のハラハラを盛り上げたりするなど、そのテクニックは天下一品。物語運びはもちろん、“観客を翻弄すること”に長けた巨匠だった。

“主人公だけが知らない”は、本作『ドミノ』ではどうなる……!?

そして本作『ドミノ』では、ロドリゲス監督がヒッチコックを思わせるような演出と描写を随所で見せてくれる。テンポの良い語り口や、ケレン味のある映像を生かしながら、時に観客を誘導し、ハラハラドキドキを盛り上げるシーンが盛り込まれる。ロドリゲス監督も長年、ヒッチコックタッチの作品をつくってみたかったそうで、念願叶った本作は彼にとって待望のサスペンス、彼の新境地と言える。

20年かかったことで起こった変化

先ほど紹介したとおり、本作は監督が最初にアイデアを思いついてから20年もの歳月を要した。しかし、ロドリゲス監督はそのことをポジティブに受け止めているようだ。

「時には、他より長く寝かせるべき映画もある。それに、映画で起こるひねりの中には、その本質を理解するために、人生で実際に体験しておかないといけないものもあった。もう少し長く生きてきた必要があったんだ。それらは、時間が経ったからこそできたものなんだよ」

彼は『ドミノ』のアイデアを思いついてから、撮影に取り掛かるまでの間に13本もの長編映画を手がけた。当時はまだ小さかった子どもたちも成長し、本作ではスタッフとして参加するまでに成長した。

この期間に彼が創作の過程で得た経験やテクニック、新たな機材、撮影環境の変化はすべて『ドミノ』に注ぎ込まれている。監督によると、当初の脚本では小さく描かれていた要素が長い時間をかけて成長していき、物語の重要な側面を担うこともあったようだ。

撮影中のロドリゲスとアリシー・ブラガ

情熱が冷めないうちに撮影することで活きのいい映画になる場合もある。しかし、『ドミノ』は長い時間をかけてアイデアと物語を練り、テクニックを蓄積し、最新の映像技術を得たことで“理想の状態”になった作品だ。

何があっても手放したくない企画、時間をかけても実現させたかったアイデア、時間をかけたことで豊かになった内容。ロドリゲス監督の渾身の一作を心ゆくまで楽しんでほしい。

『ドミノ』
10月27日(金)公開
(C)2023 Hypnotic Film Holdings LLC. All Rights Reserved.
Photo:AFLO