制作発表からブルーレイ発売まで。世界を沸かせた『オッペンハイマー』の軌跡を振り返る
キリアン・マーフィが主演を、クリストファー・ノーランが脚本と監督を務めた映画『オッペンハイマー』の4K Ultra HD & Blu-ray、Blu-ray & DVDが、9月4日(水)に発売された。本作は劇場公開時にヒットを記録したが、映画制作発表から日本公開後まで話題の尽きない作品だった。
プロジェクトの発表から完成、公開まで本作をめぐる出来事を振り返る。
第10回
ノーランが伝記映画? 注目の新作始動。
今から4年前。世界はコロナ騒動に巻き込まれていた。世界各地で活動が止まり、映画館も休止。状況の推移を見守りながら、映画館がゆっくりと活動を再開し始めたタイミングで注目の大作映画が公開になった。クリストファー・ノーラン監督作『TENET テネット』だ。
映画館が客数を制限したり、まだ人々が外出に戸惑うタイミングだった。多くの映画製作者は公開を延期したり、スクリーンで公開するために時間と情熱を注いだ映画をネット配信に移行しようとしていたが、映画館を愛するノーラン監督は劇場での公開に踏み切る。結果は大ヒット。“コロナ以降の映画界”はノーラン作品から始まったのだ。
それから1年。映画館はスロースタートから通常営業にギアを上げ、映画館に観客も少しずつ戻ってきた。2021年秋、海外メディアがノーラン監督が新作に着手していると報じる。それは、“原爆の父”と呼ばれる理論物理学者J・ロバート・オッペンハイマーを題材にした映画だという。
全世界の映画ファンが驚いた。え? ノーラン監督が伝記映画? 実在の出来事をベースにした映画としては『ダンケルク』があるが、実在の物理学者、それも原子爆弾の開発者の生涯を扱う作品になるだろう。どんな映画になるのか、多くの映画ファンが気になっていたのではないだろうか?
2022年7月末にティーザー予告編が公開。その後も次々と新情報が報道される。10月にはノーラン作品に繰り返し出演してきたキリアン・マーフィがオッペンハイマー役だと報じられ、キャストにエミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニーJr.の名前があがる。
観客の期待と予想が膨らむ中、2023年4月26日(現地時間)、全米劇場所有者協会が行うラインナップ発表会“シネマコン”にノーラン監督が登場。新作のフッテージを上映し、プレゼンテーションを実施。少しずつ情報が明らかになる中、7月13日(現地時間)にロンドンでプレミアが行われ、ついに作品が披露された。
日本公開は? 憶測と期待が高まる
そして、7月21日(現地時間)に全米公開。週末3日間で興収8050万ドルをあげ、公開2週目で北米興収が1億7400万ドル、世界興収2億2600万ドルで、計4億ドルを突破。世界各地で本作の上映館が満席になり、感想や考察が飛び交った。
その後も『オッペンハイマー』は動員を増加し、全世界の興行収入は9億5000万ドルを突破。実在の人物を描いた伝記映画作品として、歴代1位の成績をおさめた。
しかし、日本での公開はこの段階では決まっておらず、映画ファンの期待は高まり続ける。日本ではいつ『オッペンハイマー』が観られるのか? このまま公開されないなんてことになるのか?
その年の映画賞の候補リストが記事などに出始めた2023年12月7日。ついに日本の映画ファンに朗報がもたらされる。2024年の日本公開決定が発表になったのだ。
時は来た! 映画賞席巻&日本公開がスタート
年が明けて2024年。『オッペンハイマー』が世界各地の映画賞を席巻するニュースが連日もたらされた。
1月7日(現地時間)に発表になった第81回ゴールデングローブ賞では、作品賞をはじめ5部門を受賞。第76回全米監督組合賞、第77回英国アカデミー賞……あげだすとキリがないほどの栄冠が本作におくられる一方、日本での公開日が3月29日に決定。日本の映画ファンの熱はさらに高まっていく。
日本公開を間近に控えた3月10日(現地時間)に第96回アカデミー賞が開催され、『オッペンハイマー』は作品賞、監督賞、主演男優賞など7部門を受賞。ノーラン監督は初めてオスカー像を手にした。
そして3月29日、ついに日本での公開がスタート。初日3日間で23万を超える観客が本作を目撃し、その後も動員を伸ばし続けた。
劇場公開中は何度も映画館に足を運ぶ人、通常の上映だけでなくIMAX上映にも駆けつける人など、リピーターが多かったのも本作の特徴で、関連書籍なども読み込んで、さらに深く作品を理解しようとする観客が多く見られた。
そしてついに9月4日(水)に4K Ultra HD & Blu-ray、Blu-ray & DVDが発売に。自宅で何度でも本編を楽しめるだけでなく、3時間超の特典映像には作品のメイキング映像、ノーラン監督らが作品について語る討論会の映像、そして作品が扱うオッペンハイマー本人の迫るドキュメンタリーも収録される。
ちなみにノーラン監督は作品を完成させ、そこで得たものや疑問を次回作のモチーフにすることがある。『TENET テネット』には核爆発に関するセリフが登場し、そこで考えたことも『オッペンハイマー』に盛り込まれた可能性が高い。つまり、本作をくり返し観ることで、ノーラン監督の次の作品につながる“ヒント”が見えてくるかもしれない。
本作は長期間にわたって注目を集め、公開後も話題を集めたが、今回のソフト発売を機にさらに深い議論が巻き起こりそうだ。
<リリース情報>
『オッペンハイマー』
2024年9月4日(水) デジタル販売開始 4K UHD、ブルーレイ&DVD発売
2024年9月25日(水) デジタルレンタル開始
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※アウターケース(Oリング)仕様
【特典映像】
■現代の物語:メイキング・オブ・「オッペンハイマー」
1. 我は死なり
2. 先覚者たち
3. マンハッタン計画
4. 神は細部に宿る
5. この世界に生きる
6. 音楽は聴けるか?
7. 奇跡を起こす
■フィルムの革新:「オッペンハイマー」における65ミリモノクロフィルム
■ミート・ザ・プレス:「オッペンハイマー」Q&A
■戦争のない世界へ:オッペンハイマーと原子爆弾
■予告編集
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第10回