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新作に込めた熱い想い。ロバート・ロドリゲス監督に直撃インタビュー!

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ロバート・ロドリゲス監督の最新作『ドミノ』が公開されている。本作は、彼が20年もの年月をかけて構想を練り完成させた作品だ。彼はなぜ、ここまで本作にこだわったのか? インタビューを通じて、ロドリゲス監督が本作によせる想い、そして監督の“原点”が見えてきた。

長い時間をかけながら魅了されていったアイデア

ロバート・ロドリゲス監督は、1992年に自ら資金を調達して製作した長編映画『エル・マリアッチ』で頭角を現した。殺し屋に間違えられた主人公が壮絶な戦いに巻き込まれるさまをド派手なアクション満載で描いた本作は、全世界で大ヒット。以降、ロドリゲス監督は自分のスタジオをベースに撮影や編集も自分でこなして“手づくり”の映画製作にこだわってきた。

そんな彼は2002年にあるアイデアを思いつき、脚本を書いて誰かに売ろうと考えた。それは“相手を自由自在に操ることができる能力を持つ男の登場するサスペンス”だったが、長い時間をかける中で、ロドリゲス監督はこのアイデアに魅了されていく。

「何より、自分のオリジナルのアイデアだったことが大きいです。それに、アイデアを気に入ってくれて、評価してくれる人や出資しようという人まで出てきました。そこで、このプロジェクトは時間をかけてもじっくりと育てていくべきだと思ったんです」

ついに彼はこのアイデアを自分で監督することを決め、さらに脚本を練った。

映画の冒頭に登場するのは、娘が失踪した刑事ロークだ。彼はある捜査に関わる中で、行方不明になっている娘の写真を発見する。娘をさらった犯人からの接触なのか? ロークの気持ちが焦る中、謎の男が出現し、彼は男を追い詰めるが、謎の男は相手に声をかけるだけで自由自在に操ることのできる能力の持ち主だった。

まるで“催眠”のようなパワーをもつこの男は、行方不明になった娘と関係があるのか? 相手を自由自在に操れる男を捕まえる方法はあるのか? ロークは彼を追い、やがて想像もしなかった世界に足を踏み入れる。

初めてのヒッチコック的なサスペンス映画

本作は、ロドリゲス監督お得意のアクションがふんだんに登場する一方で、ヒッチコックの名作を思わせるサスペンス作品でもある。

「これまでヒッチコック的なサスペンス映画は撮ったことがありませんでした。このような映画はしっかりと構築をした上で映画づくりをしなければなりません。この方法での創作は本当に楽しかったです! ヒッチコックといえば、『エル・マリアッチ』には『間違えられた男』の要素があるんですよね。普通の男が、別の人と間違えられることで狙われてしまう。そんなアイデアから本作は始まったんです」

ちなみに『エル・マリアッチ』で主人公が恋する女性の名前は“ドミノ”だ。本作は、様々なジャンル、規模の作品を発表してきたロドリゲス監督が原点に回帰し、同時に新たな局面に挑んだ特別な映画になった。そのため、本作でも自分のビジョンを薄めず“原液”で描けるよう、自分のスタジオで撮影が行われた。

「僕は(故郷であるテキサス州)オースティンに自分のスタジオを持っているので、ハリウッドに行く必要がありません。この映画もほぼ自分のスタジオで撮影しました。交差点の場面はスタジオの玄関のあたりで、銀行やメキシコの場面はスタジオの駐車場で撮影したんです。(前作の)『アリータ:バトル・エンジェル』で使用したセットの一部も使いましたし、インディーズ感満載の楽しい撮影でした。

このような撮影だと俳優も楽しんでくれるんですよ。スタジオの重役が干渉してくることもないし(笑)、自由に演じることができるからです。僕は自分で撮影も編集もしますから、俳優からすると、今撮影しているものがどう編集されて映画の中に残るのか分かった状態で演技できます。90年代のインディペンデント映画のような自由な映画づくりを本作では実践できたので、俳優たちも楽しんでくれました」

ベン・アフレックとアントニオ・バンデラスは似ている!?

本作で主演を務めたベン・アフレックも、ロドリゲス監督の撮影スタイルを楽しんだようだ。ロドリゲス監督といえば、朋友アントニオ・バンデラスとのタッグ作が思い浮かぶが、監督によるとバンデラスとアフレックは俳優として、とても似ているという。

「撮影中にもベンに“君はちょっとアントニオに似てるよね”って言ったんですよ。どんな状況であっても楽しもうとする姿勢はもちろんですが、ふたりとも“なんでもない瞬間を、すごく意味のある場面に昇華させることのできる”能力があるんです。

アントニオやベンがただ入り口に立っているだけでも“これは画になるな”と思ってしまう。たとえばある場面でベンに“車の中のシーンを何か撮りたい”とだけ伝えると、ベンはそこに“何か意味あるもの”を生み出してくれるんです。そういう意味でアントニオとベンは驚くほど似ているし、僕はそういう俳優に惹きつけられるんです」

スクリーンに映る人物が、ただどこかを見ている。それだけで観客が「彼は何を見ているのだろう?」と思ってしまう俳優がいる。ロドリゲス監督にとって、アントニオ・バンデラスやベン・アフレックはそんな俳優だ。観る者をひきつけ、想像力をかき立てるアフレックの魅力は、本作のようなサスペンスに欠かせないピースと言えるだろう。

この映画のアイデアそのものが“映画をつくること”と同じ

『ドミノ』ではアフレック演じる主人公が謎を追う中で、新たな真実に気づいていき、自分の立っている世界が一瞬にして変容し、崩れる場面に遭遇する。相手の脳をハッキングし、相手を自由自在に操る能力に主人公はどう立ち向かうのか? その能力は劇中でどんな展開を巻き起こすのか? 本作は最後の最後まで観客の予想を超えて突き進んでいく。

ちなみに、ロドリゲス監督がここまで本作の原題でもある“ヒプノティック=催眠”というアイデアに魅了されたのは、この考えが“映画づくり”と深い関係があるからだ。

「そもそも、相手を信じ込ませて、自由自在に操るというのは、僕たち映画監督が観客にしていることですよね(笑)。フィルムメイキングとは観客の周囲に虚構を組み立てて、観客を催眠状態に陥らせることだと思うのです。観客はそれが脚本に書いてあると分かっているのに、その世界を信じて、自らその世界に飛び込んでくれて、怖がったり笑ったりしてくれる。

この映画のアイデアそのものが“映画をつくること”と同じなんですよ。僕は映画をつくることが大好きなんですが、この映画ではそうとは言わずに、サスペンスの姿を借りて“映画づくり”についての映画をつくることができる。これが、どうしても自分でこのアイデアを監督したい理由でした」

誰よりも映画制作を愛し、そのすべてを自分の手で行いたいと考えてきたロドリゲス監督にとって、本作に込められた想いと愛情は格別なものだ。映画を愛する人、映画だから描ける世界を楽しみたい人にとっても『ドミノ』は特別な1作になるだろう。

『ドミノ』
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