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Vol.2<後編> [Alexandros]が語る音楽制作「こんなに楽しいことはなかったというくらい嬉しくて面白かった」

2月18日より公開となった映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』。

『宇宙よりも遠い場所』を手掛けた、いしづかあつこが監督・脚本を務めるオリジナルアニメ映画だ。

物語の舞台は東京から少し離れた田舎町。そこで少し浮いた存在だった男子中学生のロウマとトトは2人だけのチーム「ドン・グリーズ」を結成。高校に上がり、新たに加わったドロップの言葉がきっかけで、3人はひと夏の小さな冒険を体験することになり、それはやがて大きな冒険へと育ち、”LIFE”(生き方)を変えていく──という青春冒険活劇だ。

そんな映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』の主題歌を務めるのは[Alexandros]。主題歌『Rock The World』に込められた想い、そして彼ら自身の青春、生き方について聞いた。

いしづか監督とだから分かり合えるものがあった

── 始めに、主題歌のお話を聞かれたときの感想をお聞かせください。

川上洋平(以下、川上) 素直に嬉しかったですね。

── 川上さんは、公式に寄せられたコメントで、いしづか監督と同世代だと書かれていましたが。

川上 そうなんですよ。だから、多分見てきたものや、匂ってきた時代には近しいものがあるのかなと思いました。

最初に、まだ未完成な状態ではあったんですけど、絵なども含めて作品を見せていただきながらブリーフィングの機会があったんです。そのときに、監督が描こうとされているものが感じやすかったというか。そこは年齢が近かったから、というのもあると思います。

── 磯部さんはいかがですか?

磯部寛之(以下、磯部) 本当に光栄でしたね。

今回、いしづか監督の初のオリジナルアニメ映画ということで、どんなお話になるんだろうというワクワク感があって楽しかったですし。

最初のブリーフィングで監督の想いや世界観について軽く話をお聞きしたんですけど、壮大な作品であることは想像ができましたし、実際に制作が進んでいく中で「楽曲のイメージに」と未完成だけど見せてもらったのも確かに壮大なものでした。

でも、物語がローカルなところから始まる感じとか、自分も田舎育ちということもあって「あー、なるほどね」って肌で共感できるところもいっぱいあって。自分自身がこの作品にのめり込んでいっている感はありました。

リアド偉武(以下、リアド) 最初に絵を見せていただいたときにワクワクしましたね。どんなストーリーになるのかな、と。お話を伺う中で監督の思いを聞いたときに、狭いところでの話ではなくて、もっともっと広く、視点は上に、という世界観を描きたいという想いはバンドの思うところと通ずる部分もあるのかな。なので、どんな作品なのか早く完成版を映画館で観たいなという気持ちはあります。

白井眞輝(以下、白井) 監督と初めてお会いしたとき、同世代ということもあって、ならではのシンパシーみたいなのはすごく感じましたね。この監督と一緒に何かやってくのは面白そうだな、と。クリエイター同士というところでも話に花が咲きました。制作の間でもディスカッションをさせていただいたのは楽しかったです。

彼ら(作中ドン・グリーズ)も同い年で同級生の中での物語ですけど、それと同じことを僕らが外側でやっているような感じっていうんですかね。劇中でもそうでしたけど、青春みたいな感じでしたね。

── ドン・グリーズのような「青春時代の冒険」はありますか?

川上 冒険かあ……書けるようなことあるかな(笑)。

磯部 冒険っぽい冒険って言ったら、中学生のときに住んでいたロサンゼルスで作ったツリーハウスかな。

川上 へぇー!

磯部 家から徒歩で20分ぐらいのところに広い、空き地みたいなところがあったんですよ。そこで友達とその辺で木材拾ってきて。

── 確かに青春っぽい!

磯部 釘とかホームセンターで買ってきたり、結構本格的にやってましたね。

ある程度はできたんですけど、隣の隣の木ぐらいに、すでにめちゃめちゃ完成された豪華なツリーハウスがあって、すげえ敗北感でしたね。そっちに上って遊んでたりもしたんですけど、いわゆるガキ大将たちの持ち物だったから、1回見つかって追いかけられたり……。

── そこまで含めて青春ですね(笑)。

磯部 あれは冒険感ありましたね。日本でもそういうのはあったのかな。

── 作中でも、ドン・グリーズの秘密基地的な描写はありましたね。

川上 あ、ありましたね。

磯部 やっぱり俺たち世代の子どもは憧れるんでしょうね。押し入れに勉強机のライト入れたり、というノリと一緒で。

川上 常に親や大人の監視下にいた頃って、生活の中で自分たちしかいない空間をいかに設けるか、ということがすごく大事だった気がするんですよね。

だから、秘密基地は小学校のときはやっぱりそれなりに作った気がします。

『Rock The World』は「ドン・グリーズ」のテーマ曲かもしれない

── 楽曲を制作される中でこだわられた部分についてお伺いしたいです。

川上 最初に鑑賞したとき、いしづか監督はやっぱり壮大なものを求められているのかな、と思ったんです。最初は、映画全体の空気感に合わせようというのがなんとなくあったんですけど、そうではなくて、キャラクター3人に合わせていったほうがいいな、というのは、こだわりというか、最初の方向転換だったかもしれないですね。

── 映画、ではなく、ロウマたち3人に?

川上 3人の関係性だったり、3人の持っている葛藤、どうしようもない衝動的な感情だったり、行動だったり……この3人の人間性にもっと曲を近づけていったほうがいいな、と思ったんです。

もしかしたら、映画全体には少しズレているかもしれない。どちらかというと、『Rock The World』は『グッバイ、ドン・グリーズ!』の「ドン・グリーズ」のテーマ曲ではあるような気がします。

── 歌詞やタイトルに込められた想い、みたいなものはあるのでしょうか。

川上 物語の序盤は、地元の中で行われているローカルな話なんですけど、それがだんだん壮大になっていくんですよね。

映画を何度か観たあとに思ったのが、自分のスタートラインは、誰にも知られていない夢だったり、願望に近いのかな、そういったもの、欲望みたいなところから始まって、でも、それって叶うものじゃないしな、って閉じこもっていた地元の中で、心の中で閉じ込めていたものがどんどん広げてカラを破って……という心と世界がリンクしながら物語が展開していっているな、というのがあったので、そこはなんとなく自分の中に吸収しながら曲を作ったりもしましたね。

監督と話をしているときにそう思ったのは、自分の欲望だったり、未来をすごく大事にする上で、やっぱりいろんなストップがかかるんですよね。それは自分の中のやる気だったりもそうですけど、人と比べて違うな、と思ってやめてしまったり。そういったところを乗り越える大切さを、自分たちも子どものときに乗り越えようとしてきたので、そこは共通認識で描きたいところでしたね。

「あれやっときゃよかった」と思いながら息絶えたくない

── ロウマたちは、出会いやさまざまな出来事を経て生き方を変えていく、というのが作品のひとつのテーマなのかな、と思うのですが、逆にみなさんが生き方の中でこれだけは変えたくない、というポリシーはあるでしょうか。

川上 僕は、「生き方を変えたくない」と思わないことですかね。あまり固執しすぎるのが得意じゃないので。

ブレてもいいと思っている人間なので、心の変化だったり、新しいアイディアが出てきて、「昨日言ったことを撤回します」というのも全然ありだと思っています。むしろ、固執しすぎて、頑固になってしまうのはもったいないな、と思ってします。柔軟ではいたいですね。

磯部 うーん。俺の場合は人としての道徳、というと固いかもしれないんですけど、親から教わってきた「これだけは」みたいな。親に培わせてもらったところでもあるのかな、と思うので、そこに対しては正直でいる人間でありたいかな、と。人間的な部分ですかね。

リアド 常に大事な岐路だと思う、っていうことですかね。

就職活動をするかしないか、というときに強く感じたんですけどやっぱりいろんな人に大きなターニングポイントって言われたんですね。そこでどういう道を選ぶかで、今後の人生が大きく変わる。

でも、今まで、たくさんの小さな岐路を選んで進んできた中で、必ずしも岐路は就職だけじゃなくて、常に選択をしているな、と。選んだ道は間違いではない、と思っているんですよね。正解か、間違いかじゃなくて、そこの道をどう進むか、ということが大事だと思って生きてきました。ポリシーとはちょっと違うかもしれないですけど。

白井 やりたいことはやっていこう、というのはありますね。

やりたいことがあっても我慢しなきゃいけない、という考え方は結構あるじゃないですか。特に日本では強いと思うんですけど。

死ぬ間際に、「あれやっときゃよかったな」と思いながら息絶えたくない。だから、生きていく中で、やりたいことを常に探しているんですよね。興味があることや、これはもう少しやりたい、と思ったら、何とかして実現する方法だけを考えます。諦める方法は考えない。

昔はやりたくないことを避けてきたんですけど、それがだんだんやりたい方の欲が強くなってきている。その欲の実現をすることが、自分の人生の活力だったりするので、それを大事にしていきたいな、と今は思っています。またどうなっていくかは分からないですけど。

── 確かにやりたいことを選ぶ方が前向きですよね。

白井 それが大変なのも知っているんですけど、失敗しようが成功しようが、その「やりたいこと」に対してどっちも糧になるんで。むしろ、失敗したほうが糧になることも多いですし。なるべく新しいことはやりたいな、と思っています。

制作は楽しくて仕方がなかった

── 最後に、CDを購入される方、曲を聴いてくださる方にメッセージをお願いいたします。

川上 『Rock The World』も『日々、織々』もこんなに楽しいことなかったな、っていうぐらい制作が楽しくて嬉しくて、面白かったです。

特に『Rock The World』はもう1曲候補があって、そっちをずっと作っていたんですけど、なかなかね、80~90点を超えられなかったんですよ。ほぼ完成して、「これでいいんじゃないか」というところまで来たんですけど、違和感がぬぐえなかったところに全然違う方向から『Rock The World』が生まれて、「これ、もしかしたらいいんじゃないかな」と思ったんです。

映画に沿ったような曲とは少し違うかもしれないけど、何かいい匂いがするよね、っていう。というのも、すごく自然にみんなのアレンジも固まって、あれよあれよと一つの曲になったんですよ。その過程が僕の中では「こういうものが今自分たちで出したいんだな」という素直な表れだったと思うんですけど。

すごく好きな曲だから、今自分たちが出したいと思っていたものだから、どんどん苦しめるようにアレンジもこだわって……でも楽しかったんですよ。

あと、リアドが入って初のシングルということなので、「ちょっとかましたらなあかんな」っていう気持ちもありました。最初に目指したのは100点だったけど、120点を目指そう、という気持ちで挑んだと思うし。

『Rock The World』というタイトルも、昔、アマチュアのときにあったタイトルで、いつか使いたいな、と思ってとってあったんですけど、「ここだな」と思って、入れました。

── 両A面として『日々、織々』、また、初回限定盤には2021年10月27日の日本武道館公演のライブ映像が収録されますが。

川上 今回は映像作品もついているので、どういうふうに『Rock The World』が初披露されたのか、いきなりライブバージョンも楽しめるので、そこはぜひ。

『日々、織々』も『Rock The World』に費やした、気持ちみたいなものを置きどころ……よりどころというのかな、クッション代わりになったような曲ではあったので、そういう意味では、『Rock The World』の対局にあって、すごくいい両A面だな、と思います。『Rock The World』でゴーンッ! といったあとは、『日々、織々』でリラックスしてほしいですね。

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撮影/友野雄、取材・文/ふくだりょうこ

『グッバイ、ドン・グリーズ!』
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