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主観描写が「思考を刺激し、あなたを試す」 進化したノーランの語りと驚きの描写とは!

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クリストファー・ノーラン監督の最新作『オッペンハイマー』がついに日本で公開になる。実在の天才物理学者オッペンハイマーを描いた本作は、ノーラン作品初の実在の人物が主人公の物語だ。彼のファンの中には「本作はこれまでのノーラン映画の要素が薄い伝記映画なのでは?」と思っている人もいるかもしれないが、完成した映画はこれまでのノーラン作品の要素がギッシリと詰まった作品で、その要素のすべてが進化している。

“驚き”を生み出すノーランマジック

現在、映画界には多くの人気監督がおり、超大作、娯楽作が次々に公開される。映画制作にデジタル技術が導入されて以降、ビジュアルは大きく変化・進化し、スクリーンで恐竜が暴れ回っても、人間が一瞬で別の生き物に変身しても観客は驚かなくなった。

そんな中、常に観客を驚かせ、次は何を見せてくれるのか?と期待せずにはいられないのが、クリストファー・ノーラン監督だ。

最新作『オッペンハイマー』も仮に伝記本やネットでその歴史を丁寧に調べたとしても、映画館で次から次に“驚き”を味わうことになるだろう。本やネットが書いているのは、研究や評伝、つまり“誰かの見た”オッペンハイマーでしかない。しかし、本作は彼を主人公にその半生を共に歩んでいく。

若い頃から圧倒的な頭脳を誇り、物理学に魅了されていたオッペンハイマーに光はどう見えていただろう? 物体がどんな要素でつくられているか聞いたとき、頭の中にどんなイメージが浮かんだだろう? そして世界を変えてしまうかもしれない“ある発見”をしたとき、彼の頭の中にはどんな光景が広がっていたのだろう?

本作は、そんな天才的な科学者の脳内を、イメージを、発見の喜びや葛藤をすべて“彼と共に”体験していく。そこにあるのは歴史ではない。ひとりの男の感情が激しく動き、脳内で凡人には想像もつかないひらめきが起こり、地球上で誰も経験したことがないであろう葛藤が襲ってくる。それは観客にとって“驚き”の連続だ。

本作を“エンターテイメント”と呼ぶのは少しためらいがある。しかし、これだけは言える。本作は、観客を魅了し、驚かせ続けてきた“ノーランマジック”の最高峰を体験できる作品だ、と。

“主観”がもたらす独自の映画体験

そのため、ノーラン監督は本作でオッペンハイマーの主観と、彼を取り巻く人々の視点=客観を巧みに構成する必要があった。彼が書いた脚本はオッペンハイマーの部分は一人称で書かれていたという。

「そのおかげで脚本を読む人は、観客がオッペンハイマーと同じ視点を共有していることが分かる。我々はオッペンハイマーの肩越しにものを見て、彼の頭の中にいて、どこに行くにも彼と一緒なんだ」

劇中には彼の視点から様々なビジョンが描かれる。これまでノーラン作品では時間が逆行して横転した自動車が元に戻ったり、ジェット機が倉庫に激突したり、激戦の戦場の真上を戦闘機が飛行したり、爆弾で病院が一瞬にして粉々になったりしてきたが、本作ではそれを上回る圧倒的な光景が次々に登場する。

私たちは隣の人と同じものを見ている気になっているが、私と他人が本当に同じ赤いリンゴを見ているのか証明することはできない。実は隣の人には目の前の果物が四角に見えているかもしれない。絶えず爆発しているように見えているかもしれない。

ノーラン監督は『インセプション』で夢の中の世界を描いたが、他人の見ている光景は、夢の中と同じぐらい謎に満ちている。だから、ノーラン監督はオッペンハイマーの視点を取り込んで、観客を作品世界に誘う。天才物理学者の頭の中を覗き見る。彼の視点で世界を見る。これを超えるスペクタクルがあるだろうか。

ノーラン監督の私生活上のパートナーで、彼の全監督作で製作を手がけてきたエマ・トーマスは語る。

「本作の脚本は、主観性と客観性の問題に魅入られている点、異なる複数の視点から語られる点で、まぎれもなくノーランのものでした。でも脚本のページにはこれまで見たことのないものがありました。オッペンハイマーの部分は一人称で書かれていたのです。

製作に携わり、脚本に書かれているものをスクリーン上に実現する役割を担う、クリスを含むスタッフにとってみれば、あるキャラクターの内面を思い描くのに、これ以上効果的、効率的なやり方はないでしょう。私がこれまで読んできた中で最高の脚本のひとつだと思います」

本作では、さらに進化を遂げたノーランの語りを味わえる。

なぜ人は繰り返しノーラン映画を観るのか?

ノーラン監督の作品は世界中で愛されているが、ファンの多くは彼の同じ作品を複数回、または繰り返し観ているのではないだろうか?

何よりも彼の作品は、徹底的に作り込まれているため、映画館やブルーレイで何度も観ることで細部までしっかりと楽しみたい人は多い。また、彼の作品には何度も観たくなるアクションやスタントがふんだんに盛り込まれており、好きなシーンを何度も楽しむ人も多いだろう。

そして何よりも、ノーラン作品には必ず“リピートしたくなる仕掛け”があるのだ。思い出してほしい。妻を殺した犯人を追う男が主人公の『メメント』で、時間が逆行していきラストにたどり着いたところで、こう思ったのではないだろうか?

「ラストを知った上で、最初からもう1度観たい」

『インターステラー』で地球の常識からは想像できない時空間に主人公が迷い込んだのを観たときもやはり、「もう一度最初から観て、あの本棚を確認したい」と思ったはずだ。ノーラン作品には必ず、リピートしたくなる物語上の重要な仕掛けがある。

『オッペンハイマー』も詳しくは言えないが、最後まで観ると必ず「この結末を知った上で、最初からもう1度観たい」と思うことになるだろう。あるシーンや出来事を機に、それまでのシーンが、作品の見え方が一変してしまう。そんなマジックも本作には含まれているのだ。

主演を務めたキリアン・マーフィはこう宣言する。

「主題的には巨大な物語だけれど、でもその語り口は非常に人間的なのです。これは歴史の教訓ではない。説教でも治療でもない。“これが、あなたがこの映画から学ぶべきことです”なんて言いはしない。でもこの映画を観て、今日の世界で起きていることの中に同じようなことを見つけ、それを考え、警戒の目で見ることができるようになるというのは間違いありません。思考を刺激し、あなたを試すというのは映画作りの最も重要な役割だし、僕が思うに(監督の)クリスは、それを興味深い、そして挑発的なやり方でやり続けているのです」

世界を永遠に変えてしまった男を描く映画『オッペンハイマー』は、観客の“世界の見え方”も大きく変えてしまうかもしれない。

『オッペンハイマー』
2024年3月29日(金)公開
(C)2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.